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2021年12月10日金曜日

全身を映す鏡の大きさが身長の半分になる証明

全身を映す鏡の大きさ

 次の図1は全身を平面鏡に映したときの様子を示したものです。つま先Bからでた光は鏡のQで反射して眼Oに届きますが、このとき光はOQの延長線上のB'からやってくるように見えます。同様に頭Aからでた光は鏡のPで反射して眼Oに届きますが、光はOPの延長線上のA'からやってくるように見えます。そのため、鏡の中に自分の姿(像)が見えることになります。鏡の中に見える物体の像を、虚像といいます。私たちは経験から光が直線することを知っているためA'やB'から光がやってくると判断してしまいますが、A'やB'から光はでていないことを理解しておきましょう。

全身を映す鏡の大きさ
全身を映す鏡の大きさ

 全身を映すのに必要な鏡の大きさは、光の反射の法則によって入射角と反射角が等しいため、物体と鏡との距離と関係なく身長の1/2になります。どうして身長の半分になるのか考えてみましょう。

 図において、つま先Bから出た光は鏡のあらゆる面で反射しますが、眼Oから見えるところは鏡のQの位置になります。入射角=反射角ですから、鏡のQの位置は、眼Oとつま先Bの距離OBの1/2になります。同様に頭Aから出た光は鏡のあらゆる面で反射しますが、眼Oから見えるところは鏡のPの位置になります。入射角=反射角ですから、鏡のPの位置は眼Oと頭Aの距離OAの1/2になります。この2つの距離はそれぞれO''QとO''Pに相当します。足し合わせると身長の半分の大きさになります。

数式で証明してみよう

 図において身長ABは次の式で表すことができます。

\[AB=OA + OB\]

 全身を映すのに必要な鏡の大きさPQは次の式で表すことができます。

\[PQ=O''P + O''Q\]

 O''PとO''QはそれぞれOA/2とOB/2になりますから

\[PQ=\frac{OA}{2} + \frac{OB}{2}\]

 よって

\[PQ=\frac{OA + OB}{2}=\frac{AB}{2}\]

となり、全身を映す鏡の大きさPQは身長ABの半分になります。

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2021年12月3日金曜日

アントニ・ファン・レーウェンフックの単式顕微鏡|顕微鏡の歴史③

アントニ・ファン・レーウェンフック

 ロバート・フックの功績によって複式顕微鏡は理化学機器として発展していくことになりますが、拡大率の高い顕微鏡は像に色がついて見えたり、解像度が追い付かずぼやけて見えたりするなどの問題がありました。

 フックが複式顕微鏡を使って観察をしていた頃、オランダのアントニ・ファン・レーウェンフックはレーウェンフックは若い頃から従事していた織物商の仕事でルーペを使って生地を観察し品質を確認していました。そして普通の拡大鏡では見ることができない糸の品質を確認するため倍率の高い拡大鏡の自作に取り掛かりました。

アントニ・ファン・レーウェンフック
アントニ・ファン・レーウェンフック

レーウェンフックの顕微鏡

 レーウェンフックは直径1ミリメートル程度のガラス玉1個をレンズとして使った次の図のような単式顕微鏡を自作しました。レーウェンフックの顕微鏡は大きいものでも約5センチメートルでした。観察する試料をサンプルフォルダーの針の上に乗せて、2つのネジでレンズに対する位置とピントを合わせることができました。観察は太陽の方を向いてサンプルフォルダーの反対側からガラス玉を覗いて行います。

レーウェンフックの顕微鏡
レーウェンフックの顕微鏡

 レーウェンフックの顕微鏡の構造は簡単でしたが、高性能な顕微鏡を作るためにはいかにガラス玉レンズを上手に作るかが重要でした。レーウェンフックはレンズの製法を秘密にしていましたが、高品質で微小なガラス玉は溶融したガラス棒を引っ張ってできる細いガラス糸の端を溶融することによって作ることができます。

 レーウェンフックはミクロの世界を探求するため顕微鏡の改良を重ね生涯で実に500もの顕微鏡を自作しました。倍率の高いものとしては約270倍の顕微鏡が現存していますが、観察記録から考慮すると500倍の顕微鏡の製作に成功していたと考えられます。

 オランダの解剖学者ライネル・デ・グラーフはレーウェンフックの観察記録に注目し、1673年にロンドンの王位協会にレーウェンフックの顕微鏡と観察記録を紹介しました。同年、オランダのクリスティアーン・ホイヘンスの父がロバート・フックにレーウェンフックを紹介しています。以降、レーウェンフックは王位協会に観察記録を送りました。レーウェンフックは1674年に赤血球、1676年に微生物を発見したことを報告しています。

繊毛虫のスケッチ
繊毛虫のスケッチ

 レーウェンフックは学術の専門的な教育を受けていなかったため、正式な論文を書くことはできませんでした。口語的なオランダ語で書かれてた報告書を王位協会がラテン語に翻訳して発表しました。1680年、レーウェンフックは功績が認められ王立協会の会員として迎えられました。

アントニ・ファン・レーウェンフックの単式顕微鏡|顕微鏡の歴史③

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2021年10月14日木曜日

ロバート・フックの複式顕微鏡|顕微鏡の歴史②

ロバート・フック

 ヤンセン親子が発明した凸レンズを2枚使った複式顕微鏡はヨーロッパに広まりましたが、その発展は後に発明された望遠鏡に比べると遅れをとりました。現在の顕微鏡のように微細構造を観察する性能を出すことができなかったためです。日常生活でものを拡大して見る道具としては、凸レンズ1枚のルーペで十分だったのでしょう。 そのため、顕微鏡は科学のツールというより高級な工芸品として広まったようです。

 多くの職人によって複式顕微鏡が作成されましたが、実用的な顕微鏡を開発し人々の目をミクロの世界に向けるきっかけをつくったのはイギリスの自然哲学者で王位協会の事務局長を務めたロバート・フックです。フックは力学の弾性に関するフックの法則で有名ですが、光学や天文学などにも精通していました。フックはアイザック・ニュートンと光が粒子か波動かで論争を繰り広げています。

ロバート・フック
ロバート・フック

ロバート・フックの複式顕微鏡とミクログラフィア

 フックは凸レンズを2枚使った拡大率が数十倍の複式顕微鏡で1663年頃からさまざまな動植物の観察を行いました。この革と金で作られた手作りの顕微鏡はロンドンのクリストファー・ホワイトに製作させたものです。

ロバート・フックの複式顕微鏡
ロバート・フックの複式顕微鏡

 フックは1665年に顕微鏡の観察結果をまとめた「MICROGRAPHIA(ミクログラフィア)」という本を出版しています。

ミクログラフィア(ロバート・フック)
ミクログラフィア(ロバート・フック)

 ミクロ具ラフィアには実に100点を超える動植物のスケッチが掲載されています。フックはコルクに無数の小さな部屋があることを発見しそれをcella(ラテン語で細胞を意味する。英語はcell)と名づけています。

ノミのスケッチとコルクの断面(ミクログラフィア)
左:ミのスケッチ 右:コルクの断面(ミクログラフィア)

