凸レンズを半分隠すと実像と虚像がどのようになるかという問題があります。この問題は物体の1点から出た光が凸レンズをどのように通り抜けてくるかを考えるとわかります。
凸レンズを半分隠すと虚像はどのように見えるか
虚像は凸レンズを通ってやってくる光をそのまま見ているだけです。レンズの屈折の働きで物体が大きく拡大されて見えますが、透明なガラス板の向こう側にある物体を見ているのと変わりません。ですから凸レンズを半分隠すと隠した部分の光が眼に届かなくなるため次の図ように虚像が欠けて見えます。凹レンズで見える虚像も同じ結果になります。
凸レンズを半分隠すとスクリーンに映る実像はどうなるか
次の図のように凸レンズで天井の蛍光灯の実像を机の上に映したとき、凸レンズを半分隠すと実像はどのようになるか実験してみましょう。
凸レンズで実像ができる仕組みは中学校の理科で習います。物体の1点から出て凸レンズを通る光のうち「1. レンズの光軸に平行に入る光」「2. レンズの中心を通る光」「3. 凸レンズの手前の焦点を通る光」の3つの光は次のような進み方をすると習います。
- 凸レンズの光軸に平行な光は屈折したあと焦点を通る。
- 凸レンズの中心を通る光は屈折せずにそのまま直進する。
- 凸レンズの手前側の焦点を通る光は屈折したあと光軸に平行に進む。
凸レンズでできる実像はこの3つの光線を使って次のように作図することができます。この3つの光の交点が物体の1点に対応する像ができる位置となります。
上図では物体の1点から出る3つの光線しか描かれていませんが、実際には物体の1点から光は四方八方に出ています。物体の1点から出るたくさんの光線のうち凸レンズを通る光線を描くと次の図のようになります。
それではこの図を使って凸レンズをしゃへい板で隠すとスクリーンに映る実像がどのようになるか考えてみましょう。光の進み方は次の図のようになります。
この図を見るとわかるとおり物体の1点から出たレンズに入る光線にはしゃへい板でさえぎられるものとレンズを通り抜けるものがあります。レンズを通り抜けた光線は実像を作ります。またこの図からレンズを通る光線が少なくなることがわかります。これは実像をつくる光の量が減るということですからスクリーンに映る実像はもとの実像よりも暗くなることを意味します。ですから最初の実験の結果は次のようになります。
- 凸レンズを半分隠しても机の上には蛍光灯の実像が映る
- 凸レンズを隠した分だけ光の量が減るので実像は暗くなる
それでは凸レンズをさらに隠すとどのようになるでしょうか。次の図のように凸レンズを隠していくと物体の下部の方から出る光がしゃへい板に遮られてレンズを通らなくなります。
図のようにBから出る光がすべて遮られるとB点に対応する実像B' ができなくなります。このように物体の下部から実像が消えて行きます。
半分隠した凸レンズをのぞくと実像はどのように見えるか
凸レンズでできる実像はスクリーンを使わずに凸レンズをのぞくと眼で実像を直接観察することができます。このとき凸レンズを半分隠すと実像はどのように見えるでしょうか。
この場合、凸レンズから出て眼に入る光線を考える必要があり ます。次の図は同じ焦点距離の2枚のレンズを並べて、スクリーンに実像をつくる様子を示したものです。
凸レンズ L1でできる実像は凸レンズ L2 にとっての物体になりますが、L1 実像は凸レンズL1 から出てきた光線で作られた実像ですから実際の物体とは異なり光を四方八方に出しておらず特定の方向にしか光をだしていません。
そのため凸レンズ L1 を下側から隠すと物体の上側の方から出て凸レンズ L2 に入射する光線(たとえば赤色の光線)がなくなりスクリーンにできる実像が欠けることになります。
これと同じようなことが凸レンズでできる実像を眼で直接見ている ときにも起こります。凸レンズ L1 をルーペ、凸レンズ L2 を眼のレンズ(角膜と水晶体)、スクリーンを網膜としましょう。凸レンズ L1 でできる実像の光が眼に入ってこなければ実像が欠けて見えることになります。このとき眼の位置をずらすと実像の見える範囲も変わります 。
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