ニュートンは光と色の関係に拘っていた
1666年、イギリスの物理学者アイザック・ニュートンは白色光(太陽光)をプリズムで分散し、可視光線のスペクトルを観察する実験を行いました。ニュートンは主に光と色の関係を解き明かすための研究を行いました。
古代ギリシャの時代から、光は透過する物質によって性質が変化し、様々な色を帯びるという「アリストテレスの光の変改説(変容説、変化説)」(本ブログ記事)が信じられていました。当時の多くの科学者は、空にかかる虹の色やプリズムでできる虹の色は、光の変改説で説明できると考えていました。
しかし、ニュートンは、実験の結果から、太陽光は様々な色の光が混合したものであるとし、光の変改説とは異なる説を唱えました。ニュートンがそのような結論に至った理由をニュートンの実験を振り返りながら考えてみましょう。
ニュートンのプリズムの実験を振り返る
ニュートンは長年にわたる光に関する実験と考察を1704年に『光学( OPTICKS)』 にまとめています 。
現在、この原著はProject Gutenbergにて図を含む全文が公開されており、日本語版は岩波文庫で入手可能です。
アイザック・ニュートン『Opticks 光学』
ニュートンは暗室の窓に開けた小孔から導いた一筋の太陽光線をプリズムに通し、壁に映る虹色のスペクトルの観察を行いました。そして、赤色から紫色に連続的に変化するスペクトルの色を観察しました。ニュートンは虹の色は途切れることなく連続的に変化していることは理解していましたが、基本となる原色と原色が組み合わさった複合色からなると考え、基本となる原色を Red(赤)・Orange(橙)・Yellow(黄)・Green(緑)・Blue(青)・Indigo(藍)・Violet(紫)としました。ニュートンが原色をこの7色とした理由は「虹の色の数は何色(なんしょく)か?-虹ができる仕組み⑤」(本ブログ記事)を参照してください。
次の写真は実際にハロゲンランプの光をプリズムで分散し、壁に虹色の帯を投影したものです。光源は太陽光ではありませんが、ハロゲンランプの光は太陽光に近い白色光です。ニュートンの時代と違って現在はたいへん便利です。ハロゲンランプにスリットとプリズムが取り付けてあります。なんの苦労もなくあっという間に壁にスペクトルをつくることができました。
しかしながら、普通はこのような光源はなかなか入手できません。身の回りの道具でプリズムの分散の実験を行うときには、光源として懐中電灯に光が漏れないようにアルミテープなどで作成したスリットをつけたもの使います。そのスリットを通した光をプリズムに入射します。綺麗な虹を作るには、いろいろな工夫が必要です。そのうち本ブログにアップしようと思います。
下記はYouTubeで見つけた映像ですが、プリズムを回転させることによって、プリズムによって光が反射、屈折、分散する様子がよくわかります(本ブログAuthorが実験したものではありません)。
さて、ニュートンは壁に映る虹色の帯を見て、縦長になっていることに注目しました。窓に開けた小孔は円形ですから、アリストテレスの変改説で色が生じるのであれば、虹色の帯も円形になるはずと考えたのです.。
ニュートンは自分が行った実験の装置や条件や手順を詳細に調べましたが、虹色の像が縦長になる原因を見つけることはできませんでした。
そして、ニュートンは虹色の像が縦長になる理由を突き止める実験に着手したのです。
プリズム分光 |ニュートンのプリズムの分散の実験をやってみた②
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