 ミクログラフィアは当時たいへんな人気となりベストセラーとなりました。人々がミクロの世界に興味をもつきっかけとなったのです。

ロバート・フックの複式顕微鏡|顕微鏡の歴史②

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2021年9月30日木曜日

ジャミラのロケットの光学迷彩|ウルトラマン第23話「故郷は地球」

 ウルトラマン第23話「故郷は地球」は有名なジャミラの話です。

 ジャミラは宇宙開発競争で某国が打ち上げた宇宙船に搭乗していた地球人の宇宙飛行士の名前です。ジャミラは事故によって水のない惑星にたどり着き、某国の救助を待っていました。しかしながら、某国は国際的な問題になることを恐れて事故を隠蔽しジャミラを見捨てたのです。

 ジャミラは一命をとりとめはしましたが、水のない惑星の環境に適応し、水を不要とするひからびた粘土質の身体となりました。ジャミラは某国に復讐するため宇宙船を改造し地球にやってきました。その宇宙船は姿を消す機能を有していたのです。

 地球に到着したジャミラは姿を隠した宇宙船で要人を乗せた旅客機を次々と撃墜します。科学特捜隊が出動しますが見えないロケットからの攻撃を受けます。イデ隊員とフジ隊員がジェットビートルの電波探知機で位置を確認、飛行機雲を吐きながら飛ぶ見えないロケットを発見します。飛行機雲を頼りにレーザーで攻撃しますが、ロケットを見失ってします。

 ジャミラのロケットはどうして姿を隠すことができるのでしょうか。科学特捜隊本部でムラマツキャップが2つの実験をしながら推測します。

 ムラマツキャップは自転車を持ち出して後輪を勢いよく回し始めます。そして車輪が止まっているときはスポーク(金属の矢)が見えるが、高速で回転するとスポークが見えなくなり見通せるようになると説明します。高速で移動するものは見えなくなる。この説明を聞いたイデ隊員は見えないロケットはものすごい力で振動していると答えます。これが1つ目の推測です。

ムラマツキャップの実験①高速で車輪を回転すると見通せるようになる
ムラマツキャップの実験①
高速で車輪を回転すると見通せるようになる

 次のムラマツキャップは色を塗り分けた円盤を回し始めます。円盤が止まっているときには色が見えますが、高速で回転させると全ての色が消えて灰色一色になり色が見えなくなると説明しています。これが2つ目の推測です。

ムラマツキャップの実験②色分けした円盤を高速で回転すると色が失われる
ムラマツキャップの実験②
色分けした円盤を高速で回転すると色が失われる

 この色分けした円盤の実験を最初に行ったのはアイザック・ニュートンです。ニュートンは虹の7色で色分けされた円盤を高速で回転させると光が混ざって白色になることを発見しました。この円盤はニュートンの円盤と呼ばれています。

 ムラマツキャップは「灰色一色になる」と説明していますが、この実験は反射光の経時加法混色ですから「白色一色になる」が正解です。

 こうして2つの推測が出ましたがイデ隊員は見えないロケットの秘密をその場では解き明かすことができず、徹夜で研究に没頭します。そしてスペクトルアルファ線、スペクトルベータ線、スペクトルガンマ線の3つのレーザー光線を開発します。

 イデ委員の説明によると、スペクトルアルファ線は光の屈折を自由に変えることができるもの、スペクトルベータ線は光の色彩吸収力を破壊するもの、スペクトルガンマ線は光の反射角度にある制限を加えるものです。

 この3つのスペクトル光線を重ね合わせて照射することで、ついに見えないロケットが姿を現しました。イデ隊員が説明した3つのスペクトル光線の働きを考えると、どれも物体を見えなくするような効果のように思えますが、見えない物体に照射するとロケットを見えなくしている3つの効果のバランスが崩れて物体の姿が見えるようになるということでしょうか。

 科学特捜隊が攻撃を開始しロケットを撃墜すると、ジャミラが現れます。ジャミラはウルトラマンのウルトラ水流で倒されます。

 ジャミラの話は題名の「故郷は地球」の通り不幸な宇宙飛行士の悲しい話でしが、このお話の中に上述のような光学の話があったのです。

継時加法混色についてはこちら

ウルトラ水流の話はこちら


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2021年9月29日水曜日

愛の戦士 レインボーマン|虹色|光と色のヒーロー列伝⑥

 光あるところに色がある。まこと艶やかな色に数知れぬ波長の光があった。

 たくさんのヒーローがいますが、光や色に関係するヒーローは少なくありません。このシリーズは光と色に関係するヒーローを取り上げていきます。

 第6回は色のヒーロー「愛の戦士 レインボーマン」の登場です。

阿耨多羅三藐三菩提 レインボーマン登場

 レインボーマンは川内康範さん原作の東宝製作の特撮テレビ番組「愛の戦士 レインボーマン」に登場する主人公の覆面のヒーローです。

愛レインボーマン 主題歌

 「愛の戦士レインボーマン」は東宝が初めて手がけたヒーローを主人公とする特撮テレビドラマで1972年に放送が開始されました。1982年にはアニメ版「愛の戦士レインボーマン」も放映されています。従来の川内康範さん原作の七色仮面や月光仮面は人間が「扮装」するヒーローでしたが、レインボーマンは初めて人間が「変身」するヒーローとなりました。

 川内康範さんはヒーローを「正義の味方」と呼び、「正義の味方」は正義を守ろうとするものではあるが正義そのものではないとしました。月光仮面もそのような考え方から生み出された「正義の味方」です。

 月光仮面|月光|光と色のヒーロー列伝②

 月光仮面は正義そのものではありませんが戦う相手は悪であり、悪を倒すという点においては勧善懲悪です。レインボーマンの戦う相手は日本の滅亡を目的とする外国人組織「死ね死ね団」です。死ね死ね団が日本を狙う理由はかつて日本に虐待されたことに対する復讐ですから、レインボーマンの活躍は単純に善が悪を懲らしめる勧善懲悪とは言えません。そのような訳ありの背景で死ね死ね団から祖国を守るため孤独で戦うレインボーマン。その正体ヤマトタケシがヒーローであるが故に悩んだり、人間的な弱さを露呈したり、ヒーローが完全ではないことが描かれています。

オブジェクト指向のヒーロー

 川内康範さん原作の七色仮面は「変装」で姿を変えますが、レインボーマンは戦う場所や相手など目的に応じて「変身」でダッシュ1からダッシュ7まで七変化することができます。

 七色仮面|虹色|光と色のヒーロー列伝③

 ダッシュ1からダッシュ7はそれぞれ1週間の曜日に対応した「月の化身」「火の化身」・「水の化身」「木の化身」「黄金の化身」「太陽の化身」に対応しており、それぞれが特有の技を繰り出します。特に太陽の化身はレインボーマンの本体で様々な技を繰り出すことができ、ダッシュ1からダッシュ6までのうち2種類の能力を掛け合わせることができます。

 レインボーマンは一人のヒーローが目的に応じて姿や能力を変えるオブジェクト指向のヒーローと言えるでしょう。これがレンボーマンのアイデアの画期的なところで、フォームをチェンジするヒーローの原点と言えるでしょう。

 レインボーマンは高校生のヤマトタケシの成長とともに能力を高めていきます。ヤマトタケシはアマチュアレスリングで有名になり自分の不注意で交通事故に遭わせてしまった妹の足の治療のためプロレスラーになろうと考えます。そのため、インドの山奥に住む

