炎とは何か
最初に炎とはどのようなものなのを考えてみましょう。炎は気体が燃焼するときに生じる光と熱を発している部分のことです。
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ろうそくの炎
液体の灯油や固体の紙などが燃えるときにも炎が出ますが、これらの炎は灯油が熱で気化したり、紙が熱で分解したりして生成した可燃性気体が燃焼しているものです。炎の色は何が燃えているのか、酸素がどのぐらい取り込まれているかによって変わります。
ろうそくの炎
ろうそくに使われているロウは主に炭素原子と水素原子からなる炭化水素化合物です。普通のろうそくはパラフィンという炭化水素化合物が使われています。
パラフィンとは パラフィンは化学式CnH2n+2で表すことができるアルカンと呼ばれる炭化水素化合物のうち炭素数が大きいもののことです。アルカンはパラフィン系炭化水素とも呼ばれ、炭素数の少ないものにはメタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)などの可燃性気体があります。 ![]() プロパンの構造式と分子式 |
ろうそくの芯に火をつけると、芯に染みこんでいたロウが熱で気化・分解して燃焼します。これが炎になります。芯の近くのロウが熱で溶けて液体となり、液体のロウが芯に染みこむので、ろうそくは燃え続けることができます。ろうそくの炎は次の図のように3つの部分からなります。
![ろうそくの炎 ろうそくの炎](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj84exHy0OT7NrA1q1p5ZjbwIhkrzHMDdnfMQkSTG3ApiSFWG5k9Ase1VPWF5qbLFXAYrVpnbn96cPNj7snle3m64F_Tl1ZiVNjTcDDLl8wQecmeEPDaP2Lr7NYajBegS3QYIdquGQ_Fzl2/s320/%25E3%2583%25AD%25E3%2582%25A6%25E3%2582%25BD%25E3%2582%25AF.png)
ろうそくの炎
炎の一番内側の部分は炎心と呼ばれます。炎心は気化したロウが存在するだけで燃焼は起きていません。
炎心の外側は内炎と呼ばれ、この部分では燃焼が起きています。しかし、内炎の燃焼は酸素が不十分なため不完全燃焼となっており、炭素の微粒子が生じています。この微粒子は燃焼で高温となり熱放射によってオレンジ色の光を出します。これがよく見る炎の色です。
内炎の外側は外炎と呼ばれ、この部分は酸素が十分にあるため完全燃焼となっており、ろうそくの炎の中で最も温度が高いところです。外炎は明るいところではよく見えませんが、暗い場所では見えます。この部分には、炭化水素の燃焼で生じた高エネルギーで不安定な励起状態にあるラジカルと呼ばれる形になった原子や分子あるいはイオンが存在します。ラジカルはすぐに安定した低エネルギーの基底状態に戻りますが、このとき差分のエネルギーに相当する波長の光を出します。このような発光現象をルミネセンスといいます。
なお、熱放射で出てくる光の色は発光している物質の温度が高くなるにつれて明るい色となりますが、ルミネセンスで出てくる光の色は温度とは関係ありません。
アルコールランプの炎
メタノールを燃やすと炎にはほとんど色がついていません。メタノールには炭素が1つしか含まれていないため完全燃焼しやすくメタノールのほとんどが二酸化炭素と水になるからです。
ガスコンロの炎
ガスコンロに使われるガスは都市ガスではメタン、プロパンガスではプロパンが主成分です。メタンやプロパンガスは常温で気体の炭化水素化合物です。ろうそくでは、燃焼に必要な酸素は炎のまわりの空気から取り込まれます。それに対してガスコンロはガスを燃焼する前にガスと空気(酸素)を混合します。
ガスコンロの炎にも、ろうそくの炎と同じように芯があります。この部分にはガスと酸素が一緒に存在していますが燃焼は起きていません。ガスはこの芯のすぐ外側で燃焼しますが、この部分では炭化水素から生じた不安定なラジカルが存在し、青い光を出して燃えています。ガスコンロの炎が青いのは、空気を十分に混ぜてあり、酸素が豊富だからです。同じガスでも普通の使い切りガスライターの炎では、酸素が豊富にある炎の下部は青色、酸素が不足している上部はオレンジ色になります。空気をガスと一緒に積極的に送り込むターボライターの炎は透き通った青色になります。
![ガスライターとガスコロンの炎 ガスライターとガスコロンの炎](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEisfDYUwezqlrMbI_MsKHc4U4SyJ21SvFRS4qwfGw8hBIuHfVl0DW9iQ_ZmKCFbF-ww6-FZpv0DsBPG7sGxskBTD_GCAp-UTywcpmfbngAgdoErqU2Esw6AVTHu3UUhAUTB5Z_t840wXxN0/s0/%25E3%2582%25AB%25E3%2582%2599%25E3%2582%25B9%25E3%2583%25A9%25E3%2582%25A4%25E3%2582%25BF%25E3%2583%25BC%25E3%2581%25A8%25E3%2582%25AB%25E3%2582%2599%25E3%2582%25B9%25E3%2582%25B3%25E3%2583%25B3%25E3%2583%25AD%25E3%2581%25AE%25E7%2582%258E.jpg)
ガスライターとガスコロンの炎
このように炎の色は酸素の量によって変わります。 酸素を十分に与えると青色の炎となり、酸素が不十分だとオレンジ色の炎になるのです。
酸素量 | 炎の色 | 燃焼しているもの |
---|---|---|
不十分 | オレンジ色 | 炭化水素が分解して生じた炭素の微粒子 熱放射による |
十分 | 青色 | 炭化水素が分解して生じた不安定なラジカル ルミネセンスによる |
酸素の量と炎の色の関係
さまざまな色の炎
ガスコンロにみそ汁などを吹きこぼしたときに炎の色が一瞬黄色になるのを見たことがあるでしょうか。また、銅製の鍋などを使ったときに炎が一瞬青緑色になる場合があります。
これらの場合、みそ汁に含まれている食塩中のナトリウムや鍋に使われている銅の金属元素が炎の色の元となっています。高温で励起状態となった元素が、基底状態に戻るときに、その元素特有の色の光を出します。これを炎色反応といいます。
ガスコンロの炎の中で針金などの先につけた銅線や食塩を炎の中に入れてみると簡単に炎の色を変えることができます。身近なところで炎色反応を利用したものは花火です。
花火は赤色や緑色など様々な色を出しますが、花火の火薬には炎色反応で色を出す物質が着色剤として含まれています。
着色剤 | 炎の色 | 元 素 |
---|---|---|
食塩 | オレンジ色 | ナトリウム |
硫酸銅 | 青緑色 | 銅 |
ホウ酸 | 緑色 | ホウ素 |
塩化カルシウム | 橙色 | カルシウム |
塩化リチウム | 深赤色 | リチウム |
主な着色剤と炎の色
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