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2020年9月28日月曜日

炎の色はどんな色|炎の仕組み

炎とは何か

 最初に炎とはどのようなものなのを考えてみましょう。炎は気体が燃焼するときに生じる光と熱を発している部分のことです。

ろうそくの炎
ろうそくの炎

 液体の灯油や固体の紙などが燃えるときにも炎が出ますが、これらの炎は灯油が熱で気化したり、紙が熱で分解したりして生成した可燃性気体が燃焼しているものです。炎の色は何が燃えているのか、酸素がどのぐらい取り込まれているかによって変わります。


ろうそくの炎

 ろうそくに使われているロウは主に炭素原子と水素原子からなる炭化水素化合物です。普通のろうそくはパラフィンという炭化水素化合物が使われています。

パラフィンとは

 パラフィンは化学式CnH2n+2で表すことができるアルカンと呼ばれる炭化水素化合物のうち炭素数が大きいもののことです。アルカンはパラフィン系炭化水素とも呼ばれ、炭素数の少ないものにはメタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)などの可燃性気体があります。

プロパンの構造式と分子式
プロパンの構造式と分子式

 ろうそくの芯に火をつけると、芯に染みこんでいたロウが熱で気化・分解して燃焼します。これが炎になります。芯の近くのロウが熱で溶けて液体となり、液体のロウが芯に染みこむので、ろうそくは燃え続けることができます。ろうそくの炎は次の図のように3つの部分からなります。

ろうそくの炎
ろうそくの炎

 炎の一番内側の部分は炎心と呼ばれます。炎心は気化したロウが存在するだけで燃焼は起きていません。

 炎心の外側は内炎と呼ばれ、この部分では燃焼が起きています。しかし、内炎の燃焼は酸素が不十分なため不完全燃焼となっており、炭素の微粒子が生じています。この微粒子は燃焼で高温となり熱放射によってオレンジ色の光を出します。これがよく見る炎の色です。

 内炎の外側は外炎と呼ばれ、この部分は酸素が十分にあるため完全燃焼となっており、ろうそくの炎の中で最も温度が高いところです。外炎は明るいところではよく見えませんが、暗い場所では見えます。この部分には、炭化水素の燃焼で生じた高エネルギーで不安定な励起状態にあるラジカルと呼ばれる形になった原子や分子あるいはイオンが存在します。ラジカルはすぐに安定した低エネルギーの基底状態に戻りますが、このとき差分のエネルギーに相当する波長の光を出します。このような発光現象をルミネセンスといいます。

 なお、熱放射で出てくる光の色は発光している物質の温度が高くなるにつれて明るい色となりますが、ルミネセンスで出てくる光の色は温度とは関係ありません。

アルコールランプの炎

 メタノールを燃やすと炎にはほとんど色がついていません。メタノールには炭素が1つしか含まれていないため完全燃焼しやすくメタノールのほとんどが二酸化炭素と水になるからです。

ガスコンロの炎

 ガスコンロに使われるガスは都市ガスではメタン、プロパンガスではプロパンが主成分です。メタンやプロパンガスは常温で気体の炭化水素化合物です。ろうそくでは、燃焼に必要な酸素は炎のまわりの空気から取り込まれます。それに対してガスコンロはガスを燃焼する前にガスと空気(酸素)を混合します。

 ガスコンロの炎にも、ろうそくの炎と同じように芯があります。この部分にはガスと酸素が一緒に存在していますが燃焼は起きていません。ガスはこの芯のすぐ外側で燃焼しますが、この部分では炭化水素から生じた不安定なラジカルが存在し、青い光を出して燃えています。ガスコンロの炎が青いのは、空気を十分に混ぜてあり、酸素が豊富だからです。同じガスでも普通の使い切りガスライターの炎では、酸素が豊富にある炎の下部は青色、酸素が不足している上部はオレンジ色になります。空気をガスと一緒に積極的に送り込むターボライターの炎は透き通った青色になります。

ガスライターとガスコロンの炎
ガスライターとガスコロンの炎

このように炎の色は酸素の量によって変わります。 酸素を十分に与えると青色の炎となり、酸素が不十分だとオレンジ色の炎になるのです。

酸素量 炎の色 燃焼しているもの
不十分 オレンジ色 炭化水素が分解して生じた炭素の微粒子
熱放射による
十分 青色 炭化水素が分解して生じた不安定なラジカル
ルミネセンスによる

