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2026年1月26日月曜日

ケミカルライトが光る原理と仕組み

ケミカルライトとは

 コンサートやパーティーなどで使われるケミカルライト(Chemical Light)。最近はいろいろな色のものが手に入るようになりました。ケミカルライトは化学発光(化学ルミネセンス)によるライトの総称です。サイリューム、シアリウム、ルミカライトなどと呼ばれる場合もありますが、これらは登録商標です。

光の三原色のケミカルライト
光の三原色のケミカルライト

ルミネセンスとは

 物質は原子からできています。原子はプラスの電気をもつ原子核とマイナスの電気をもつ電子からできています。通常、原子は原子核と電子の電荷がつり合った安定したエネルギー状態を維持しています。このとき電子のエネルギー状態は安定した基底状態にあります。原子が外部から何らかのエネルギーによる刺激を受けると、電子のエネルギー状態が高くなり励起状態となります。励起状態となった電子は直ちに安定した基底状態に戻ります。このとき電子は励起状態と基底状態の差分のエネルギーを放出します。この差分のエネルギーが可視光線のエネルギーに相当するとき目に見える光が出てきます。このような発光現象をルミネセンスといいます。ルミネセンスは電子を励起状態にする刺激をつけて区別します。例えば、蛍光灯のように電気エネルギーを使うものはエレクトロルミネセンス、ケミカルライトのように化学反応で生じたエネルギーを使うものはケミカルルミネセンス、ホタルのように生物によるものはバイオルミネセンスと呼ばれます。光を当てると蛍光を出す塗料は、光を刺激に使っているのでフォトルミネッセンスと呼ばれます。

ルミネセンスの原理:励起状態となった電子は直ちに安定した基底状態に戻る。このとき電子は励起状態と基底状態の差分のエネルギーを放出する。
ルミネセンスの基本原理

 ケミカルライト以外に有名なケミカルルミネセンスとしてはルミノール反応が知られています。またホタルなどの生物発光も化学発光の一種です。ルミノール反応の原理と仕組みについては次のページを参照してください。

反応機構

 ケミカルライトのスティックの中には2つの液体が別々に入っていて、スティックを折ることによって混合します。片方の液体は光のエネルギーの元になるシュウ酸ジフェニルと蛍光色素(dye)と反応を進めるための物質(触媒)の混合物です。もう片方の液体は過酸化水素水です。

 シュウ酸ジフェニルと蛍光色素 (dye) と触媒の混合物と過酸化水素が混ざると、シュウ酸ジフェニルが過酸化水素で酸化されて分解し、フェノールと過シュウ酸エステル(ROOC-COOOH)を経て1,2-ジオキセタンジオンが生じます。1,2-ジオキセタンジオンは分解して二酸化炭素となりますが、このときに蛍光色素にエネルギーを与えます。励起状態となった蛍光色素はすぐに基底状態に戻りますが、このとき差分のエネルギーを光 (hν) として放出します。

シュウ酸ジフェニルと過酸化水素との酸化→1,2-ジオキセタンジオンの分解と色素の励起
→色素の緩和による発光
ケミカルライトの化学発光の反応式

光の三原色の混色の原理で様々な色を作れる

 ケミカルライトが出す光の色は使用する蛍光色素(dye)よって異なります。使用される蛍光色素にはさまざまな種類があり、それぞれ特有な色の蛍光を発します。蛍光色素を混ぜることによって別の光を作ることができます。たとえば赤・緑・青の色素を混ぜると白い光が出てきます。これは光の三原色の加法混色によるものです。


光の三原色
R:赤(レッド) G:緑(グリーン) B:青(ブルー)
C:青緑(シアン) M:赤紫(マゼンタ) Y:黄(イエロー) W:白(ホワイト)

 光の三原色の原理と仕組みについて次のページを参照してください。


ケミカルライトの用途

 ケミカルライトのスティックは防水性、絶縁性に優れています。ケミカルライトは発光に酸素を必要とせず、熱をほとんど発生しません。火花や炎も出さないため水中でも利用できます。安価で使い切りできるので軍隊、キャンプ、洞窟探検、ダイビングにおいて光源として利用されています。

ケミカルライトを使う米軍兵
ケミカルライトを使う米軍兵

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2024年9月12日木曜日

レンズの公式を焦点距離について解いた式

 レンズの公式は次の通りです \[\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\]  a : レンズの中心から物体までの距離  b : レンズの中心から像までの距離  f : レンズの焦点距離です。  この式を焦点距離 f について解くと次のようになります。  まず右辺を通分します。 \[\frac{1}{f} = \frac{b}{ab} + \frac{a}{ab}= \frac{a + b}{ab} \]  この式を f について解くと次のようになります。 \[ f = \frac{ab}{a + b} \]