アマチュアレスリングで名をはせた高校生・ヤマトタケシは小学生のころ、妹を自分の不注意で交通事故に遭わせ、脚に障害を負わせてしまう。その治療費を稼ぐため、格闘技にさらに磨きをかけプロレスラーとなり、有名になって金持ちになるべく、インドの山奥に住む聖者ダイバ・ダッタのもとに修行に訪れます。ダイバ・ダッタはヤマトタケシが伝説の七色の戦士レインボーマンの素質を持っていることを見抜き、弟子に迎えて修行をさせます。ヤマトタケシは人間同士の紛争が無意味であることを認識し、自分の力を平和のために役立てようと決意します。ヤマトタケシは修行を重ね新たな術を身につけながら死ね死ね団と戦います。

 終盤ではダッシュ7太陽の化身のままで6つの化身の技を扱えるレインボークロスという術を得ますが、これによってダッシュ1からダッシュ6までの登場が減りました。これはレインボーマンの能力を向上することにはなりましがが、オブジェクト指向的なヒーロー像が弱くなりました。見ている子どもたちにとっても面白みに欠けたようです。

レインボーマンの七色

 雨上がりの空にできる自然の虹の七色は赤・橙・黃・緑・青・藍・紫です。

 レインボーマンはダッシュ1からダッシュ7まで異なる色をしています。月の化身は黄色、火の化身は赤色、水の化身は青色、木の化身は緑色、黄金の化身は金色、土の化身は茶色、太陽の化身は白色です。

 レインボーマンの七色は一週間の曜日と関係していますから、自然の虹の七色とは異なります。黄・赤・青・緑は自然の虹の中にも存在する単色光の色です。白は様々な可視光線の単色光がほぼ均等に混ざった白色光です。茶色は簡単に説明するとオレンジ色と黒色の中間色で単色光は存在しません。また、金色は金属表面の自由電子による金属光沢の色です。

虹ができる仕組み

金色はどんな色

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2021年9月16日木曜日

クール星人の宇宙船は光学迷彩|ウルトラセブン第1話「姿なき挑戦者」

 「地球は狙われている!いま宇宙に漂う幾千の星から恐るべき侵略の魔の手が」(浦野光)のナレーションから始まるウルトラセブン第1話「姿なき挑戦者」。

 クール星人が昆虫のような地球人を誘拐し地球防衛軍に全面降伏を求めてきますが、ヤナガワ参謀とヤマオカ長官がこれを毅然とした態度で断ります。

クール星人
地球人を昆虫呼ばわりするクール星人

 クール星人は宇宙船で京浜工業地帯の攻撃を開始、あたりが火の海と化します。ウルトラ警備隊の出動が必要な事態となりましたが、大きな問題がありました。

 それはクール星人の宇宙船の姿が見えないことでした。頭を悩ませながら作戦を考えるキリヤマ隊長。アンヌ隊員がご覧の通りの風来坊のモロボシ・ダンに何か良い作戦はないのか声をかけます。

アンヌ「ダン、あなたの地球がピンチにたたされているのよ。何か敵を倒す方法はないの?」

 地球人でもないのに「あなたの地球」と言われたダンですが、この言葉でダンは地球を守り抜く決意をさらに強くしたのでしょう。ダンはクール星人の宇宙船の秘密をウルトラ警備隊に教え作戦を提案します。

ダン「敵の宇宙船を見えるようにすることだ。あの宇宙船は保護色を使って姿を隠しているんだ。特殊噴霧装置を利用して、こちらで色を吹き付けてやれば、相手の正体がわかるはずだ」

 特殊噴霧装置は科学班の協力ですぐに作られ、ウルトラ警備隊はホーク1号で出動。ダンも搭乗して作戦に参加しました。作戦は見事に成功し、クール星人の宇宙船はその正体を現しました。クール星人はウルトラセブンとウルトラ警備隊によって撃退されます。

 さて、ここで問題です。SFで姿を隠すと言えば透明になるのが手っ取り方法ですが、クール星人の宇宙船は透明になるわけではないようです。どのような仕組みで姿を隠していたのでしょうか。

 その答えはダンの言葉の中にヒントがあります。それは「保護色」です。保護色は動物の体の色や模様によって背景と見分けがつかくなり敵から目立たなくなる体色のことです。 保護色は動物以外にも使われることがありますが、一般的には迷彩色と呼んだ方が適切でしょう。

Shapeshifting Octopus, amazing camouflage

解説記事:光と色と「これは凄い!タコの保護色による擬態

 つまりダンの説明によればクール星人の宇宙船はその表面をまわりの景色に合わせて変化させていたのであって、透明になっているわけではないことがわかります。

 迷彩色の原始的な方法はまわりの景色に同化できるような色を塗ることです。たとえば宇宙船を空の青色で塗れば目立たなくなります。

 しかしながら、クール星人の宇宙船はもっと先進的な方法でまわりの景色に合わせて色を変化させることができます。たとえばカメレオンは皮膚で周りの色を感じて、体の色細胞の大きさを変化させることによって体色を変化させることができます。

 宇宙船表面の色を変化させるようにするには表面にさまざまな色を出すことができる発光体を設置する必要があるでしょう。宇宙船の背景の景色の色をセンサーで感知し、その色の光を出すと宇宙船が目立たなくなります。また、宇宙船表面をスクリーンにする方法もあります。背景の景色をカメラで撮影し、映像をスクリーンに投影します。

Mercedes-Benz. The Invisible Drive. | Ridgeway Mercedes-Benz

解説記事:光と色と「光学迷彩で見えない透明な自動車

 昆虫のような地球人ができるのですから、クール星人にとっては簡単なことですし、ここで説明した内容を超える科学と技術の光学迷彩を採用しているかもしれません。ですが、ペンキを吹き付けられて姿を表してしまったことを考えると、クール星人の知識も昆虫レベルだったのかもしれません。

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2021年7月28日水曜日

焦点深度|図解 光学用語

 レンズには収差があり、光には回析限界があるため、光は1点に集まらず、点像はぼやけて、ある大きさの円盤状の形となります。この円盤のことを錯乱円といいます。像面上で像がぼやけていても、ぼけがある大きさになるまでは、ピントが合っているように見えます。像のぼけが許容される大きさの錯乱円を許容錯乱円といいます。

焦点深度と錯乱円
焦点深度と錯乱円

 レンズでスクリーンに物体の像を映すとき、レンズとスクリーンの距離を多少ずらしても、像がぼけない範囲があります。この範囲を焦点深度といいます。焦点深度は、錯乱円の大きさが許容錯乱円よりも小さくなるところです。

 Fナンバーと焦点深度、許容錯乱円径は、三角形の相似の関係から次の式で表すことができます。

\[ F = \frac{f}{D} =(焦点深度の1/2)/(許容錯乱円径ε) \]

焦点深度 = 2Fε

 この式から分かる通り焦点深度はFナンバーに比例します。たとえば、一般的なカメラのレンズの許容錯乱円は約0.03 mmです。焦点深度はF2.8では約0.17 mm、F16まで絞ると約0.96 mmとなります。

 ところで近視の人が目を細めると遠くの文字が見やすくなりますが、これはF値が大きくなって焦点深度が大きくなるからです。

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2021年7月27日火曜日

絞り|図解 光学用語

絞りとは(しぼり、diaphragm)