酸素の量と炎の色の関係

さまざまな色の炎

 ガスコンロにみそ汁などを吹きこぼしたときに炎の色が一瞬黄色になるのを見たことがあるでしょうか。また、銅製の鍋などを使ったときに炎が一瞬青緑色になる場合があります。

 これらの場合、みそ汁に含まれている食塩中のナトリウムや鍋に使われている銅の金属元素が炎の色の元となっています。高温で励起状態となった元素が、基底状態に戻るときに、その元素特有の色の光を出します。これを炎色反応といいます。

 ガスコンロの炎の中で針金などの先につけた銅線や食塩を炎の中に入れてみると簡単に炎の色を変えることができます。身近なところで炎色反応を利用したものは花火です。

 花火は赤色や緑色など様々な色を出しますが、花火の火薬には炎色反応で色を出す物質が着色剤として含まれています。

着色剤 炎の色 元 素
食塩 オレンジ色 ナトリウム
硫酸銅 青緑色
ホウ酸 緑色 ホウ素
塩化カルシウム 橙色 カルシウム
塩化リチウム 深赤色 リチウム

主な着色剤と炎の色

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【関連記事】

2020年9月18日金曜日

仮面の忍者 赤影|赤青白黒紅|光と色のヒーロー列伝⑤

 光あるところに色がある。まこと艶やかな色に数知れぬ波長の光があった。

 たくさんのヒーローがいますが、光や色に関係するヒーローは少なくありません。このシリーズは光と色に関係するヒーローを取り上げていきます。

 第5回は色のヒーロー「仮面の忍者 赤影」の登場です。

赤い仮面は謎の人 赤影参上

 赤影は横山光輝さんの漫画・テレビ番組・アニメ・映画「仮面の忍者 赤影」に登場する主人公の仮面のヒーローです。

仮面の忍者赤影 第01話[公式]

 東映が1966年に横山光輝さんに忍者を主人公として特撮テレビの原作を依頼し、横山光輝さんが少年サンデーで「飛騨の忍者 赤影」の連載を開始しました。この原作を元に東映と関西テレビがテレビドラマ「仮面の忍者 赤影」を制作し、1967年に放映が開始されました。テレビドラマには原作には出てこない怪獣や円盤なども登場しますが、後に原作のタイトルも「仮面の忍者 赤影」に改められました。

 

 当時、特撮でカラー番組だったのは「マグマ大使」と「ウルトラマン」のみで、時代劇ではカラー番組はありませんでした。「仮面の忍者 赤影」は3番目の特撮カラー番組として、そして初めての時代劇カラー番組として制作されました。その背景にはスポンサーの三洋電機のカラーテレビの販売促進という戦略があったようです。

 カラーテレビの販売促進ですから、登場するヒーローもカラー、つまり色をテーマとした番組にもなりました。そして、原作者の横山光輝さんが考えたのが赤影・青影・白影の3人の色のヒーローの集団でした。色のヒーローの集団というと、石ノ森章太郎「秘密戦隊ゴレンジャー」を思い出しますが、そのルーツは「仮面の忍者 赤影」にあったのです。

豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃

 第一部は「豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃、琵琶湖の南に金目教という怪しい宗教が流行っていた。 それを信じない者は恐ろしい祟りに見舞われるという。その正体は何か? 藤吉郎は金目教の秘密を探るため、飛騨の国から仮面の忍者を呼んだ。その名は…赤影参上!」というナレーションで始まります。

 子どもの頃はあまり時代については何も考えないで見ていましたが、第一部は元亀2年(1571年)です。1571年というと織田信長は伊勢の永島一向一揆や浅井・朝倉連合軍や六角氏と敵対しており、織田信長包囲網と言われる時代です。比叡山焼討ちがあったのもこの年です。

 金目教は甲賀流忍者である祈祷師・甲賀幻妖斎が率いる謎の宗教ですが、その背後には六角氏がいました。金目教は霞谷七人衆という甲賀忍者の集団が暗躍しますが、歌舞伎のような派手な出で立ちをしています。