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2022年4月6日水曜日

凸レンズでスクリーン上にできる実像の見え方を確かめる方法

凸レンズの実像はスクリーンにどのように映るか

 凸レンズでできる実像のでき方についてよく次のような問題が取りあげられます。

問1「次の図のようにFと穴を開けた板の実像をスクリーンに映したとき、凸レンズ側から見たときに実像はどのような形に見えるか。ア~エの中から選びなさい。」

図1 凸レンズでスクリーン上にできる実像の問題
図1 凸レンズでスクリーン上にできる実像の問題

 上図に実像を加えたものが下図のようになり、スクリーンに上下左右が反転した実像ができます。ですから上記の問題の答えはウになります。

図2 凸レンズでスクリーン上にできる実像の答え
図2 凸レンズでスクリーン上にできる実像の答え

 それでは問1の問題文が次の問2のようになったときに答えはどうなるでしょうか。

問2「次の図のようにFと穴を開けた板の実像をスクリーンに映したとき、スクリーン側から見たときに実像はどのような形になるか。ア~エの中から選びなさい。」

 問1の「凸レンズ側から見たときに」が「スクリーン側から見たときに」と変わっています。「スクリーン側から見たときに」はスクリーンの前側から見るのか、後側から見るのか釈然としない表現ですが、スクリーンの後側から見ると解釈しなければいけません。ですから、答えはスクリーンの後方(図ではスクリーンの右側)からみたときの実像の形を選ぶことになります。つまり答えはエです。

 凸レンズでできる実像の仕組みを理解しているかどうかを確認するのであれば、問題としては問1で十分なはずですが、問2のようにスクリーンを見る方向を変えた問題がよくあります。図2のように実像を書き込むことができていれば正しい答えを導くことはできると思いますが、問題をよく読まずにウと答えたり、あわてて誤答したりする人も多いでしょう。

 実際、問2に正答するには凸レンズでスクリーンに実像ができる仕組みの理解に加えてパズルのようなテクニックが必要です。問題をややこしくしているだけのような気もします。そうは言っても試験に出ますから、あわてずに正しい答えを導くことができるようにしておかなければなりません。このような問題では問題文をよく読んで、どの方向から見たときの実像を答えるのかしっかり確認しておく必要があります。

 次の図は物体とスクリーン上の実像を前後から見たときの見え方をまとめたものです。この図は物体と実像をそれぞれ表と裏から見たらどうなるかを示したものに過ぎません。じっくり考えれば答えを間違えることはありません。

物体とスクリーン上の実像を前後から見たときの見え方
図3 物体とスクリーン上の実像を前後から見たときの見え方

 しかしながら、あわてて混乱してしまうと図を見ていても正しい答えを導くことができなくなってしまいます。物体の形がこうだから上下左右反転してできた実像をこちらの方向から見たら・・・ややこしい限りです。テスト中には道具を使うこともできません。どうしたら良いでしょう。

凸レンズの中心を通る光線のみ考えてみる

 凸レンズでできる実像を考えるとき凸レンズを通る3本の光を考えて作図しますが、実像の向きだけを知りたいのであればレンズの中心を通る光線だけを考えれば十分です。これはピンホールを通る光線と同じです。この方法では凸レンズでできる実像の大きさは求めることができませんが物体に対して実像の向きがどうなるかはわかります。

ピンホールでできる
ピンホールでできる像

実像の見え方をどのように確認するか

 実像の見え方を確認する方法はいろいろなアイデアが出てくるかと思いますが、ここでは両手で確認する方法を紹介します。

 左手と右手を比べてみましょう。左手と右手は同じ形をしていますが重ね合わせることはできません。左手を鏡に映すと鏡の中に左手の虚像が見えます。この左手の虚像は右手と同じ形をしています。ですから左手と左手の虚像も重ね合わせることはできません。左手と右手の間に鏡が存在すると考えると、物体と鏡の中に映る虚像の関係を確かめることができます。左手と右手のような関係を鏡像の関係と言います。右手を鏡の中に映った左手の虚像と考えると、実際に鏡がなくても鏡にどのようにものが映るかを考えやすくなります。

左手と右手は鏡像の関係にある
左手と右手は鏡像の関係にある

 さてこの左手と右手の鏡像の関係を利用すると物体と凸レンズできる実像の関係を確かめることができます。物体と凸レンズでスクリーン上にできる実像の関係は上下左右が反転しています。そこで左手を物体としたときに凸レンズでスクリーン上にできる実像の見え方は上下を反転させた右手のようになります。

両手で物体と実像の関係を調べる
両手で物体と実像の関係を調べる

 親指と人差し指でLの字の形を作ったり、人差し指と中指と薬指の関節を利用したりすると物体と実像の関係がわかります。

 両手を下図のように並べて人差し指と中指と薬指の関節でFを考えてみましょう。

人差し指と中指と薬指の関節でFを考えて見る
人差し指と中指と薬指の関節でFを考えて見る①

 右手だけ上下をひっくり返します。

人差し指と中指と薬指の関節でFを考えて見る
人差し指と中指と薬指の関節でFを考えて見る②

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2022年1月20日木曜日

合わせ鏡(90度)に物体の虚像はどのように映るか

合わせ鏡をのぞいてみると

 1枚の平面鏡に自分の顔を映すと、頭は鏡の上側、あごは鏡の下側、左目は鏡の左側、右目は鏡の右側に映ります。それでは次の図のように2枚の平面鏡を直角につないだ合わせ鏡をのぞきこむと自分の顔はどのように映るでしょうか。

合わせ鏡(90度)をのぞいてみると
合わせ鏡(90度)をのぞいてみると

 この場合、頭は鏡の上側、あごは鏡の下側に映りますが、左目は鏡の右側に、右目は鏡の左側に映ります。試しに右眼をウインクしてみると、鏡の左側に映った目がウインクします。これは顔の左側が鏡の右側に、顔の右側が鏡の左側に映るからです。

 このとき光はどのような道筋を進んでいるのでしょうか。鏡に映すものを時計にして考えてみましょう。次の図の左側のように平面鏡の前に時計を置いて時計の真後ろから鏡をのぞくと文字盤がひっくり返った時計が映ります。このときの光の進み方を赤と青で示しました。光の反射の法則に従って一枚の鏡の中に時計の虚像が見えていることがわかります。

