2枚のレンズを組み合わせた道具を考えたのは誰か
レンズを2枚組み合わせて物体を見る実験は誰もが簡単にできます。そのため、世界で初めてその実験したのかはわかっていません。しかしながら、現存する資料を調べてみると、どうやら13世紀のイギリスの哲学者・キリスト教司祭のロジャー・ベーコンが最初の人と考えることができそうです。
ロジャー・ベーコンは1267年に発表した『大著作(The Opus Majus)』の第5部で光学を取り上げています。レンズ光学の研究を進め、拡大鏡などについて言及しています。そして、レンズを組み合わせて遠くのものを近くに見たり、小さなものを大きく見たりすることが可能であることが書き記されています。つまり、ロジャー・ベーコンは世界で初めて望遠鏡や顕微鏡の基本原理について初めて言及した人と考えることができるでしょう。
顕微鏡の発明者は誰か
1590年頃、オランダのミデルブルフの眼鏡職人のサハリアス・ヤンセンは2枚の凸レンズを使うと、1枚の凸レンズを使ったルーペより物体を大きく拡大して見ることができることを発見し、顕微鏡の原型を発明しました。実際にはサハリアスの父親で眼鏡職人のハンス・ヤンセンもこの発明に重要な役割を果たしていたと考えられています。そこで、サハリアスとハンスのヤンセン親子が顕微鏡を発明したとされています。
顕微鏡の発明者がヤンセン親子だという説明において、とされていますとしたのは、最初に説明した通り、2枚のレンズを組み合わせる実験は非常に簡単で、誰でもやってみることができたことは想像に難しくないからです。
なにしろ320年も前にロジャー・ベーコンが顕微鏡や望遠鏡の基本原理について言及しているのです。この間に顕微鏡を作った人はいなかったとは言えません。しかしながら、その間に誰かが顕微鏡を作ったという記録も残っていません。
ヤンセン親子が顕微鏡の発明者とされている根拠は、サハリアス・ヤンセンがオランダの外交官ウィリアム・ボーレルに送った手紙とされています。この手紙に顕微鏡のことが書かれていたそうです。そして、ボーレル自身もヤンセンが作った顕微鏡を見たようです。
この顕微鏡はオランダの発明家のコルネリウス・ヤコプスゾーン・ドレベルの手に渡ったとも言われています。ドレベルは1600年にミデルブルフを訪れ、ヤンセンと出会い、光学とレンズ磨きを学んだという記録も残っています。
ドレベルは1621年に顕微鏡を制作していますが、クリスティアーン・ホイヘンスは顕微鏡の発明者はドレベルであると言及しています。おそらく、ドレベルの制作した顕微鏡が実用的なものだったからではないでしょうか。
また、イタリアの天文家フランチェスコ・フォンターナが1681年に顕微鏡を発明したと主張したという記録もあるようです。望遠鏡を発明したとされるオランダの眼鏡職人のハンス・リッペルスハイが顕微鏡を発明したという説もあります。
このように顕微鏡の発明者には諸説ありますが、現在において、多くの科学者はヤンセン親子が顕微鏡の発明者であることを認めています。
例えば、オランダの生物学者で後に国際的な顕微鏡の専門家となったペーター・ハルティンクはヤンセンが発明者だと主張しています。
おそらくハルティンクの1923年の著書『Het Mikroskoop』を読めば、そのあたりのことも書いてあるのではないかと思いますが、オランダ語で書かれているため調べるのは断念します。
余談ですが、ハルティンクは1845年に顕微鏡で観察する対象物の大きさ測定するため、ミリミリメートル(mmm)という新しい単位を提唱しました。これが後にマイクロメートル(μm)となりました。
さて、ヤンセン親子が作成した顕微鏡はあまり実用的なものではなかったようです。何か微細な世界を観察したという記録も残っていません。
誰が光学顕微鏡を発明したのか|顕微鏡の歴史①
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