 赤影・青影・白影は飛騨の影一族という忍者集団から派遣された忍者で、織田家の家臣の秀吉に使えた忍者ということです。また、「木下藤吉郎秀吉」という署名の入った1565年の書状が残っています。豊臣秀吉がまだ木下秀吉だった頃だったのではないかと思います。元亀3年(1572年)には羽柴秀吉と改名しています。

 第二部は「織田信長の活躍した頃、海を渡ってきた奇怪な妖術者の群れがギヤマンの鐘を求めて各地を襲撃した。世界制覇を狙うまんじ党の仕業である。強烈なエネルギーの製法を秘めたギヤマンの鐘3つ。日本の平和を願う信長は、まんじ党の野望を粉砕すべく飛騨の国から仮面の忍者を呼んだ。その名は…赤影参上!」というナレーションで始まります。

 まんじ党は死んだはずの甲賀幻妖斎が結成した結社です。南蛮人のペドロが発明した「デウスの鐘」「サタンの鐘」「マリアの鐘」の鐘3つを手に入れるため、甲賀忍者の「うつぼ忍群」に属するまんじ党七人衆が暗躍します。まんじ党七人衆は、それぞれ赤・青・白・茶・黄・緑・白黒縞の服をまとっており、色の悪党集団となっています。

 第三部は「悪大将、夕里弾正の反乱を知った織田信長は居城清州から小人数を率いて京の都へ急いだ。しかし、その道筋には、弾正に味方する根来の忍者が、恐ろしい怪獣を操って待ち構えている。道中の無事を願う織田信長は飛騨の国から仮面の忍者を呼んだ。その名は…赤影参上!」というナレーションで始まります。

 史実では根来衆は織田信長には好意的でした。天正5年(1577年)の信長による紀州攻めに加勢していますし、天正9年(1581年)の京都御馬揃えにも参列しています。良好な関係だったと考えられます。伊賀勢であれば信長に敵対もわかるのですが、伊賀忍者を悪者にしたくなかったのかもしれません。信長の死後は、根来衆は秀吉と敵対しました。

 赤影では根来十三忍が敵として登場します。第三部からは怪獣がたくさん登場するようになり、敵の忍者の集団の出で立ちはごく普通の忍者風になりました。

 第四部は「飛騨の国、影一族に伝わる黄金の仮面は、あらゆる忍者にとって憧れの的、栄光のシンボルであった。そしてまた、仮面には、莫大な黄金の謎が秘められているのだ。この仮面を奪い、忍者の王座を狙う者が現れた。怪忍獣を使う魔風雷丸である。立て仮面の忍者…赤影参上!」というナレーションで始まります。

 魔風雷丸が率いる忍者集団の風磨忍群が影一族の黄金の仮面を奪います。風磨忍群と赤影たちとの間で、黄金の仮面の争奪戦が繰り広げられます。

 赤影は時代劇ではありますが、この時代にはありえない機械仕掛けのものがたくさん出てきます。東映は同時期にウルトラマンの後番組としてキャプテンウルトラを制作しています。赤影が水曜日の午後7時、キャプテンウルトラが日曜日の午後7時の放映でした。怪獣ブーム全盛期の頃で、原作には出てこない怪獣や円盤などを登場させるなど、型破りな番組作りが、子どもたちの心を鷲掴みにすることができたのだと思います。

仮面の忍者赤影BGM 赤影のテーマ(theme of red shadow)

 当時は、仮面をつけ、刀を背中に差して、遊びまわる子どもがたくさんいましたし、自分もそうやって遊んでいました。誰が赤影、青影、白影の役をするのか。「じゃあ、僕は白影の役をやるよ」と言った子の心の深さをしみじみと感じたものです。その子は凧揚げが大好きでした。

色々の忍者

 赤影の仲間は青影と白影だけではありません。他にも影一族の忍者が登場しますが、その中で色がついているのは、優れた感覚能力をもつ黒影と火炎の術を操り、分身の術が得意な紅影です。

 赤影に登場する色は虹の七色ではありません。どちらかというと日本的な色です(虹の色の数と日本の文化-虹ができる仕組み⑥)。まんじ党七人衆も赤・青・黄・緑の4色以外は白・茶・白黒縞です。虹の7色にはしなかったというのがすごいところです。色ではありませんが、薄影という忍者も登場します。白・黒・白黒縞・薄影はアリストテレスの変改説を彷彿とさせます。