1枚の平面鏡に映る時計と2枚の合わせ鏡(90度)に映る時計
1枚の平面鏡に映る時計と2枚の合わせ鏡(90度)に映る時計

 右側のように2枚の平面鏡を直角に合わせ、鏡の接合面が中心になるように時計を置いて鏡の真後ろから鏡をのぞくと文字盤がひっくり返っていない時計が映ります。これは時計の左側から出た光が左側の鏡で反射し右側の鏡の中に映り、時計の右側から出た光が右側の鏡で反射し左側の鏡の中に映って見えるからです。2枚の鏡の中の虚像を全体として見ると文字盤がひっくり返っていない時計になります。

合わせ鏡で見える虚像の数

 次の図のように90度の合わせ鏡の前に物体を置いてのぞき込むと鏡の中に物体の虚像が3つ見えます。

合わせ鏡(90度)で見える虚像の数
合わせ鏡(90度)で見える虚像の数

 ここで鏡を合わせる角度を変えると見える虚像の数も変わります。合わせ鏡の角度をθとすると、見える虚像の数は次の式のようになります。光の直進性と光の反射の法則によって、鏡の角度と虚像の数が規則的な関係になるのです。たとえば60度では5個、30度では11個の虚像が見えます。

\[ 虚像の数=\mid \frac{360}{ \theta} - 1 \mid \]

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2021年12月10日金曜日

全身を映す鏡の大きさが身長の半分になる証明

全身を映す鏡の大きさ

 次の図1は全身を平面鏡に映したときの様子を示したものです。つま先Bからでた光は鏡のQで反射して眼Oに届きますが、このとき光はOQの延長線上のB'からやってくるように見えます。同様に頭Aからでた光は鏡のPで反射して眼Oに届きますが、光はOPの延長線上のA'からやってくるように見えます。そのため、鏡の中に自分の姿(像)が見えることになります。鏡の中に見える物体の像を、虚像といいます。私たちは経験から光が直線することを知っているためA'やB'から光がやってくると判断してしまいますが、A'やB'から光はでていないことを理解しておきましょう。

全身を映す鏡の大きさ
全身を映す鏡の大きさ

 全身を映すのに必要な鏡の大きさは、光の反射の法則によって入射角と反射角が等しいため、物体と鏡との距離と関係なく身長の1/2になります。どうして身長の半分になるのか考えてみましょう。

 図において、つま先Bから出た光は鏡のあらゆる面で反射しますが、眼Oから見えるところは鏡のQの位置になります。入射角=反射角ですから、鏡のQの位置は、眼Oとつま先Bの距離OBの1/2になります。同様に頭Aから出た光は鏡のあらゆる面で反射しますが、眼Oから見えるところは鏡のPの位置になります。入射角=反射角ですから、鏡のPの位置は眼Oと頭Aの距離OAの1/2になります。この2つの距離はそれぞれO''QとO''Pに相当します。足し合わせると身長の半分の大きさになります。

数式で証明してみよう

 図において身長ABは次の式で表すことができます。

\[AB=OA + OB\]

 全身を映すのに必要な鏡の大きさPQは次の式で表すことができます。

\[PQ=O''P + O''Q\]

 O''PとO''QはそれぞれOA/2とOB/2になりますから

\[PQ=\frac{OA}{2} + \frac{OB}{2}\]

 よって

\[PQ=\frac{OA + OB}{2}=\frac{AB}{2}\]

となり、全身を映す鏡の大きさPQは身長ABの半分になります。

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2021年4月5日月曜日

中学理科凸レンズの虚像の学習の疑問点

はじめに

 中学校第一学年理科の単元「光と音」で凸レンズの働きについて学習します。この学習の中で「物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたとき、実像と虚像はできるか」という問題が取り扱われます。この解答は次のような図を使って「物体を凸レンズの前側焦点に置くと、物体の1点から出た光が凸レンズから出た後に平行光となるため像はできない」と説明されます。教科書や参考書によっては「実像も虚像もできない」と解説されています。


物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたとき実像と虚像はできるか

 実際の学習において「凸レンズの前側焦点に物体を置いたとき、実像も虚像もできない」と教わっている中学生が多いようです。

何が問題点なのか

 結論から述べると「物体を凸レンズの焦点(前側)に置くと実像はできないが、凸レンズを覗くと虚像は見える」が正解です。「虚像はできない」「虚像は見えない」という説明は間違っています。

 「物体を凸レンズの焦点(前側)に置くと、物体の1点から出た光が凸レンズから出た後に平行光となる」は現象の理論的な説明ですから問題はありません。しかし、その後の「像はできない」の部分は実像なのか虚像なのか明記されておらず曖昧です。

 凸レンズを出た平行光は交わらないのでスクリーンに実像はできませんし、凸レンズを覗いても倒立した実像は見えません。ですから、実像を学習する節で「像はできない」と書いてあるだけなら、像は実像のことであることが明白ですので問題にはなりません。

 しかし、「像はできない」という意味に虚像を含めたり、明示的に「虚像はできない」「虚像は見えない」という説明は事実に反します。よく段階的な学習への教育的な配慮から難しい点はあえて省略して簡素化して説明することはありますが、さすがに事実に反することを教えるのは問題ではないかと考えます。