 絞りはレンズに入る光の量を調整する穴のことで、開口絞り(aperture diaphragm )ともいいます。カメラのレンズの絞りは次の図のように、複数の羽によって穴の大きさを連続的に変化させることができます。物体からでた光のうち、レンズに入射するのは絞りの内側の光線です。絞りの外側の光線はレンズに入射しません。

絞りの働き
絞りの働き

 絞りを開くとレンズの有効径Dが大きくなるため、レンズに入射する光の量が多くなりFナンバー(f/D)が小さくなります。シャッタースピードを速くすることができ、ピントの合う範囲を示す被写界深度が浅くなります。 

 絞りを絞るとレンズの有効径Dが小さくなるため、レンズに入射する光の量が少なくなりFナンバー(f/D)が大きくなります。シャッタースピードは遅くする必要があり、被写界深度は深くなります。

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2021年7月21日水曜日

色は何色(なんしょく)あるのか

色は数えられるか

  太陽光をプリズムによって分散させると赤から紫までの光の色の帯、すなわち可視光線の連続スペクトルが得られます。

可視光線の連続スペクトル
可視光線の連続スペクトル

 このスペクトルに現れる色はおおまかに紫・青・緑・黄・赤の5色ですが、ニュートンは青と紫の間に藍(インディゴ)、赤と黄の間に橙(オレンジ)を加えて7色としました。しかし、実際に色の境界は明確ではなく、色が紫から赤まで連続的に変化しています。大雑把に何色まで見分けられるかは数えることができますが、無数の色が存在していることは明らかです。

 可視光線の連続スペクトルの色は光の波長(振動数)に対応した単色光の色ですが、複数の単色光を混ぜ合わせると別の色の光を作り出すことができます。作り出した光の中にはマゼンタのように単色光にない色もあります。また、光源の光を反射することによって生じる物体の色も無数に存在します。

 光と色と「マゼンタのおはなし|単色光(波長)が存在しない色

 ですから「色は何色あるのか」という問いに対して「一つ一つ数えることは困難で無数に存在する」としか答えようがありません。

 しかしながら、この答えでは色を定量的に扱うことができません。そこで、ヒトの目で見分けることができる色の数がどれぐらいあるのかを考えてみましょう。

ヒトはどれぐらい色の違いを識別できるのか

 ひとくちに「青色だ」「赤色だ」と同じ色名で呼んでも、厳密には同じ色ではないことはよく経験することです。たとえ同じ色のインクで物体を塗っても、インクの塗り方や物体の表面仕上げが異なっていれば色の見え方は変わります。このような色の多様性から色の数について考えてみましょう。

 色には知覚的なものと、波長や強度など物理的な量で表すものがあります。知覚による色は色の種類を示す色相、色の明るさを示す明度、色の鮮やかさを示す彩度で表されます。これらを色の3属性といいます。色相は光の波長で決まり、明度は反射される光の量(光子の数)で決まります。彩度は光の波長範囲で決まり、波長範囲の狭い色は鮮やかな色になります。

 ヒトがどれぐらい色を見分けることができるかの指標については波長弁別閾、色度弁別閾、純度弁別閾があります。

 波長弁別閾はある波長λの単色光の色の違いを見分けることができる最小の波長差Δλのことです。次の図のように同じ波長で同じ明るさの色のついた円を被験者に見せ、下側の半円のみ波長を変化させていき、被験者が色の違いを認識する最小の波長差Δλを求めます。

波長弁別閾の試験の例
波長弁別閾の試験の例

 様々な波長の単色光について同じ試験を繰り返し、波長に対してΔλをプロットしたものが次の図になります。

単色光に対するヒトの波長弁別閾
単色光に対するヒトの波長弁別閾

 波長弁別閾値は短波長側で7 nm、超波長側で6 nm、中波長の領域では数 nmになっています。このことから、ヒトは数ナノメートルのわずかな波長の違いで色を見分けることができることをがわかります。

 ヒトが色をどれぐらい見分けることができるのか虹を例に考えてみましょう。可視光線の範囲を380 nm〜780 nmとすると、その波長幅は400 nmとなります。虹を5色として、それぞれの色の波長幅は同じと考えると、1色あたり波長幅は80 nmとなります。つまりヒトは虹の1色をさらに細かく見分けることができるのです。

 色度弁別閾と純度弁別閾も波長弁別閾と同じような試験で求めます。

 色度弁別閾は同じ色度の色のついた円を被験者に見せ、下側の半円のみ色度を変化させていき、被験者が色の違いを認識する最小の色度の差を求めます。

 純度弁別閾は白色光の円を被験者に見せ、下側の半円のみに単色光を加えたときに、被験者が色の違いを認識する最小の純度の差を求めます。

 一般に色度弁別閾および純度弁別閾は短波長側と超波長側で小さく、中波長の領域で大きくなることが知られています。つまり中波長領域では色の違いを認識しづらく、短波長側や超波長側ではわずかな色の違いを認識できるということです。

 ヒトはわずか数ナノメートル差の光の色を見分けることができ、さらに色度や純度の差を見分けることができます。1943年にアメリカの色彩学者ドロシー・ニッカーソンは色の3属性を数値化し、色の数を750万色としました。また、色覚に優れた人が見分けることができる色の数は1000万色とも言われています。諸説ありますが、一般にはヒトが見分けれる色の数は数百万色が妥当と考えられています。これらの値はあくまでも推計値で、実験の結果ではありません。

 色は何色(なんしょく)あるのかという問いに対して、ヒトが見分けることができる色を数えあげるのは現実的ではありません。

色は何色(なんしょく)あるのか

 現在の一般的なカラーディスプレイは24 bitフルカラーで1677万7216色(RGB= 8 bit × 8 bit × 8 bit = 2563)を表現することができます。フルカラーはあらゆる色を表現できるることを想定していますが、ヒトがフルカラーのすべての色を見分けることができるわけではありません。最近では10億色以上を表現できる表示システムもありますが、ヒトの色の識別限界を超える色数を再現できることにどれぐらいの価値を見出すことができるかは疑問です。

グラフィクソフトウェアの色の指定の例
グラフィクソフトウェアの色の指定の例

 さて、色は約1700万色ある、ヒトは数百万の色を見分けらると言われても、色の数としては具体的なイメージがわかないかもしれません。なぜなら、私たちが普段行っている現実的な色の識別は、単に微妙な色の違いを識別できるかどうかではないからです。微妙に異なる色を同じ色と判断しても問題ない場合は同じ色と認識するでしょうし、逆に同じ色と判断すると都合の悪い場合にはあえて異なる色と区別するでしょう。たとえば、木々の緑の葉を見たときに微妙な色の違いを認識せずにひとくちに「緑の葉っぱ」と呼ぶことが多いでしょうが、その絵を描こうとしたときには絵の具の黄緑と緑は違う色として区別するでしょう。

 こうなると色は何色(なんしょく)あるのかという質問の答えは、ヒトがどれぐらいの色を認知しているか、つまり色の名前はいくつあるのかを考えた方が現実的でしょう。

 色名は規格や色彩の文献に掲載されています。日本産業規格(旧日本工業規格)「JIS Z 8102:2001 物体色の色名」では、たった269の慣用色名しか規定されていません。他の文献を見ると多いものでも7500色です。色の名前の種類は地域、文化、言語によって異なりますが、数千色と考えておくと良いでしょう。

 ところで、色の名前を指定したからと言って、まったく同じ色が再現できるわけではありません。そこで色を正確に再現するために色見本や色を数値化したカラーオーダーシステムが使われています。