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2020年9月15日火曜日

化学トリック=だまされないぞ!(ブルーバックス、山崎昶著)

化学トリック=だまされまいぞ!―化学推理クイズ (ブルーバックス)

 ブルーバックスのTwitterを眺めていたら、山崎昶先生の「化学トリック=だまされないぞ!」が紹介されていました。山崎先生の2008年の著作です。既に中古本しか入手できませんが、電子書籍は入手可能です。

 登場人物のエヌ氏がいろいろな事件を解き明かしていくという流れで、化学トリックがいろいろと解説されていきます。世にも奇妙な物語のような30編で、あっという間に読めてしまいます。

 この本は山崎昶先生に送っていただきました。山崎先生とは自分が20代後半ぐらいに初めてお目にかかりました。家が同じ市内だったこともあり、何度か食事などご一緒させていただきました。やがて自分も著書を出すようになり、山崎先生に読んでもらおうと思い拙著を送りました。以来、先生もご自身の著書を送ってくださるようになり、著書のやり取りが始まりました。自分など足元にも及ばないほど多くの著書を出されているので、もらう方が多くて恐縮していました。

 山崎先生は残念ながら2018年に他界されました。30年ぐらい前に学会のお土産で先生に頂いた周期表ネクタイはいまでも使っています。

説明

 面白くてためになる化学推理クイズ傑作集。成田空港の手荷物検査でテロリストに間違われた中年の女性。バッグの中身は財布、口紅、眼鏡、体温計、手鏡。飛行機の空中分解も起こし得る問題の持ち物はどれ? (ブルーバックス・2008年7月刊)

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

山崎/昶

1937年生まれ。1960年、東京大学理学部化学学科卒業。1965年、東京大学大学院博士課程修了。理学博士。同年、東京大学助手(理学部化学教室)。1975年、電気通信大学助教授。1999年から2003年まで日本赤十字看護大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

日常に潜むミステリーを化学の知識でエヌ氏が解決。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

もくじ

  • トリック1   奇妙な電話
  • トリック2   持ち込み禁止
  • トリック3   宮殿の氷
  • トリック4   篝火の秘密
  • トリック5   漆器の値打ち
  • トリック6   爆発した紙くず
  • トリック7   家庭菜園の落とし穴
  • トリック8   色が違う!
  • トリック9   盗まれた仏像
  • トリック10 「ボトックス」は猛毒か
  • トリック11 美女の呪い
  • トリック12 愛犬がおかしい!
  • トリック13 キノコの怪
  • トリック14 消えたルビー
  • トリック15 掌の上の炎
  • トリック16 ワラビでテロ?
  • トリック17  白紙の手紙
  • トリック18 「自白剤」は効くのか
  • トリック19 謎のシミ
  • トリック20 中華料理と毒殺
  • トリック21 血が止まらない!
  • トリック22 モロヘイヤの正体
  • トリック23 味が変わった!
  • トリック24 洗濯の罠
  • トリック25 電子レンジで燃える紙
  • トリック26 絵手紙の不思議
  • トリック27 捨てられる魚
  • トリック28 出さなかった年賀はがき
  • トリック29 檀君の呪い
  • トリック30 血の奇蹟

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2020年9月11日金曜日

フルベッキ群像写真  幕末の志士で囲まれた写真?

 幕末の頃と思われる古い写真が出てきました。写真には、西郷隆盛、大久保利通、勝海舟、坂本龍馬、桂小五郎、中岡慎太郎・・・、名だたる幕末の志士の名前が記入されています。そして左下には「写真撮影 上野彦馬 慶應元年(一八六五年)」とあります。


フルベッキ群像写真

 この写真は「フルベッキ群像写真」と呼ばれているもので、アメリカ合衆国に移民したオランダ出身の宣教師グイド・フルベッキとその子息を囲んで撮影した写真です。フルベッキは在米オランダ改革派教会から日本に派遣されました。1859年から亡くなる1898年まで日本に在住しました。