学習指導要領を見てみると

 平成29年告示の学習指導要領には凸レンズの働きの学習について下記の通り記載されています。

中学校学習指導要領(平成29年告示) 
2 内 容
(79ページ)
㋑ 凸レンズの働き 凸レンズの働きについての実験を行い,物体の位置と像のでき方と の関係を見いだして理解すること。
3 内容の取扱い
(85ページ)
イ アのアの㋑については,物体の位置に対する像の位置や像の大きさの定性的な関係を調べること。その際,実像と虚像を扱うこと。 

 この内容について解説編で次のように補足説明されています。

【理科編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 
(31ページ)注はブログ筆者が追加
㋑ 凸レンズの働きについて
 ここでは,物体と凸レンズの距離を変え,実像や虚像ができる条件を調べさせ,像の位置や大きさ,像の向きについての規則性を定性的に見いだして理解させることがねらいである。  はじめに,凸レンズに平行光線を当て,光が集まる点が焦点であることを理解させる。次に,物体,凸レンズ,スクリーンの位置を変えながらいろいろ調節して,スクリーンに実像を結ばせ,凸レンズと物体の距離,凸レンズとスクリーンの距離,像の大きさ,像の向きの関係を見いだして理解させる。(注1)
 また,物体を凸レンズと焦点の間に置き,凸レンズを通して物体を見ると拡大した虚像が見えることを理解させる。(注2)その際,例えば,眼鏡やカメラなど光の性質やレンズの働きを応用した身の回りの道具や機器などを取り上げ,日常生活や社会と関連付けて理解させるようにする。
 凸レンズを用いてできる像を観察して,その結果を考察させる際,作図を用いることも考えられるが,定性的な関係を見いだすための補助的な手段として用いるようにする。(注3
なお,光源と凸レンズを用いて実像を観察する実験では,目を保護するために,スクリーン等に像を映して観察するなどの工夫をし,凸レンズを通して光源を直接目で見ることのないよう配慮する必要がある。

 学習指導要領には特段の問題は見当たりません。この内容に沿って学習すれば凸レンズの働き、実像や虚像について適切に学習できると考えます。

 実像の学習内容(注1)については、「スクリーンに実像を結ばせ」とありますが、物体を凸レンズの焦点(前側)や焦点(前側)の内側に置くと実像ができないことは、「物体、凸レンズ、スクリーンの位置を変えながらいろいろ調節してスクリーンに実像を結ばせる」という実験をやってみればおのずと出てくる観察結果でしょうから学習の範囲と考えても良いでしょう。「スクリーンに実像を結ばせ」が前提条件であれば発展的な学習と捉えても良いでしょう。

 一方、虚像の学習内容(注2)については「物体を凸レンズと焦点の間に置き、凸レンズを通して物体を見ると拡大した虚像が見えることを理解させる」とあり、物体を凸レンズの焦点(前側)に置くことを想定していません。「虚像が見える」という言葉遣いも適切です。ですから、物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに虚像がどうなるかは発展的な学習になるでしょう。

 凸レンズの学習方法(注3)については「凸レンズを用いてできる像を観察して,その結果を考察させる際,作図を用いることも考えられるが,定性的な関係を見いだすための補助的な手段として用いるようにする」とあります。作図は補助的な手段と書いてあるのは、作図だけで説明してはいけないということまで配慮していると想像できます。

作図による実像と虚像の説明の妥当性

 冒頭に示したような図を使って実像ができないことを説明することは、図が学習指導要領にある「定性的な関係を見いだすための補助的な手段」になっていると言えます。物体の1点から出た光は凸レンズを出た後に平行光となり、その後は交わることがないため、どこにスクリーンを置いても実像は結ばないと説明することができます。

 一方、虚像については、この図だけでは説明できないのは明白です。作図はあくまで補助的なものであり、主要な説明が抜け落ちています。虚像の観察は学習指導要領にある通り「凸レンズを通して物体を見る」です。この操作なしに冒頭のような図を示して平行光の説明で「虚像はできない」「虚像は見えない」と結論づけることは学習指導要領の主旨に反しているように考えられますし、何よりも現物を使った実験観察の結果に反します。

 次の図は物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに見える虚像を図示したものです。凸レンズから出てくる平行光は目の角膜と水晶体で屈折し、網膜に虚像の実像を結びます。難しい説明を抜きにしても、観察結果からわかることです。


物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに見える虚像

 本件について関係組織に改善提案をされ、本記事にコメントを頂きているTomtomさんに、物体を凸レンズの前側焦点に置いたときに見える虚像の写真をご提供いただきました。

実験装置

  • ナリカ社製の光学台
  • 焦点距離10 ㎝の凸レンズ
  • 物体「と」と書いた紙と留め具


実験装置

物体とレンズの配置

  • 物体を凸レンズの手前10 cm、前側焦点の位置に配置。

物体とレンズの配置

凸レンズをのぞいて虚像を観察

 次の写真は凸レンズの後方35 cmの位置からのぞいたときの様子です。「と」の虚像が見えます。これが無限遠にできた虚像です。

 無限遠の1点からやってくる光は平行光として届く。これを見落としたために凸レンズの前側焦点に物体を置いたときに虚像はできないと結論づけられてしまったのでしょう。平行光の起源を考えなければなりません。太陽や月を見ているのと同じ仕組みになっているのです。

