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2020年6月27日土曜日

実像と虚像の違い-実像と虚像の例から考える

実像と虚像の違いと見分け方

実像と虚像の基本的な説明については、このブログの光学用語の解説をご覧ください。この用語解説を読むと、実像と虚像の基本的な違いを理解することができると思います。
実像-光学用語 虚像-光学用語
本記事は上記の2つの記事を読んでからご覧になられることをおすすめします。

 レンズや鏡でできる実像と虚像の違いや見分け方がわからないという質問が時々あります。

 実像と虚像の違いを言葉で説明すると、実像は「像が見えている位置に光が集まって実際にできている像」であり、虚像は「像が見えている位置に光が集まっておらず、実際に像はできていないものの、あたかもその位置にあるように見える像」です。

 おそらく実像の方は理解しやすいと思いますが、ややこしいのは虚像の方でしょう。まず虚像が見える理由を考えてみましょう。

 虚像が見えるのは、私たちが体験的に光が直進するという知識を持っていて、光がやってくる方向にその光のもとがあると認識してしまうからです。つまり、物体から出た光の進路が途中で変わっていても、そのことに気がつくことができず、光がやってくる方向の延長線上に物体があるかのように見えてしまうのです。その見えてしまうものを虚像と呼んでいます。

 例えば、大きな鏡があることに気がつかずに部屋が広く見えたという経験はないでしょうか。鏡の存在に気がついて、部屋の広さを見誤っていことに気がつくでしょう。また、浅く見えていた川底に、足を踏み入れてみたら思ったよりも深かったという体験談があります。これも川底の虚像を見て、川の深さを見誤ってしまったからです。


永遠に続く鏡の中の世界(左)と川底に足を踏み入れる(右)

 自分が見ている像が、実像なのか、虚像なのかを正しく理解するためには、その像がどのようにして見えているのか、そのプロセスを知る必要があります。

実像と虚像の例ー身近な例をあげる問題

 「実像と虚像の身近な例をあげてみましょう」という問題がよくあります。この問いに解答するには、映写機でスクリーンに投影している映像、平面鏡の中に映る自分の像など、実際の像の例を挙げて、それが光が集まってできている実像なのか、あたかも存在するかのように見える虚像なのかを考えることが重要です。

 また、レンズや凹面鏡の作図の学習から、正立像だから虚像、倒立像だから実像と一義的に結び付けて覚えるのは誤りです。「映画の映像は倒立像ではないのに、どうして実像なの?」などのような混乱が生じます。

 次は実像でしょうか、虚像でしょうか?

  1. 映画でスクリーンに投影されている映像
  2. 平面鏡に映る自分の姿
  3. ルーペーで拡大した物体の正立像
  4. ピンホールカメラでスクリーンに投影した風景
  5. スプーンの内側に映る倒立した自分の顔
  6. ルーペーを覗いた時に見える物体の倒立像
  7. 太陽光を平面鏡で反射し、壁に映した明るい部分
  8. カーブミラーに映る自動車
  9. 風呂の水の中の自分の手
  10. マジックスコープで見える立体像

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実像と虚像の例ー利用しているものを選ぶ問題

 「実像と虚像を利用しているものを次の中から選んでみましょう」という問題があります。この問題は「実像と虚像の身近な例を挙げてみましょう」と同じよう内容に思えるかもしれませんが、実は非常に解答が難しくなる問題で、適切に解説しないと、実像と虚像の違いの理解に混乱を生じさせます。逆に適切に解説できれば、実像と虚像の違いを深いところまでしっかりと理解できることになります。

 この問題の解答は、たとえばルーペ、平面鏡、望遠鏡、顕微鏡、カメラ、映写機などを挙げていくことになるでしょう。ルーペや平面鏡のような単純な光学器具は問題ありませんが、レンズや鏡を複数使っているものは、レンズや鏡がどのように使われているのかまでを考えておかないと正しい解答を導くことができません。

 まず、もっとも身近なものとして、私たちの眼を考えてみましょう。次の図は私たちの眼の構造を示したものです。


目の構造

 眼に届いた光はまず角膜で大きく屈折して眼の中に入ります。このとき、虹彩は明るさによって瞳孔の大きさを変化させ、眼に入る光の量を調整します。瞳孔を通った光は眼房を通り抜けて水晶体に入り、ガラス体を通り、網膜上に物体の実像を結びます。網膜には光を感じる細胞があり、細胞が捉えた光の情報が視神経を通って脳に伝わります。網膜上で結ぶ物体の実像は倒立像ですが、私たちは脳の働きで正立しているように見ることができます。


網膜に結ぶ物体の実像

カメラ

 次の図はカメラの構造を示したものです。カメラは物体からやってきた光をレンズで集光し、フィルム上に実像をつくります。このとき、絞りによってカメラに入る光の量が調整されます。また、フィルムを感光させる時間はシャッタースピードで決まります。フィルムに実像の光が感光すると、フィルムに写真の元になる光の情報が記録されます。デジタルカメラの場合は、フィルムの代わりに撮像画素の上に実像を作り、撮像画素で捉えた実像の色や明るさの情報を元に写真の画像を作ります。


カメラの基本的な構造

光学顕微鏡

 次の図は光学顕微鏡の基本的な仕組みを示したものです。顕微鏡は小さい焦点距離をもつ対物レンズと、大きい焦点距離をもつ接眼レンズを組み合わせた構造をしています。 顕微鏡で物体を観察するときには、対物レンズの下に物体を置き、接眼レンズをのぞきます。物体は対物レンズによって拡大され、物体の実像が同図Aの位置にできます。Aの位置は接眼レンズの前側焦点の内側ですから、この実像を接眼レンズでのぞくと、Bの位置に拡大された虚像が見えることになります。


光学顕微鏡の基本的な仕組み

 「実像と虚像を利用しているものを次の中から選んでみましょう」の問題の選択肢に顕微鏡があったとき、どのように解答すると良いでしょうか。

 接眼レンズを通して見ているのは物体の実像の虚像です。虚像を見ているから解答は虚像と考えるのが試験における解答のテクニックかもしれません。しかし、顕微鏡の仕組みを理解している人は、実像と虚像を利用していると解答するでしょう。なぜなら、顕微鏡が1枚の凸レンズのルーペより物体を大きく拡大して見ることができるのは、対物レンズで物体の実像を作っているからで、この仕組みが顕微鏡の要なのです。この仕組みがわかると、顕微鏡で見える虚像が倒立像になっている理由も理解できます。

望遠鏡

 現在、使われている望遠鏡の多くはケプラー式望遠鏡です。ケプラー式顕微鏡は大きい焦点距離をもつ対物レンズと、小さい焦点距離をもつ接眼レンズを組み合わせた構造をしています。 遠くの物体は対物レンズによって拡大され、物体の実像がAの位置にできます。この実像を接眼レンズでのぞくと、Bの位置に拡大された虚像が見えます。


ケプラー式望遠鏡の基本的な仕組み

 ケプラー式望遠鏡も、試験の解答としては虚像を利用しているものということになりますが、実像と虚像の両方を利用しているところが要です。

 ケプラー式望遠鏡は拡大されたものを倒立像として見ますが、天体観測では倒立像でも問題ないため、天体望遠鏡として広く使われています。また、地上用の望遠鏡では、内部にプリズムを入れて正立像を得られるようにしています。

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