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2020年7月6日月曜日

ニュートンはなぜ虹の色を7色と決めたのか-虹ができる仕組み⑤

虹の色の数? 虹は連続的に色が変化している

 虹の色をよく観察すると、虹は赤色から紫色まで連続的に変化している無数の色でできていることがわかります。これは虹ができる原理と辻褄が合っています。ですから、虹の色が何色(なんしょく)かという問題には、科学的な解答はないと言えるでしょう。しかしながら、虹を見ていると、虹の中にどのような色が見えるか、つい色を数えたくなってしまいます。


虹の色の帯

ニュートンが虹の色の数を7色と決めた

 ニュートンは1666年に行ったプリズムによる太陽光の分散の実験の結果から、赤色から紫色に連続的に変化する光の色の帯のことをスペクトルと名付けました。ニュートンはこの実験について、1672年に王位教会宛に「New Theory About Light and Colour(光と色の関する新理論)」と題した書簡を送っています(光と色と:ニュートンのプリズム分光実験が1666年である根拠)。

 この書簡の中で、ニュートンはプリズムでできた光の色の帯の中には、赤や黄や緑などの顕著な色と中間的な色が存在すると述べています。そして、色には原色と複数の原色から成る複合色の2種類が存在すると結論づけています。

 当時、虹やプリズムでできる光の色の帯は「 赤  緑  青 」の3色もしくは 「 赤  黄  緑  青  紫 」と5色から成ると捉えられていました。ニュートンも光の色の帯は連続的に変化する無数の色からなることを理解していましたが、色には原色と複合色があると考え、原色には前述の5色の 赤  黄 の間に植物のオレンジの色である 橙  青  紫 の間に植物染料インディゴの色である 藍 を加えて7色としました。

光と色と:ニュートンのプリズム分光実験が1666年である根拠
5. There are therefore two sorts of colours: the one original and simple, the other compounded of these. The original or primary colours are red, yellow, green, blue, and a violet-purple, together with orange, indigo, and an indefinite variety of intermediate graduations.
太陽光をプリズムで分散してできた光の色の帯は単色光から成りますが、ニュートンは顕著に見える色を原色、その中間の色を複合色としました。ニュートンは一連の実験の結果から、特定の色の光を2色混ぜ合わせると別の色の光ができることを報告しています。中間色を複合色とした背景には、この実験の結果の考察が関係していると思われます。


プリズムによる太陽光の分散

 下記は虹の写真の明るさとコントラストを調整した画像です。7色確認できるでしょうか。この写真では、5色は確実に視認できますが、橙と赤は区別できるものの、青と藍の違いがわかりにくく、全部で6色のようにも見えます。虹の中に見える藍色は青色光と紫色光の間の光の色で450-485 nmの可視光線になります。中心波長は約470 nmです。一方、ニュートンが採用したインディゴの藍色の反射スペクトルを調べると極大波長は420 nmです。これは紫色光の範囲380-450 nmの波長です。

ニュートンが虹の色の数を7色とした理由

 ニュートンはなぜ虹の色を5色ではなく7色としたのでしょうか。それは、当時7が神聖な数字と考えられていたことと関係があるようです。

 創世記において、神はこの世を6日間で創造し、7日目に休息し、その日を聖なる日と定めました。このことから7は完全な数字と考えられるようになりました。そして、6は7に1つ足りないことから不完全な数字と考えられました。その他、聖書にはたくさんの7が出てきます。神学者でもあったニュートンにとっては、6は選びにくい数字だったのかもしれません。

 また、ニュートンは神学者として聖書の研究をしていますが、ソロモン王が築いたエルサレム宮殿の原型であるソロモン宮殿に黄金比などの幾何学的な構造があることに興味を示し、その調和に神学的な意味を見い出そうとしています。

 古代ギリシャの数学者・哲学者ピタゴラスを祖とするピタゴラス教団(ピタゴラス学派)の哲学者たちは、万物の根源は数であると唱えました。そして、天文学や音楽に法則性を見い出し、世界や宇宙の法則を考えるようになりました。


日の出を祝うピタゴラス(1869, Fyodor Bronnikov)

 例えば、音楽では、一本の弦を奏でたときの音階の規則性に気がつきました。ドの音が鳴る弦の1/2のところを押さえて弾くと1オクターブ高いドの音が鳴り、2/3のところを押さえて弾くと5度の音(ソ)が鳴り、3/4のところを押さえて弾くと4度の音(ファ)が鳴ります。弦がドからシまでの美しい音を奏でるのは、数の比に関係しているに違いないと考えたのです。


弦の長さとハ長調の音階

 ピタゴラス教団は、この世界は数の比によって秩序づけられており、美しく調和していると考えました。そして、この美しい調和が世界や宇宙の法則であるとし、数の比でもたらされものと考え、この世のものはすべて数に置き換えることができるとして、「万物の根源は数である」と結論づけました。

 神学者であり、数学者でもあったニュートンは神学的な意味合いに加えて、こうした数字の比や調和を重視していたに違いありません。ニュートは、美しい虹は調和をもたらす数の比から成るはずだと考えたのではないでしょうか。そして、音階が7音から成ると同様に、虹は7色から成るとして、美しい虹に完全な数字を当てはめることにしたのでしょう。

 ニュートンは完全主義者であったとも伝えられます。そのことは、1666年に手掛けた研究を1704年の論文にまとめるまでに実に38年もの歳月をかけていることからもわかります。

虹の色の数は何色(なんしょく)か?-虹ができる仕組み⑤

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