 そもそも多くの市販のルーペの倍率は物体を前側焦点の位置に置いた条件で定義されているのです。

 また凸レンズ2枚からなるケプラー式望遠鏡は対物レンズの後側焦点と接眼レンズの前側焦点が一致するようにレンズを配置しています。無限遠の物体の実像が対物レンズの後側焦点にできます。この実像は接眼レンズの物体となりますが、この物体は接眼レンズの前側焦点の上にあります。望遠鏡をのぞくと拡大された無限遠の虚像が見えます。このような光学系をアフォーカル光学系といいます。

 凸レンズの前側焦点に物体を置いたときに虚像はできないと結論づけるとその後の学習に悪影響を与えるのは明白ですし、中学校の学習でも実験事実と食い違うことになってしまいます。

改善の提案

案1)実像だけの説明にとどめる

 冒頭と同様な図を示して、凸レンズの焦点(前側)に置いた物体の1点から出た光は凸レンズを出た後に平行光となり、その後は交わることがないため、どこにスクリーンを置いても実像は結ばないと記述する。虚像についてはこの条件での問題は取り扱わない。

案2)実像はできないが、虚像は見えると説明する

 冒頭と同様な図を示して、凸レンズの焦点(前側)に置いた物体の1点から出た光は凸レンズを出た後に平行光となり、その後は交わることがないため、どこにスクリーンを置いても実像は結ばないと記述し、このとき凸レンズの後方から覗くと拡大された虚像が見えると説明する。

実験で観察するときの注意事項

 物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときの実像や虚像を観察するときに注意しなければならないことがあります。それはレンズの収差です。

 凸レンズに入る平行光は理論的には凸レンズの焦点(後側)に集まりますが、たとえば普通の球面レンズの場合、次の図のようにレンズの周辺部から出てくる光は焦点に集まらずわずかにずれてしまいます。これは直径の大きな凸レンズで顕著に起こります。


凸レンズの収差

 物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに、物体の1点から出た光はレンズを出た後に平行光になります。凸レンズの収差によって、凸レンズの周辺分から出てくる平行光が乱れると実像や虚像の観察がうまくできなくなる場合があります。この場合はドーナツ型の枠を使って、凸レンズの周辺部を隠します。中心付近から出てくる光を使うと、実像や虚像をうまく観察することができるようになります。また、凸レンズで虚像を観察するとき、特段の制限がなければ視界を広く確保するためにも凸レンズと眼をなるべく近づけて観察すると良いでしょう。この場合は周辺分の光が眼に入らなくなります。 

 この収差の影響による虚像の見え方が、虚像の観察を行わずに「虚像はできない」「虚像は見えない」と結論づけている一因にもなっている可能性はあります。

 実際、凸レンズから出てくる平行光に乱れがなければ、光軸上に眼を置いている限りは、凸レンズと眼の距離を変えても、視界の広さは変わるだけで常に同じ大きさの虚像が見えます。

 このことから市販のルーペの倍率は物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたときに見える虚像の大きさから定義されています。

まとめ

 物体を凸レンズの焦点(前側)に置いたとき実像と虚像はできるかの問いに対して、「実像はできない」は問題ありません。また実像の節で「像はできない」という記述において、像が実像であることが明確である場合、「実像はできない」という記述の方がより適切ですが問題があるとは言えません。

 虚像については「虚像はできない」「虚像は見えない」という記述は明らかな間違いです。段階的な学習への教育的な配慮からも逸脱していると考えます。

 実態的に「実像も虚像もできない」と学習しているとするならば、「実像はできない」「虚像は見える」という説明に訂正されることを願ってやみみません。

【参考記事】


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2021年3月16日火曜日

レンズの公式の符号の覚え方

 レンズの公式は下記の通りですが、レンズが凸レンズか凹レンズか、あるいは実像か虚像かによってbやfの符号が変わります。

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f} \]

 この符号の変化は凸レンズでできる実像と虚像、凹レンズでできる虚像を作図しながらレンズの公式を求めると理解が深まります。これについては「光と色と」の本館で説明してありますので、下記をご一読ください。

 結果として、それぞれレンズの公式は次のようになります。

凸レンズ 実像

\[ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f} \]

凸レンズ 虚像

\[ \frac{1}{a} - \frac{1}{b}=\frac{1}{f} \]

凹レンズ虚像

\[ \frac{1}{a} - \frac{1}{b}= - \frac{1}{f} \]

 作図によるレンズの公式の導出を理解しておくと、bやfの符号の変化は便宜的なものであることがわかります。この作図を経験しないで単にレンズの公式を暗記しても、使わなくなってしまうといつか忘れてしまいます。ですから、まずは時間がかかっても良いので、作図によるレンズの公式の導出を経験して理解することをお勧めします。

 しかしながら、試験を受けるときには、いちいち作図をしている時間がありません。そこで、レンズの公式の符号の変化を暗記しようとなるのですが、虚像と凹レンズという単語に注目して覚えると、それほどややこしくはありません。

 まず前提として

  • 凸レンズでは実像と虚像ができる
  • 凹レンズでは虚像しかできない
  • レンズの公式
を覚えておくことは必要です。

そして、符号の変化は

  • 凸レンズ実像ではa、b、fは全てプラス
  • 凸レンズ虚像ではマイナスb、aとfはプラス
  • 凹レンズ虚像ではマイナスbにマイナスf、aはプラス
凸レンズ凹レンズ
実像全て+なし
虚像-b-b  -f