 この写真はフルベッキを幕末の志士が囲んで撮影した一枚と言われることがありますが、記入されている幕末の志士の名前はフェークとされています。

 それではこの写真はいかなるものかというと、長崎の英学校「致遠館」の学生がフルベッキを囲んんだ写真を、幕末の写真師・上野彦馬が1868年(明治元年)に撮影したものとされています。写真には後に政治家や官僚として活躍した人物も写っていますが、幕末の志士たちは別人です。

 フルベッキ群像写真は昭和49年(1974年)に雑誌「日本歴史」でフルベッキを囲む幕末の志士たちとして紹介されました。雑誌ですから学術的な価値はありませんでしたが、夢のある写真でもあるためか、広まっていきました。「日本歴史」で紹介されたときには、特定された人物は22名でしたが、時の流れを経ていく中で増えていき、現在では(上記の写真)44人にもなっています。

 フルベッキ群像写真は、繰り返し話題になるので、そのうち、また、幕末の志士の集合写真として紹介されるかもしれません。

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2020年9月8日火曜日

「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 少し前の本ですが、現在も入手可能です。光学とレンズの初心者向けの図解入門書です。フルカラーですので、光路図などがとてもわかりやすくなっています。光学とレンズのキホンのキから解説しているので、これからレンズのことを勉強したい人だけでなく、レンズの基本を教える人にとっても役に立つと思います。

レンズを知ると光学はこんなにおもしろい!

昨今のデジタル一眼レフカメラのブームもあって、レンズのことをもっと知りたい人が増えています。本書は、高校生から一般の人を対象に、レンズのことを知る超入門書として、図解や写真をふんだんに使いながら、わかりやすく光の世界を解説します。

レンズを知ることは、光の性質を知ることにつながります。また、メガネや望遠鏡などの光学機器ばかりか、ヒトの眼の構造の理解も進みます。身近な例を題材に、徹底してやさしく、おもしろい話題を集めました。

単行本: 224ページ
出版社: ソフトバンククリエイティブ (2010/6/18)
ISBN-10: 4797357150
ISBN-13: 978-4797357158
発売日: 2010/6/18

目次

はじめに
登場キャラクターのご紹介

第 1 章 レンズのお話

001 レンズは光の屈折をたくみに利用するために生みだした道具
002 レンズの歴史
003 小さなものを拡大して見る顕微鏡の歴史
004 遠くのものを近くに見る望遠鏡の歴史
005 レンズでできた像を記録するカメラの歴史

COLUMN レンズの語源

第 2 章 光のふるまい

006 光の直進性と逆進性
007 光の反射の法則
008 鏡による光の反射
009 光の乱反射
010 透明な物体を通る光
011 光は物質の境界面で折れ曲がる 光の屈折
012 光はどのような道筋を選んで進むのか フェルマーの原理
013 スネルの法則①
014 スネルの法則②
015 空気のゆらぎが光を曲げる 陽炎と逃げ水のしくみ
016 空気のゆらぎが光を曲げる 蜃気楼と大気差のしくみ
017 プリズムでできる光の色の帯 光の分散
018 大空にかかる光の色の帯 虹ができるしくみ
019 虹の形はどうして円弧なのか
020 光は波か粒子か① 光の回折
021 光は波か粒子か② 光の干渉
022 光の回折と干渉でできる虹のしくみ
023 光は縦波か横波か
024 偏光メガネとブリュースターの法則
025 光は電磁波の仲間
026 光の速さはどれぐらいか
027 光のふるまいを考える幾何光学と波動光学