 色見本は目的や用途によっていろいろなものがありますが、数百から数千色あります。カラーオーダーシステムはディスプレイのRGBやプロセス印刷のCMYKなどがあります。色見本やカラーオーダーシステムにより色を正確に伝えることができます。

  光と色と THE NEXT「印刷屋さんの色合わせープロセス印刷と特色印刷


日本塗料工業会 色見本帳

 ヒトが区別することができる色の数は数百万色、色の名前の数は数千色と考えておくと良いでしょう。

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2021年7月6日火曜日

色彩と心理に関する考察

色彩学と心理学 

 色彩学は色に関することを科学的に体系づけて探究する学問です。ヒトの視覚の仕組み、光と色の関係、色の表現方法や配色の調和などについて学びます。一方、心理学はヒトの心と行動について科学的に探究する学問です。

 私たちは普段いろいろな知識や経験をもとに五感を使って思考や行動をしていますが、ヒトの精神状態や判断や行動に色彩が影響することは知られています。

 色彩と心理の関係を学ぶ「色彩心理」という分野があります。現在のところ独立した学問として確立しているわけではありませんが、色彩学で心理を扱ったり、心理学で色彩を扱うことはあります。

動物と色覚

 脊椎動物の祖先はもともと 四原色の色覚(四色型色覚)をもっていたと考えられています。現在でも哺乳類をのぞく多くの動物は四原色の色覚(四色型色覚)を持っています。蝶などの昆虫や魚類は紫外線を見ることができ、鳥類や爬虫類の多くはヒトよりも色を見分ける能力が高く、より鮮やかな色の世界を見ています。これらの動物が色を見分ける能力が高いのは、それぞれの動物の生活環境に適応してきた結果と考えられます。昼行性の動物は明るい世界の中で、効率的に食べ物を見つけたり、天敵や仲間を認識したりするためには、より多くの色を見分けられた方が有利だったのでしょう。そこで、色を感じる錐体細胞の種類が増えて、色を見分ける能力が発達しました。

 一方、哺乳類はかつては夜行性の動物だったため、色を見分けることよりも、暗いところで良く見える能力が必要でした。そのため進化の過程で四色型色覚が失われ、色は見分けられないが弱い光でも感じることができる桿体細胞が発達しました。そのため犬や猫など多くの哺乳類は二原色の色覚(二色型色覚)です。たとえば、犬は赤と緑を見分けることができません。そのため、緑色の芝生の上で赤色の花を見つけるのが苦手です。

  哺乳類の中でも霊長類の一部の原猿類や新世界ザル類、旧世界猿や類人猿やヒトは三原色の色覚(三色型色覚)を持っています。いまから数千年前に赤色光に反応する錐体細胞の一部が変化し、緑色光に反応する錐体細胞となり、赤色錐体・緑色錐体・青色錐体(注)を有するようになったと考えられています。色を見分ける能力が向上した理由には諸説ありますが、木々の緑の葉の中で赤く熟した果実やさざまなな色の花や木の実を見分ける必要があったからと考えれています。

直立二足歩行がヒトにもたらしたもの

 ヒトは他の動物とかなり異なる特徴をもっていますが、これは唯一ヒトだけが直立二足歩行をするように進化した結果と考えられています。直立二足歩行がもたらした大きな変化は大きな頭部を支えることができるようになったことです。その結果、ヒトは大脳を発達させ、高度の知能を得ることになりました。また、上肢が自由に使えることになり、自然のものを道具として使用したり、それをヒントに道具を自ら製作できたりするようになりました。言語の発達はお互いの意思疎通を促進し、知識を文字として残すことができるようになり、文化的な活動を発展できるようになりました。

ヒトは記憶を体系化する

 ヒトは日常の生活で得た経験や知識を記憶し、体系づけて考えることによって新しいことを創造することができるようになりました。積み重ねたひとつひとつの点としての経験や知識の記憶がお互いに結びつくと記憶の線となり、その線と線が結びつくと記憶の面となります。さらに面と面が結びつくと記憶の立体ができ、立体と立体が結びつくと構造化された記憶が体系化されます。ヒトはその体系化された記憶を後世に残す術を持ち、長い年月をかけて種としての記憶を更新しながら継続して保有しています。もちろん、地域や人種によって言語も違えば、積み重ねた経験や知識も異なりますから、同じものごとに対しての価値観も違ってきます。それが世界中の人々の多様性です。

ヒトと色覚

 話を色彩に戻しましょう。ヒトが培ってきた経験や知識のひとつに色があります。ヒトは眼に入った光から色を認識しますが、その色に五感で得た情報や思考が加わり、色の記憶が体系化されます。

 ヒトは自然現象の中から色の経験や知識を積み重ねてきました。たとえば、赤色は血の色、太陽や火の色、夕焼けの色、熟した果実の色、花の色などがあります。血はヒトの「命」「体温」「情熱」、太陽や火は「明るさ」「活発」「高熱」、夕焼けは「美しさ」「はかなさ」「終焉」などを感じさせます。色覚で得た赤色にそれぞれの赤い色の知識が結びついて、赤色に対するイメージができあがります。つまり、色の知識は、色覚で認識した色だけではなく、付加的な情報や思考が加わることになります。その付加的な情報や思考には物理的なものや心理的なものがあります。色の知識はさまざまな情報や思考が複雑に絡み合った混沌としたもので、ヒトの判断や行動や精神状態にさまざまな影響を与えるのです。

 これは前述の知識の体系化によるものです。同じ色を見ても文化や言語によって色の認識は変わります。

色彩と心理

 色彩と心理の関係を学ぶということは、上述の混沌とした色の知識を解き明かすこととも言えるでしょう。

 そうして体系づけられた色彩と心理は占いのように見えるかもしれませんが、いわゆる占いとは異なります。

 たとえば血液型占いは血液型で一義的に性格を分類する血液型性格分類に基づいていますが、血液型と性格の間の関係には科学的根拠がありません。また統計学的な関連性も認められていません。もっとも血液型性格分類を信じ、自分の性格を分類に合っていると考えたり、分類に合わせて振る舞ったりする人は少なくありませんが、これは自己成就現象と言って血液型性格分類の本質からは外れています。

 また、古代から天文学と関連して発展してきた占星術は天体の位置や動きから国家や王家の吉凶から個人の運勢の判断にまで使われてきましたが、天文学の発展によって科学的根拠が認められなくなりました。統計学的な関連性については、自己成就現象によるものはありますが本質からは外れます。

 色彩と心理の関係は複雑すぎて科学的に解き明かすことは容易ではないと思いますが、同じ仕組みの色覚を持つ人々が色を感じた結果、どのように判断し、どのような反応を示すかについてはある程度の共通点を見い出すことができるでしょう。そこに統計学的な関連性を見い出し、色彩と心理を体系化したものが色彩心理と言えるでしょう。この体系化は統計学に基づくため全ての人に当てはまるわけではありませんが、全体としてある程度の傾向を見出したり、同じ傾向をもつグループに分類したりすることはできるでしょう。

 この統計的な体系化において重要なことは科学的な視点を忘れてはいけないということです。これは科学でわからないことは否定するということではありません。世の中には科学的によくわかっていないことがたくさんありますが、これまで得られている知見をもとに考えてみると、それが現実的なものか非現実的なものかはある程度は判断できるはずです。