ですから、結果として、

「虚像はマイナスb、凹レンズはマイナスf」

とだけ覚えておくだけです。もう少し長めでもよければ

「凸レンズ虚像のときだけマイナスb、凹レンズはマイナスbとマイナスf」

でも良いでしょう。

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2020年10月13日火曜日

凸レンズの焦点距離を実験で求める方法

【問題】
ここに焦点距離が不明の凸レンズがあります。この凸レンズの焦点距離を求める方法を答えてください。

 多くのレンズの問題は、焦点距離がわかっていて、実像や虚像のできる位置を作図したり、レンズの公式から求めるものです。しかし、この問題では物体や実像の位置からレンズの焦点距離を求める問題です。

太陽の実像から焦点距離を求める

 「点光源|図解 光学用語」で説明した通り、物体の1点から出る光は四方八方に広がりますが、遠方では平行光となります。つまり、凸レンズから無限遠にある物体の1点から出る光は凸レンズに平行光として入ります。このとき、その物体の像は焦点距離の位置の焦平面(焦点面)にできます。

無限遠の物体の凸レンズの実像のでき方
無限遠の物体の凸レンズの実像のでき方

 凸レンズで簡単に実像を作ることができる無限遠にある光源は太陽です。次の図のようにルーペで太陽の実像を作ります。光が最も集中するところが焦点です。レンズの中心から焦点までの距離が焦点距離になります。

太陽の実像から凸レンズの焦点距離を求める
太陽の実像から凸レンズの焦点距離を求める

物体と実像のできる位置から焦点距離を求める

 次の図のような装置を用いて、凸レンズでロウソクの実像をスクリーンに作る実験をします。このとき、物体の位置を動かすと、実像のできる位置(スクリーンの位置)が変わり、像の倍率が変化します。


凸レンズでできる実像をスクリーンに映す

 凸レンズでできる実像のレンズの写像公式は次のようになります。

\begin{align*} \frac{1}{a}+\frac{1}{b}=\frac{1}{f}\;\;\; m=\frac{b}{a} \end{align*}

(a:凸レンズと物体の距離 b:凸レンズと実像の距離 f:凸レンズの焦点距離 m:倍率)

 a=bのとき、

\begin{align*} \frac{2}{a}=\frac{2}{b}=\frac{1}{f}  \end{align*}

 ですから、

\begin{align*} a=2f\;\;\; b=2f \end{align*}

となります。このとき、凸レンズの中心から物体と実像の位置はそれぞれ焦点距離の2倍になり、a=bですから倍率mは1となります。

 つまり、物体と実像の大きさが同じになるように物体とスクリーンを配置し、そのときのレンズと物体の距離もしくはレンズとスクリーンの距離の1/2が凸レンズの焦点距離になります。

\begin{align*} a=2f\;\;\; b=2f \;\;\; \mbox{のとき} \;\;\; m=1\end{align*}

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2020年9月28日月曜日

炎の色はどんな色|炎の仕組み

炎とは何か

 最初に炎とはどのようなものなのを考えてみましょう。炎は気体が燃焼するときに生じる光と熱を発している部分のことです。

ろうそくの炎
ろうそくの炎

 液体の灯油や固体の紙などが燃えるときにも炎が出ますが、これらの炎は灯油が熱で気化したり、紙が熱で分解したりして生成した可燃性気体が燃焼しているものです。炎の色は何が燃えているのか、酸素がどのぐらい取り込まれているかによって変わります。


ろうそくの炎

 ろうそくに使われているロウは主に炭素原子と水素原子からなる炭化水素化合物です。普通のろうそくはパラフィンという炭化水素化合物が使われています。

パラフィンとは

 パラフィンは化学式CnH2n+2で表すことができるアルカンと呼ばれる炭化水素化合物のうち炭素数が大きいもののことです。アルカンはパラフィン系炭化水素とも呼ばれ、炭素数の少ないものにはメタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)などの可燃性気体があります。

プロパンの構造式と分子式
プロパンの構造式と分子式

 ろうそくの芯に火をつけると、芯に染みこんでいたロウが熱で気化・分解して燃焼します。これが炎になります。芯の近くのロウが熱で溶けて液体となり、液体のロウが芯に染みこむので、ろうそくは燃え続けることができます。ろうそくの炎は次の図のように3つの部分からなります。

ろうそくの炎
ろうそくの炎

 炎の一番内側の部分は炎心と呼ばれます。炎心は気化したロウが存在するだけで燃焼は起きていません。

 炎心の外側は内炎と呼ばれ、この部分では燃焼が起きています。しかし、内炎の燃焼は酸素が不十分なため不完全燃焼となっており、炭素の微粒子が生じています。この微粒子は燃焼で高温となり熱放射によってオレンジ色の光を出します。これがよく見る炎の色です。

 内炎の外側は外炎と呼ばれ、この部分は酸素が十分にあるため完全燃焼となっており、ろうそくの炎の中で最も温度が高いところです。外炎は明るいところではよく見えませんが、暗い場所では見えます。この部分には、炭化水素の燃焼で生じた高エネルギーで不安定な励起状態にあるラジカルと呼ばれる形になった原子や分子あるいはイオンが存在します。ラジカルはすぐに安定した低エネルギーの基底状態に戻りますが、このとき差分のエネルギーに相当する波長の光を出します。このような発光現象をルミネセンスといいます。

 なお、熱放射で出てくる光の色は発光している物質の温度が高くなるにつれて明るい色となりますが、ルミネセンスで出てくる光の色は温度とは関係ありません。

アルコールランプの炎

 メタノールを燃やすと炎にはほとんど色がついていません。メタノールには炭素が1つしか含まれていないため完全燃焼しやすくメタノールのほとんどが二酸化炭素と水になるからです。