COLUMN 近接場光ー光の回折限界を超える光 66

第 3 章 レンズのしくみと働き

028 点光源からでた光はどのように進むか
029 影のでき方
030 ピンホールでできる像
031 ピンホールカメラでできる像
032 レンズの基本的なしくみ
033 凸レンズと凹レンズの基本的な働き
034 レンズの焦点と焦点距離
035 レンズの主点と主平面
036 薄肉球面レンズの焦点距離の求め方
037 レンズを通る光の進み方
038 凸レンズでできる実像
039 無限遠からやってくる光は凸レンズでどこに像を結ぶか
040 凸レンズでできる虚像
041 凸レンズを半分隠すと実像と虚像はどうなるか
042 物体が焦点の位置にあるとき実像と虚像はどうなるか
043 凹レンズでできる虚像
044 レンズの写像公式と倍率① 凸レンズの実像の場合
045 レンズの写像公式と倍率② 凸レンズの虚像の場合
046 レンズの写像公式と倍率③ 凹レンズの虚像の場合
047 レンズの写像公式のまとめ
048 レンズの倍率を求めるもう1つの方法
049 レンズの作図の裏技① 光軸上の1点からでて凸レンズに入射する光
050 レンズの作図の裏技② 凸レンズに任意の傾きで入射する光
051 レンズの作図の裏技③ 凹レンズを通る光の場合
052 2枚のレンズを通る光
053 凹面鏡と凸面鏡のしくみ
054 凹面鏡と凸面鏡で反射する光
055 レンズの分類の仕方
056 表面屈折を利用したレンズ① 球面レンズ
057 表面屈折を利用したレンズ② 非球面レンズ
058 表面屈折を利用したレンズ③ シリンドリカルレンズ
059 表面屈折を利用したレンズ④ トロイダルレンズ
060 表面屈折を利用したレンズ⑤ フレネルレンズ
061 表面屈折を利用しないレンズ① グリンレンズ(屈折率分布レンズ)
062 表面屈折を利用しないレンズ② 回折レンズ

COLUMN メタマテリアルー負の屈折率をもつ物質

第 4 章 レンズの性能

063 レンズをつくる光学ガラスに求められる性質
064 光学ガラスの屈折率
065 光学ガラスのアッベ数
066 光学ガラスの分類
067 ガラス以外の光学材料① 天然や人工の結晶
068 ガラス以外の光学材料② 光学プラスチック
069 レンズができるまで① 球面レンズのつくり方
070 レンズができるまで② 非球面レンズのつくり方
071 収差とはなにか
072 球面収差
073 球面収差の補正
074 コマ収差と非点収差
075 像面湾曲と歪曲収差
076 軸上色収差と倍率色収差
077 像の大きさと明るさ
078 Fナンバーと実効Fナンバー
079 開口数NAとレンズの分解能
080 絞りと瞳
081 絞りの位置とテレセントリック
082 焦点深度と被写界深度

COLUMN ガラスはなぜ透明なのか

第 5 章 レンズを使った身近なもののしくみ

083 ヒトの眼の構造
084 正常な眼のしくみと働き
085 近視と遠視
086 老視と乱視
087 コンタクトレンズのしくみ
088 ルーペのしくみ
089 ルーペの倍率
090 光学顕微鏡のしくみ① 基本的なしくみ
091 光学顕微鏡のしくみ② 倍率と分解能
092 望遠鏡のしくみ① 基本的なしくみ
093 望遠鏡のしくみ② ケプラー式望遠鏡の光の進み方
094 望遠鏡のしくみ③ オランダ式(ガリレオ)望遠鏡の光の進み方
095 望遠鏡のしくみ④ 望遠鏡の倍率
096 望遠鏡のしくみ⑤ ピント合わせが必要なのはなぜ?
097 カメラのしくみ① Fナンバーとシャッタースピード
098 カメラのしくみ② 画角と焦点距離
099 カメラのしくみ③ デジタルカメラの画角と焦点距離
100 進化するレンズ 流体レンズのしくみ

COLUMN 像反転系 倒立像を正立像として見る

参考文献
索引

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2020年9月7日月曜日

AIフォトエンハンサーで虹の色を強調してみたら7色を確認できた

 手持ちのグラフィックソフトウェアの色調補正のフィルタに「AIフォトエンハンサー」というのがありましたので、虹の写真に適用してみました。

 もとの写真がこれです(少し明るさとコントラストを調整しています)。 


AIフォトエンハンサーをかける前の虹の写真

 この写真にAIフォトエンハンサーをかけたのが次の写真です。


AIフォトエンハンサーをかけた虹の写真

 背景がだいぶ暗くなってしまいましたが、その分、虹の色が際立ちました。そこで、虹の部分だけ拡大した写真にAIフォトエンハンサーをかけてみた写真がこちらです。


虹の拡大写真にAIフォトエンハンサーを適用

 元の写真より虹の色が綺麗に出ました。よく見ると、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫とニュートンが決めた7色が確認できます。