 ビッグデータの統計解析およびAIを使った体系化が進むと、今まで見えていなかったことが見えてくる可能性もありそうです。

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2021年5月6日木曜日

Fナンバー|図解 光学用語

Fナンバーとは(エフナンバー、F-number)

 カメラのレンズにはF1.4とかF5.6という表記があります。これはFナンバーF値)や絞り値といわれるもので、レンズの明るさを示すものです。Fナンバーは、1枚のレンズでは次の図のように焦点距離fをレンズの有効径Dで割った値です。同じ焦点距離fのレンズでは、Fナンバーの小さいレンズほど、Dが大きいので明るいレンズということになります。


Fナンバー(F値、絞り値)

 有効径Dに対して像の明るさがどれぐらいになるのか考えてみましょう。直径Dの円の面積はで下記で求めることができます。

\[\frac{\pi}{4}D^2\] 

 この式からレンズの有効径が2倍になると、レンズの面積は4倍になることがわかります。レンズの面積が大きくなるということは、より多くの光を取り込むことができるということです。つまり、像の明るさはレンズの有効径の2乗に比例します。

 また、光の強さは光源からの距離の2乗に反比例します。たとえば、光源からの距離が2倍になると、光の強さが1/4に減衰します。これは「物理量の大きさがその発生源からの距離の2乗に反比例する」という逆2乗の法則によるものです。このことから像の明るさは、焦点距離fの二乗に反比例します。

 Fナンバーはレンズの焦点距離fに比例し、有効径Dに反比例します。これは f が大きくなるとFが大きくなって像が暗くなり、Dが大きくなるとFが小さくなって像が明るくなることを意味します。つまり、像の明るさはFナンバーの2乗に反比例することになります。

 焦点距離 f が同じレンズでは、レンズの有効径が$\sqrt{2}$になるとレンズの明るさが1/2になるので、レンズの明るさはFナンバーが$\sqrt{2}$倍大きくなるごとに1/2、1/4、1/8、1/16……と低下します。これが、カメラのFナンバーが1.4の倍数になっている理由です。

 レンズの明るさは、レンズの材料の光の透過率やレンズの枚数によって変わります。Fナンバーはそのようなことを考慮していないため、同じFナンバーのレンズでも明るさが違う場合があります。そこで、Fナンバーに加えて光の透過率tを考慮したTナンバーを使う場合もあります。透過率tは光の波長によって変わるので、Tナンバーは光の波長によって変わります。

Fナンバー :  $F=\frac{f}{D}$
Tナンバー : $t=\frac{F}{\sqrt(t)}\times10$

 Fナンバーは像が焦点の位置にできることを想定していますから、物体が無限遠にある場合に使います。物体が有限距離にあるとき、像面と焦平面が一致せず、像が後側焦点の外側にできます。そのため、像の明るさはその距離の分だけ暗くなります。

 物体が有限距離にある場合のFナンバーを実効FナンバーFeで表します。Feは次のように求めることができます。

 レンズの公式

\[\frac{1}{a}\ + \frac{1}{b}\ =\frac{1}{f}\]

を次のように変形します。

\[\frac{b-f}{f}\ =\frac{b}{a}\]

 ここでb/aは倍率ですからm=b/aとし、 b-f = b'とすると、次の式が得られます。

\[b' = fm\]

 このb'は焦点から像面までの距離に相当します。従って、Feは

\[Fe = \frac{f + b'}{D}\]

と表すことができます。この式にD=f/Fおようび b'=fmを代入すると、

\[Fe = (f + b')\frac{F}{f}\ = (1 + \frac{b'}{f})F=(1 + \frac{fm}{f})F\]

ゆえに

\[ Fe = (1 + m)F\]  

となります。

 なお、物体が無限遠にある場合は、焦平面と像面が一致するためb'=0となります。mが0となるため、FeとFの値が一致します。つまり、Feはレンズと物体の距離にかかわらず使用できるということです。

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2021年4月26日月曜日

満月前夜の月(月齢14 2021年4月26日)

 満月は明日なのですが、今夜はとても綺麗に月が見えました。f:8 ss:320 iso:100で撮影し、画像処理で月の表面を強調してみました。


月齢14の月(f:8 ss:320 iso:100)に画像処理

【撮影機材】

 この月の写真の撮影に使用したカメラはパナソニック デジタルカメラ ルミックス FZ85 ブラック DC-FZ85-Kです。焦点距離が20 mm〜1200 mmで、光学ズームでは60倍まで拡大可能です。

 このカメラにパナソニックの純正のテレコンバージョンレンズ DMW-LT55を装着しました。倍率は1.7倍です。純正ではありますが、FZ-85で光学ズームを最大にすると、色収差の影響が出て月の縁が青みがかって写ります。

 なおFZ-85にこのテレコンをつけるには、パナソニック レンズアダプター ルミックス DMW-LA8が必要です。

 

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2021年4月20日火曜日

可視光線|図解 光学用語

可視光線とは(かしこうせん、visible light)

 可視光線はヒトの目で見ることができる波長の電磁波の総称でいわゆる光のことです。

 一般に可視光線に相当する電磁波の波長範囲は「380 nm〜780 nm」や「400 nm~800 nm」などと説明されますが、JIS Z8120(光学用語)では可視光線の波長の短波長側の限界は360-400 nm、長波長側の限界は760-830 nmと定義されています。

 可視光線より波長が短い電磁波には紫外線や放射線、波長が長い電磁波には赤外線や電波が存在しますが、可視光線以外の電磁波はヒトは見ることができません。

 可視光線は太陽をはじめとする様々な光源から出る電磁波に含まれています。太陽や通常の照明から出ている光は様々な波長の可視光線が混ざった白色光です。

 可視光線をプリズムなどを用いて分散すると、紫・藍・青・緑・黄・橙・赤に連続して変化する光の色の帯が得られる。これを可視スペクトルと呼びます。

可視スペクトル
可視スペクトル

 単色光の波長と色の関係は概ね次の通りです。

  紫色 380-450 nm

  青色 450-485 nm

  水色 485-500 nm

  緑色 500-565 nm

  黄色 565-590 nm

  橙色 590-625 nm

  赤色 625-780 nm

 可視光線はあくまでヒトの色覚で定義される電磁波の分類です。ヒト以外の動物では昆虫や鳥など紫外線を見ることができるものも多数存在します。

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  • JIS Z8120(光学用語)可視放射、可視光、可視光線 目に入って、視感覚を起こすことができる放射。 光線という概念で用いる場合は可視光線という。 一般に可視放射の波長範囲の短波長限界は360〜400nm,長波長限界は760〜830nmにあると考えてよい。
  • 太陽光が様々な色の光が集まった白色光であることはアイザック・ニュートンによって発見された(プロローグ |ニュートンのプリズムの分散の実験をやってみた①)。
2021年4月5日月曜日

中学理科凸レンズの虚像の学習の疑問点

はじめに

 中学校第一学年理科の単元「光と音」で凸レンズの働きについて学習します。この学習の中で「物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたとき、実像と虚像はできるか」という問題が取り扱われます。この解答は次のような図を使って「物体を凸レンズの前側焦点に置くと、物体の1点から出た光が凸レンズから出た後に平行光となるため像はできない」と説明されます。教科書や参考書によっては「実像も虚像もできない」と解説されています。