ガスコンロの炎

 ガスコンロに使われるガスは都市ガスではメタン、プロパンガスではプロパンが主成分です。メタンやプロパンガスは常温で気体の炭化水素化合物です。ろうそくでは、燃焼に必要な酸素は炎のまわりの空気から取り込まれます。それに対してガスコンロはガスを燃焼する前にガスと空気(酸素)を混合します。

 ガスコンロの炎にも、ろうそくの炎と同じように芯があります。この部分にはガスと酸素が一緒に存在していますが燃焼は起きていません。ガスはこの芯のすぐ外側で燃焼しますが、この部分では炭化水素から生じた不安定なラジカルが存在し、青い光を出して燃えています。ガスコンロの炎が青いのは、空気を十分に混ぜてあり、酸素が豊富だからです。同じガスでも普通の使い切りガスライターの炎では、酸素が豊富にある炎の下部は青色、酸素が不足している上部はオレンジ色になります。空気をガスと一緒に積極的に送り込むターボライターの炎は透き通った青色になります。

ガスライターとガスコロンの炎
ガスライターとガスコロンの炎

このように炎の色は酸素の量によって変わります。 酸素を十分に与えると青色の炎となり、酸素が不十分だとオレンジ色の炎になるのです。

酸素量 炎の色 燃焼しているもの
不十分 オレンジ色 炭化水素が分解して生じた炭素の微粒子
熱放射による
十分 青色 炭化水素が分解して生じた不安定なラジカル
ルミネセンスによる

酸素の量と炎の色の関係

さまざまな色の炎

 ガスコンロにみそ汁などを吹きこぼしたときに炎の色が一瞬黄色になるのを見たことがあるでしょうか。また、銅製の鍋などを使ったときに炎が一瞬青緑色になる場合があります。

 これらの場合、みそ汁に含まれている食塩中のナトリウムや鍋に使われている銅の金属元素が炎の色の元となっています。高温で励起状態となった元素が、基底状態に戻るときに、その元素特有の色の光を出します。これを炎色反応といいます。

 ガスコンロの炎の中で針金などの先につけた銅線や食塩を炎の中に入れてみると簡単に炎の色を変えることができます。身近なところで炎色反応を利用したものは花火です。

 花火は赤色や緑色など様々な色を出しますが、花火の火薬には炎色反応で色を出す物質が着色剤として含まれています。

着色剤 炎の色 元 素
食塩 オレンジ色 ナトリウム
硫酸銅 青緑色
ホウ酸 緑色 ホウ素
塩化カルシウム 橙色 カルシウム
塩化リチウム 深赤色 リチウム

主な着色剤と炎の色

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2020年9月8日火曜日

「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 少し前の本ですが、現在も入手可能です。光学とレンズの初心者向けの図解入門書です。フルカラーですので、光路図などがとてもわかりやすくなっています。光学とレンズのキホンのキから解説しているので、これからレンズのことを勉強したい人だけでなく、レンズの基本を教える人にとっても役に立つと思います。

レンズを知ると光学はこんなにおもしろい!

昨今のデジタル一眼レフカメラのブームもあって、レンズのことをもっと知りたい人が増えています。本書は、高校生から一般の人を対象に、レンズのことを知る超入門書として、図解や写真をふんだんに使いながら、わかりやすく光の世界を解説します。

レンズを知ることは、光の性質を知ることにつながります。また、メガネや望遠鏡などの光学機器ばかりか、ヒトの眼の構造の理解も進みます。身近な例を題材に、徹底してやさしく、おもしろい話題を集めました。

単行本: 224ページ
出版社: ソフトバンククリエイティブ (2010/6/18)
ISBN-10: 4797357150
ISBN-13: 978-4797357158
発売日: 2010/6/18

目次

はじめに
登場キャラクターのご紹介

第 1 章 レンズのお話

001 レンズは光の屈折をたくみに利用するために生みだした道具
002 レンズの歴史
003 小さなものを拡大して見る顕微鏡の歴史
004 遠くのものを近くに見る望遠鏡の歴史
005 レンズでできた像を記録するカメラの歴史

COLUMN レンズの語源

第 2 章 光のふるまい

006 光の直進性と逆進性
007 光の反射の法則
008 鏡による光の反射
009 光の乱反射
010 透明な物体を通る光
011 光は物質の境界面で折れ曲がる 光の屈折
012 光はどのような道筋を選んで進むのか フェルマーの原理
013 スネルの法則①
014 スネルの法則②
015 空気のゆらぎが光を曲げる 陽炎と逃げ水のしくみ
016 空気のゆらぎが光を曲げる 蜃気楼と大気差のしくみ
017 プリズムでできる光の色の帯 光の分散
018 大空にかかる光の色の帯 虹ができるしくみ
019 虹の形はどうして円弧なのか
020 光は波か粒子か① 光の回折
021 光は波か粒子か② 光の干渉
022 光の回折と干渉でできる虹のしくみ
023 光は縦波か横波か
024 偏光メガネとブリュースターの法則
025 光は電磁波の仲間
026 光の速さはどれぐらいか
027 光のふるまいを考える幾何光学と波動光学

