光るとは
辞書で「光る」を調べてみると、「光を放つ」「光を反射して輝く」などの説明が出てきます。前者は物体が自ら光を出す状態、後者は物体が光を反射して、あたかも自ら光を出しているように見える状態です。
私たちのまわりには光るものがたくさんありますが、太陽や電灯のように、みずから光を出す物体を光源といいます。
夜空に輝く月や輝いている水面などは光を反射しているだけなので光源ではありません。
高温の物体は光を放つ
高温に熱せられたものが光を出すことは多くの人が経験から知っていると思います。例えば、炭に火をつけると、炭の表面から赤い光が出てきます。高温の物体から光が出てくるしくみを考えてみましょう。
電熱線に電気と通すと、発熱と同時に暗赤色になります。電熱線は温度が高くなるにつれて明るい色を出します。このとき、電熱線が発熱するのは、電熱線の金属原子が振動するからです。原子が振動するとき、原子の中の電子は原子より軽いため、より激しく振動します。電荷をもつ電子が振動すると、電磁波が発生します。
冷たい氷を含めて、あらゆる物体は熱をもち赤外線を出しています。これは電子の振動に由来します。そして、物体の温度が上昇して電子の振動エネルギーが可視光線のエネルギーに相当する大きさになると、目に見える光が出てきます。電子の振動が激しくなるにつれて、光の波長の種類と光の量が増え、やがて白色光や青白い光が出てくるようになります。このように物体が熱を光として出す現象を熱放射といいます。熱放射で物体から出てくる光の色や強さは、物体によらず温度で決まります。これを黒体輻射といいます。
身近な例では、白熱電球は、熱放射で光を出しています。白熱電球は電気エネルギーを熱エネルギーに変換してから光を出すため、電気エネルギーを光に変換する効率が低く、100 ワットの電球で 10%程度しかありません。そのため、光っている電球は非常に熱くなっています。
低温の物体も光を出す
光ってる蛍光灯は、白熱電球に比べると、それほど熱くありません。これは蛍光灯が電気エネルギーを光に直接変換しているからです。また、パーティやコンサートで使われるスティック型のケミカルライトは、スティックを折ると化学反応が起こり、光を出し始めます。このとき、スティックは熱くなりません。
ホタルは体内で化学反応を起こし光を出しますが、光っているお尻の部分をさわっても熱くありません。
美しい!ほたるの乱舞 Fireflies fly around a lot
このような熱を伴わない光を冷光といいます。物体が熱を伴わずに光を出すしくみを考えてみましょう。
物質はたくさんの原子からできています。原子はプラスの電気をもつ原子核とマイナスの電気をもつ電子からできています。通常、原子は原子核と電子の電荷がつり合った安定したエネルギー状態を維持しています。このとき、電子のエネルギー状態は安定した基底状態にあります。原子が外部から何らかのエネルギーによる刺激を受けると、電子のエネルギー状態が高くなり励起状態となります。励起状態となった電子は直ちに安定した基底状態に戻ります。このとき電子は励起状態と基底状態の差分のエネルギーに相当する電磁波を放出します。この差分のエネルギーが可視光線のエネルギーに相当するとき、目に見える光が出てきます。
このような発光をルミネッセンスと呼び、電子を励起状態にする刺激をつけて区別します。たとえば、蛍光灯のように電気エネルギーを使うものはエレクトロルミネッセンス、ケミカルライトのように化学反応を使うものはケミカルルミネッセンス、ホタルのように生物によるものはバイオルミネッセンスと呼ばれます。また、光をあてると、光を出す蛍光塗料は、光を刺激に使っているのでフォトルミネッセンスと呼ばれます。
ルミネッセンスは原子や分子の中で電子が取るエネルギー状態が変化することで光が出てくる現象です。このような電子のエネルギーの状態変化を電子遷移と呼びます。ルミネッセンスで物質が光り続けるのは、刺激が与え続けられ、電子エネルギーの状態変化が繰り返し起こるからです。刺激がなくなれば光は出てこなくなります。
特殊な例として、りん光があります。りん光は電子が安定したエネルギー状態に戻るまでの時間が遅く、ジワジワと光を出します。夜光塗料がその例ですが、光のエネルギーを蓄えるという意味で蓄光とも呼ばれます。
電子のエネルギーの変化が光をつくる
熱放射にしろ、ルミネッセンスにしろ、物体の発光に共通するのは、電子がもつエネルギーの変化です。つまり、光は電子が持つエネルギーの姿形が変わったものといってもよいでしょう。
光あれ!光あるところに電子あり、光の輝きの影に電子の活躍あり。
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