物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたとき実像と虚像はできるか

 実際の学習において「凸レンズの前側焦点に物体を置いたとき、実像も虚像もできない」と教わっている中学生が多いようです。

何が問題点なのか

 結論から述べると「物体を凸レンズの焦点(前側)に置くと実像はできないが、凸レンズを覗くと虚像は見える」が正解です。「虚像はできない」「虚像は見えない」という説明は間違っています。

 「物体を凸レンズの焦点(前側)に置くと、物体の1点から出た光が凸レンズから出た後に平行光となる」は現象の理論的な説明ですから問題はありません。しかし、その後の「像はできない」の部分は実像なのか虚像なのか明記されておらず曖昧です。

 凸レンズを出た平行光は交わらないのでスクリーンに実像はできませんし、凸レンズを覗いても倒立した実像は見えません。ですから、実像を学習する節で「像はできない」と書いてあるだけなら、像は実像のことであることが明白ですので問題にはなりません。

 しかし、「像はできない」という意味に虚像を含めたり、明示的に「虚像はできない」「虚像は見えない」という説明は事実に反します。よく段階的な学習への教育的な配慮から難しい点はあえて省略して簡素化して説明することはありますが、さすがに事実に反することを教えるのは問題ではないかと考えます。

学習指導要領を見てみると

 平成29年告示の学習指導要領には凸レンズの働きの学習について下記の通り記載されています。

中学校学習指導要領(平成29年告示) 
2 内 容
(79ページ)
㋑ 凸レンズの働き 凸レンズの働きについての実験を行い,物体の位置と像のでき方と の関係を見いだして理解すること。
3 内容の取扱い
(85ページ)
イ アのアの㋑については,物体の位置に対する像の位置や像の大きさの定性的な関係を調べること。その際,実像と虚像を扱うこと。 

 この内容について解説編で次のように補足説明されています。

【理科編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 
(31ページ)注はブログ筆者が追加
㋑ 凸レンズの働きについて
 ここでは,物体と凸レンズの距離を変え,実像や虚像ができる条件を調べさせ,像の位置や大きさ,像の向きについての規則性を定性的に見いだして理解させることがねらいである。  はじめに,凸レンズに平行光線を当て,光が集まる点が焦点であることを理解させる。次に,物体,凸レンズ,スクリーンの位置を変えながらいろいろ調節して,スクリーンに実像を結ばせ,凸レンズと物体の距離,凸レンズとスクリーンの距離,像の大きさ,像の向きの関係を見いだして理解させる。(注1)
 また,物体を凸レンズと焦点の間に置き,凸レンズを通して物体を見ると拡大した虚像が見えることを理解させる。(注2)その際,例えば,眼鏡やカメラなど光の性質やレンズの働きを応用した身の回りの道具や機器などを取り上げ,日常生活や社会と関連付けて理解させるようにする。
 凸レンズを用いてできる像を観察して,その結果を考察させる際,作図を用いることも考えられるが,定性的な関係を見いだすための補助的な手段として用いるようにする。(注3
なお,光源と凸レンズを用いて実像を観察する実験では,目を保護するために,スクリーン等に像を映して観察するなどの工夫をし,凸レンズを通して光源を直接目で見ることのないよう配慮する必要がある。

 学習指導要領には特段の問題は見当たりません。この内容に沿って学習すれば凸レンズの働き、実像や虚像について適切に学習できると考えます。

 実像の学習内容(注1)については、「スクリーンに実像を結ばせ」とありますが、物体を凸レンズの焦点(前側)や焦点(前側)の内側に置くと実像ができないことは、「物体、凸レンズ、スクリーンの位置を変えながらいろいろ調節してスクリーンに実像を結ばせる」という実験をやってみればおのずと出てくる観察結果でしょうから学習の範囲と考えても良いでしょう。「スクリーンに実像を結ばせ」が前提条件であれば発展的な学習と捉えても良いでしょう。

 一方、虚像の学習内容(注2)については「物体を凸レンズと焦点の間に置き、凸レンズを通して物体を見ると拡大した虚像が見えることを理解させる」とあり、物体を凸レンズの焦点(前側)に置くことを想定していません。「虚像が見える」という言葉遣いも適切です。ですから、物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに虚像がどうなるかは発展的な学習になるでしょう。

 凸レンズの学習方法(注3)については「凸レンズを用いてできる像を観察して,その結果を考察させる際,作図を用いることも考えられるが,定性的な関係を見いだすための補助的な手段として用いるようにする」とあります。作図は補助的な手段と書いてあるのは、作図だけで説明してはいけないということまで配慮していると想像できます。

作図による実像と虚像の説明の妥当性

 冒頭に示したような図を使って実像ができないことを説明することは、図が学習指導要領にある「定性的な関係を見いだすための補助的な手段」になっていると言えます。物体の1点から出た光は凸レンズを出た後に平行光となり、その後は交わることがないため、どこにスクリーンを置いても実像は結ばないと説明することができます。

 一方、虚像については、この図だけでは説明できないのは明白です。作図はあくまで補助的なものであり、主要な説明が抜け落ちています。虚像の観察は学習指導要領にある通り「凸レンズを通して物体を見る」です。この操作なしに冒頭のような図を示して平行光の説明で「虚像はできない」「虚像は見えない」と結論づけることは学習指導要領の主旨に反しているように考えられますし、何よりも現物を使った実験観察の結果に反します。

 次の図は物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに見える虚像を図示したものです。凸レンズから出てくる平行光は目の角膜と水晶体で屈折し、網膜に虚像の実像を結びます。難しい説明を抜きにしても、観察結果からわかることです。


物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに見える虚像

 本件について関係組織に改善提案をされ、本記事にコメントを頂きているTomtomさんに、物体を凸レンズの前側焦点に置いたときに見える虚像の写真をご提供いただきました。

実験装置

  • ナリカ社製の光学台
  • 焦点距離10 ㎝の凸レンズ
  • 物体「と」と書いた紙と留め具


実験装置

物体とレンズの配置

  • 物体を凸レンズの手前10 cm、前側焦点の位置に配置。

物体とレンズの配置

凸レンズをのぞいて虚像を観察

 次の写真は凸レンズの後方35 cmの位置からのぞいたときの様子です。「と」の虚像が見えます。これが無限遠にできた虚像です。

 無限遠の1点からやってくる光は平行光として届く。これを見落としたために凸レンズの前側焦点に物体を置いたときに虚像はできないと結論づけられてしまったのでしょう。平行光の起源を考えなければなりません。太陽や月を見ているのと同じ仕組みになっているのです。

 そもそも多くの市販のルーペの倍率は物体を前側焦点の位置に置いた条件で定義されているのです。

 また凸レンズ2枚からなるケプラー式望遠鏡は対物レンズの後側焦点と接眼レンズの前側焦点が一致するようにレンズを配置しています。無限遠の物体の実像が対物レンズの後側焦点にできます。この実像は接眼レンズの物体となりますが、この物体は接眼レンズの前側焦点の上にあります。望遠鏡をのぞくと拡大された無限遠の虚像が見えます。このような光学系をアフォーカル光学系といいます。

 凸レンズの前側焦点に物体を置いたときに虚像はできないと結論づけるとその後の学習に悪影響を与えるのは明白ですし、中学校の学習でも実験事実と食い違うことになってしまいます。