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2020年9月5日土曜日

2本目の虹は何か?|二重の虹は主虹と副虹

虹を探してみよう

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 雨上がりに日差しが強くなってきたら、太陽を背にして空を見てみましょう。大気中に十分に水滴が浮遊し、太陽の高度がそれほど高くなく、日差しが十分に強いなどの条件が揃うと、空に虹が現れていることでしょう。


空にかかる虹

虹をよく観察してみよう

 虹と言えば7色からなる1本のアーチを思い出す人も多いと思います。しかし、虹をよく見てみると、明るい虹の上方に、もう1本、色が薄い暗い虹が見えることがあります。この暗い虹は気象条件によっては見えにくいのですが、はっかりと見えることもあります。中には初めて2本目の虹を見て、虹が二重にかかっていることに気がついた人もいるのではないでしょうか。上の写真もよく見てみると、明るい虹の上に、暗い虹がうっすらと写っています。虹が二重にかかっていることがわかります。

二重の虹は主虹と副虹

 次の写真は虹の写真の明るさとコントラストを調整したものです。虹が二重にかかっていることがわかります。二重の虹の内側の明るい虹のことを主虹、外側の暗い虹のことを副虹といいます。


主虹と副虹

 主虹と副虹ができる仕組みは、このブログの下記の記事で説明していますので、興味がありましたらご一読ください。

 また、虹に関する話は下記で読むことができます。

虹ができる仕組み

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2020年9月3日木曜日

誰が光学顕微鏡を発明したのか|顕微鏡の歴史①

2枚のレンズを組み合わせた道具を考えたのは誰か

 レンズを2枚組み合わせて物体を見る実験は誰もが簡単にできます。そのため、世界で初めてその実験したのかはわかっていません。しかしながら、現存する資料を調べてみると、どうやら13世紀のイギリスの哲学者・キリスト教司祭のロジャー・ベーコンが最初の人と考えることができそうです。


ロジャー・ベーコン(1214-1294)

 ロジャー・ベーコンは1267年に発表した『大著作(The Opus Majus)』の第5部で光学を取り上げています。レンズ光学の研究を進め、拡大鏡などについて言及しています。そして、レンズを組み合わせて遠くのものを近くに見たり、小さなものを大きく見たりすることが可能であることが書き記されています。つまり、ロジャー・ベーコンは世界で初めて望遠鏡や顕微鏡の基本原理について初めて言及した人と考えることができるでしょう。

Opus Majus, Volumes 1 and 2

Opus Majus, Volumes 1 and 2

顕微鏡の発明者は誰か

 1590年頃、オランダのミデルブルフの眼鏡職人のサハリアス・ヤンセンは2枚の凸レンズを使うと、1枚の凸レンズを使ったルーペより物体を大きく拡大して見ることができることを発見し、顕微鏡の原型を発明しました。実際にはサハリアスの父親で眼鏡職人のハンス・ヤンセンもこの発明に重要な役割を果たしていたと考えられています。そこで、サハリアスとハンスのヤンセン親子が顕微鏡を発明したとされています

サハリアス・ヤンセン
サハリアス・ヤンセン(1580-1638)
(ハンス・ヤンセンの写真は見つからない)

 顕微鏡の発明者がヤンセン親子だという説明において、とされていますとしたのは、最初に説明した通り、2枚のレンズを組み合わせる実験は非常に簡単で、誰でもやってみることができたことは想像に難しくないからです。

 なにしろ320年も前にロジャー・ベーコンが顕微鏡や望遠鏡の基本原理について言及しているのです。この間に顕微鏡を作った人はいなかったとは言えません。しかしながら、その間に誰かが顕微鏡を作ったという記録も残っていません。

 ヤンセン親子が顕微鏡の発明者とされている根拠は、サハリアス・ヤンセンがオランダの外交官ウィリアム・ボーレルに送った手紙とされています。この手紙に顕微鏡のことが書かれていたそうです。そして、ボーレル自身もヤンセンが作った顕微鏡を見たようです。

 この顕微鏡はオランダの発明家のコルネリウス・ヤコプスゾーン・ドレベルの手に渡ったとも言われています。ドレベルは1600年にミデルブルフを訪れ、ヤンセンと出会い、光学とレンズ磨きを学んだという記録も残っています。

 ドレベルは1621年に顕微鏡を制作していますが、クリスティアーン・ホイヘンスは顕微鏡の発明者はドレベルであると言及しています。おそらく、ドレベルの制作した顕微鏡が実用的なものだったからではないでしょうか。


