虹はどうして円弧に見えるのか
私たち良く見る虹の形は次の写真のように地平線や水平線から立ち昇るアーチのような形をしています。虹がどうして円弧になるのか考えてみましょう。
次の図は、主虹の赤色光の進み方を示したものです。虹の見ている人から見える赤色の帯は42度の角POQのコンパスで描かれる半円形になります。他の色についても、それぞれの角度で同様に半円形になります。このように、虹が円弧に見えるのは、虹の色が決まった方向から見えるからです。また、高い山頂や航空機から虹を見たときは、目線の下にある水滴からでてくる光も眼に届くため、虹は円形となります。
虹を追いかけても近づけない理由
次に、虹を追いかけても近づくことができない理由を考えてみましょう。虹をつくる水滴は空気中に無数に漂っています。そのため、次の図のように、人間が歩いたり、走ったりする速さで虹が見える方向に近づいても、この水滴の層から容易に抜けだすことはできないため虹が見え続けることになります。また、水滴の層は上下左右に広がっていますから、観測者が虹から遠ざかる方へ移動しても、上下に移動しても、虹は見え続けます。このため、虹を追いかけても近づけないのです。
次の写真は、珍百景にも登録できそうな、虹に近づけるところまで近づいて撮影したという、いへん珍しい写真です。山の手前の林の中へと入り込む虹の足がしっかり見えます。
虹の仕組みはもっと複雑だった
さて、デカルトとニュートンによって虹ができるしくみが完全に解明されたかというと実はそうではありませんでした。彼らが考えた虹のモデルでは、水滴の大きさや形状については考慮されていませんでした。水滴が歪めば光の進み方も異なります。
実際の虹は、プリズムでできるスペクトルのように鮮明ではなく、細かい霧状の水滴で光が散乱することによって生じる全体が白く見える白虹が現れたり、主虹の内側や副虹の外側に過剰虹という虹が繰り返すような光の筋が現れたりすることがあります。
これらの現象は、光線追跡だけでは説明できず、光の波の性質を考慮する必要があります。のちに光の波の性質を研究したトマス・ヤングやジョージ・ビドル・エアリーなどがこの現象に興味をもち、彼らの虹の不思議な現象への探求が光の波の理論を導きだすきっかけになったのです。
Supernumerary arcs of rainbows:
Young’s theory of interference PHILIP LAVEN, Applied Optics, 56, 19, G104-G111 (1 July 2017) http://www.philiplaven.com/Publications/AO-56-19-G104a.pdf |
虹の形が円弧の理由ー虹ができる仕組み④
1 2 3 4 5 6 7
0 件のコメント:
コメントを投稿