改善の提案

案1)実像だけの説明にとどめる

 冒頭と同様な図を示して、凸レンズの焦点(前側)に置いた物体の1点から出た光は凸レンズを出た後に平行光となり、その後は交わることがないため、どこにスクリーンを置いても実像は結ばないと記述する。虚像についてはこの条件での問題は取り扱わない。

案2)実像はできないが、虚像は見えると説明する

 冒頭と同様な図を示して、凸レンズの焦点(前側)に置いた物体の1点から出た光は凸レンズを出た後に平行光となり、その後は交わることがないため、どこにスクリーンを置いても実像は結ばないと記述し、このとき凸レンズの後方から覗くと拡大された虚像が見えると説明する。

実験で観察するときの注意事項

 物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときの実像や虚像を観察するときに注意しなければならないことがあります。それはレンズの収差です。

 凸レンズに入る平行光は理論的には凸レンズの焦点(後側)に集まりますが、たとえば普通の球面レンズの場合、次の図のようにレンズの周辺部から出てくる光は焦点に集まらずわずかにずれてしまいます。これは直径の大きな凸レンズで顕著に起こります。


凸レンズの収差

 物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに、物体の1点から出た光はレンズを出た後に平行光になります。凸レンズの収差によって、凸レンズの周辺分から出てくる平行光が乱れると実像や虚像の観察がうまくできなくなる場合があります。この場合はドーナツ型の枠を使って、凸レンズの周辺部を隠します。中心付近から出てくる光を使うと、実像や虚像をうまく観察することができるようになります。また、凸レンズで虚像を観察するとき、特段の制限がなければ視界を広く確保するためにも凸レンズと眼をなるべく近づけて観察すると良いでしょう。この場合は周辺分の光が眼に入らなくなります。 

 この収差の影響による虚像の見え方が、虚像の観察を行わずに「虚像はできない」「虚像は見えない」と結論づけている一因にもなっている可能性はあります。

 実際、凸レンズから出てくる平行光に乱れがなければ、光軸上に眼を置いている限りは、凸レンズと眼の距離を変えても、視界の広さは変わるだけで常に同じ大きさの虚像が見えます。

 このことから市販のルーペの倍率は物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに見える虚像の大きさから定義されています。

まとめ

 物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたとき実像と虚像はできるかの問いに対して、「実像はできない」は問題ありません。また実像の節で「像はできない」という記述において、像が実像であることが明確である場合、「実像はできない」という記述の方がより適切ですが問題があるとは言えません。

 虚像については「虚像はできない」「虚像は見えない」という記述は明らかな間違いです。段階的な学習への教育的な配慮からも逸脱していると考えます。

 実態的に「実像も虚像もできない」と学習しているとするならば、「実像はできない」「虚像は見える」という説明に訂正されることを願ってやみみません。

【参考記事】


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2021年3月16日火曜日

レンズの公式の符号の覚え方

 レンズの公式は下記の通りですが、レンズが凸レンズか凹レンズか、あるいは実像か虚像かによってbやfの符号が変わります。

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f} \]

 この符号の変化は凸レンズでできる実像と虚像、凹レンズでできる虚像を作図しながらレンズの公式を求めると理解が深まります。これについては「光と色と」の本館で説明してありますので、下記をご一読ください。

 結果として、それぞれレンズの公式は次のようになります。

凸レンズ 実像

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f} \]

凸レンズ 虚像

\[ \frac{1}{a} - \frac{1}{b}=\frac{1}{f} \]

凹レンズ虚像

\[ \frac{1}{a} - \frac{1}{b}= - \frac{1}{f} \]

 作図によるレンズの公式の導出を理解しておくと、bやfの符号の変化は便宜的なものであることがわかります。この作図を経験しないで単にレンズの公式を暗記しても、使わなくなってしまうといつか忘れてしまいます。ですから、まずは時間がかかっても良いので、作図によるレンズの公式の導出を経験して理解することをお勧めします。

 しかしながら、試験を受けるときには、いちいち作図をしている時間がありません。そこで、レンズの公式の符号の変化を暗記しようとなるのですが、虚像と凹レンズという単語に注目して覚えると、それほどややこしくはありません。

 まず前提として

  • 凸レンズでは実像と虚像ができる
  • 凹レンズでは虚像しかできない
  • レンズの公式
を覚えておくことは必要です。

そして、符号の変化は

  • 凸レンズ実像ではa、b、fは全てプラス
  • 凸レンズ虚像ではマイナスb、aとfはプラス
  • 凹レンズ虚像ではマイナスbにマイナスf、aはプラス
凸レンズ凹レンズ
実像全て+なし
虚像-b-b  -f

ですから、結果として、

「虚像はマイナスb、凹レンズはマイナスf」

とだけ覚えておくだけです。もう少し長めでもよければ

「凸レンズ虚像のときだけマイナスb、凹レンズはマイナスbとマイナスf」

でも良いでしょう。

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2021年2月1日月曜日

色の正体は何か?

 青い海・緑の木々・赤い夕焼け、私たちは様々な色で満ち溢れた世界で暮らしています。私たちが色を見るのは、光源を見ているときか、光で照らし出された物体を見ているときです。光源の色は、光源から出た光を直接見たものですから、光源から出る光が決まれば色が決まります。一方、物体の色は、光源から物体に届いた光のうち、物体が吸収せずに反射したり透過したりした光を見たものですから、光源の光と物体で反射したり透過したりする光が決まれば色が決まります。


光源の色と物体の色

 さて、私たちが見ている色の本質は何か。色に関する科学的な興味はまずそこに向けられるでしょう。色の本質が何かを突き止めたのはイギリスの物理学者アイザック・ニュートンです。ニュートンは1666年に太陽光をプリズムで分解する実験を行いました。


プリズムによる光の分散とニュートンの実験

 そして、ニュートンはこの実験の結果から次のようなことを確かめました。

  • 無色の太陽光をプリズムに通すと赤から紫までの色の光に分解できること
  • 分解した光を集め直すと無色の光に戻ること
  • プリズムで分解して得られた1つの色の光はそれ以上は分解できないこと
  • プリズムで分解して得られた2つの色の光を混ぜ合わせると別の色が生じること
  • 物体に当てる光の色によって物体の色が変化すること
  • 光そのものには色がついていないこと

 ニュートンの実験と検証により、長らく信じられていた「アリストテレスの改変説」が否定され、色がどのように生じるのか、その基本的な仕組みが明らかになったのです。

 ニュートンの実験からも分かる通り、色が光や物体に関連して生じることは明らかです。しかし、光そのものに色がついているわけではありません。また、物体の色は当てる光の色によって変わりますから、物体そのものに特有な色がついているわけでもありません。光や物体は、色を生じる役割を果たしているものの、色が見える本質ではありません。

 私たちが認識している色はヒトの色覚が認識しているものです。ココログ「光と色と」の「視覚が生じる仕組み 色が見える仕組み(3)」の説明の通り、私たちの色覚の働きなしには色は存在しません。光や物体は色覚が認識する色の条件を作っているにすぎません。

 つまり、私たちが認識している色というのは、眼に入ってくる光の情報をもとに脳内で作り出しているものです。もともと光や物体には色はついていません。脳がものに色をつけているのです。色は私たちが作り上げた概念にすぎません。私たちが見ている色とりどりの景色は私たちの脳内で作り出されているバーチャルな世界と言えるでしょう。

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