コルネリウス・ヤコプスゾーン・ドレベル(1572-1633)

 また、イタリアの天文家フランチェスコ・フォンターナが1681年に顕微鏡を発明したと主張したという記録もあるようです。望遠鏡を発明したとされるオランダの眼鏡職人のハンス・リッペルスハイが顕微鏡を発明したという説もあります。

 このように顕微鏡の発明者には諸説ありますが、現在において、多くの科学者はヤンセン親子が顕微鏡の発明者であることを認めています。

 例えば、オランダの生物学者で後に国際的な顕微鏡の専門家となったペーター・ハルティンクはヤンセンが発明者だと主張しています。


ペーター・ハルティンク(1812-1885)

 おそらくハルティンクの1923年の著書『Het Mikroskoop』を読めば、そのあたりのことも書いてあるのではないかと思いますが、オランダ語で書かれているため調べるのは断念します。

Het Mikroskoop

Het Mikroskoop

 余談ですが、ハルティンクは1845年に顕微鏡で観察する対象物の大きさ測定するため、ミリミリメートル(mmm)という新しい単位を提唱しました。これが後にマイクロメートル(μm)となりました。

 さて、ヤンセン親子が作成した顕微鏡はあまり実用的なものではなかったようです。何か微細な世界を観察したという記録も残っていません。

誰が光学顕微鏡を発明したのか|顕微鏡の歴史①

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2020年9月1日火曜日

ナショナルキッド|光源|光と色のヒーロー列伝④

 光あるところに色がある。まこと艶やかな色に数知れぬ波長の光があった。

 たくさんのヒーローがいますが、光や色に関係するヒーローは少なくありません。このシリーズは光と色に関係するヒーローを取り上げていきます。

第4回は光のヒーロー「ナショナルキッド」の登場です。

雲か嵐か稲妻か ナショナルキッド

 ナショナルキッドは東映が制作したテレビ番組・漫画「ナショナルキッド」に登場する主人公の覆面ヒーローです。

National Kid Abertura

 昭和35年(1960年)に東映によって制作され、日本教育テレビ(現在のテレビ朝日)で放映されました。ナショナルキッドの「ナショナル」は松下電気(現在のパナソニック)がかつて使用していたブランド名で、松下電気が単独スポンサーとなりました。その背景には松下電気の「子どもたちに科学の興味をもたせたい」という考えがあったようです。映像には「ナショナル」ブランドとのタイアップもしっかり組み入れられていました。

宇宙にはばたく快男児

 ナショナルキッドは地球から3万光年離れたアンドロメダからやってきたスーパーヒーローという設定です。アンドロメダ銀河は地球から250万光年彼方のため、ナショナルキッドの母星アンドロメダはアンドロメダ銀河ではないようです。

 ナショナルキッドは地球では旗竜作(はた りゅうさく)という科学者として活動しています。城北大学付属三笠小学校に通う少年探偵グループの子どもたちが「マジックラジオ」で呼ぶと、どこからともなく空を飛んでやってきます。このマジックラジオは昭和35年に発売されたナショナルの小型トランジスタラジオT-11型です。

 ナショナルキッドの主要な武器は反重力作用をもつエロルヤ光線を放つエロルヤ光線銃です。このエロルヤ光線銃もナショナルの懐中電灯と同じ形をしています。

 ナショナルキッドは格闘能力も高く、空中でも海底でも闘うことができますが、「ラジューX」という放射線を浴びると超能力を失ってしまうという弱点をもっています。また、「磁気メタル」の手枷足枷を解くことができません。 

 ナショナルキッドは白黒番組だったため、映像からは衣装の色は分かりませんが、金色のヘルメットにピンク色の仮面、青色の胴に赤色の「N」マーク、マント・手袋・靴が金色で、タイツが濃いグレーの姿とされています。

光源

 ナショナルの提供番組と言えば「明るいナショナル」で電球や蛍光灯などの販促のイメージがあります。ナショナルキッドでは「明るいナショナル」というフレーズはいまだ使われていませんでしたが、エロルヤ光線銃が懐中電灯と同じ形など、光の元になる光源をイメージするヒーローです。

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