COLUMN 近接場光ー光の回折限界を超える光 66

第 3 章 レンズのしくみと働き

028 点光源からでた光はどのように進むか
029 影のでき方
030 ピンホールでできる像
031 ピンホールカメラでできる像
032 レンズの基本的なしくみ
033 凸レンズと凹レンズの基本的な働き
034 レンズの焦点と焦点距離
035 レンズの主点と主平面
036 薄肉球面レンズの焦点距離の求め方
037 レンズを通る光の進み方
038 凸レンズでできる実像
039 無限遠からやってくる光は凸レンズでどこに像を結ぶか
040 凸レンズでできる虚像
041 凸レンズを半分隠すと実像と虚像はどうなるか
042 物体が焦点の位置にあるとき実像と虚像はどうなるか
043 凹レンズでできる虚像
044 レンズの写像公式と倍率① 凸レンズの実像の場合
045 レンズの写像公式と倍率② 凸レンズの虚像の場合
046 レンズの写像公式と倍率③ 凹レンズの虚像の場合
047 レンズの写像公式のまとめ
048 レンズの倍率を求めるもう1つの方法
049 レンズの作図の裏技① 光軸上の1点からでて凸レンズに入射する光
050 レンズの作図の裏技② 凸レンズに任意の傾きで入射する光
051 レンズの作図の裏技③ 凹レンズを通る光の場合
052 2枚のレンズを通る光
053 凹面鏡と凸面鏡のしくみ
054 凹面鏡と凸面鏡で反射する光
055 レンズの分類の仕方
056 表面屈折を利用したレンズ① 球面レンズ
057 表面屈折を利用したレンズ② 非球面レンズ
058 表面屈折を利用したレンズ③ シリンドリカルレンズ
059 表面屈折を利用したレンズ④ トロイダルレンズ
060 表面屈折を利用したレンズ⑤ フレネルレンズ
061 表面屈折を利用しないレンズ① グリンレンズ(屈折率分布レンズ)
062 表面屈折を利用しないレンズ② 回折レンズ

COLUMN メタマテリアルー負の屈折率をもつ物質

第 4 章 レンズの性能

063 レンズをつくる光学ガラスに求められる性質
064 光学ガラスの屈折率
065 光学ガラスのアッベ数
066 光学ガラスの分類
067 ガラス以外の光学材料① 天然や人工の結晶
068 ガラス以外の光学材料② 光学プラスチック
069 レンズができるまで① 球面レンズのつくり方
070 レンズができるまで② 非球面レンズのつくり方
071 収差とはなにか
072 球面収差
073 球面収差の補正
074 コマ収差と非点収差
075 像面湾曲と歪曲収差
076 軸上色収差と倍率色収差
077 像の大きさと明るさ
078 Fナンバーと実効Fナンバー
079 開口数NAとレンズの分解能
080 絞りと瞳
081 絞りの位置とテレセントリック
082 焦点深度と被写界深度

COLUMN ガラスはなぜ透明なのか

第 5 章 レンズを使った身近なもののしくみ

083 ヒトの眼の構造
084 正常な眼のしくみと働き
085 近視と遠視
086 老視と乱視
087 コンタクトレンズのしくみ
088 ルーペのしくみ
089 ルーペの倍率
090 光学顕微鏡のしくみ① 基本的なしくみ
091 光学顕微鏡のしくみ② 倍率と分解能
092 望遠鏡のしくみ① 基本的なしくみ
093 望遠鏡のしくみ② ケプラー式望遠鏡の光の進み方
094 望遠鏡のしくみ③ オランダ式(ガリレオ)望遠鏡の光の進み方
095 望遠鏡のしくみ④ 望遠鏡の倍率
096 望遠鏡のしくみ⑤ ピント合わせが必要なのはなぜ?
097 カメラのしくみ① Fナンバーとシャッタースピード
098 カメラのしくみ② 画角と焦点距離
099 カメラのしくみ③ デジタルカメラの画角と焦点距離
100 進化するレンズ 流体レンズのしくみ

COLUMN 像反転系 倒立像を正立像として見る

参考文献
索引

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2020年8月27日木曜日

光源から出た光は四方八方に広がる|光の進み方

 物体の1点からでた光は、四方八方に広がって進みます。これは太陽や電灯などの光源の表面の1点からでた光も、光を反射している物体の表面の1点からでた光も同じです。


光源から出た光は四方八方に広がる

 光源から光を受けるところまでの距離に対し、その大きさが十分に小さくて無視できる光源を点光源といいます。次の図は、点光源からでる光が1 m先にある幅50 cmの受光面にあたったときの様子を示したものです。点光源からでて光軸に沿って進む光は、受光面に垂直にあたりますが、それ以外は傾きをもつ光線として受光面にあたります。この場合、受光面の端に当たる光線と受光面が作る角度は約76度になります。


光源が近いところにある場合(光源が有限距離にある場合)

 上図と同じ配置で、点光源から受光面の距離を1億5000万km、受光面の幅を1万3000kmとすると、θは89.998度になります。この場合、点光源からでて受光面にあたる光は、どの場所でも受光面に対してほぼ垂直に当たると見なすことができます。

 実は前述の数値は、それぞれ太陽から地球までの距離と、地球の直径と同じです。よく「太陽光は平行光」という説明がありますが、これは次の図のように、太陽の表面の1点からでる光が平行光として地球に届くという意味です。


太陽から地球に届く光

 次の図は、点光源からでる光の広がりを簡単に示したものです。この波の広がりが遠方まで届くとき、同心円状に広がる球面波が平面波になります。光の波の広がりから、波の進行方向に切りだした直線が光線ですから、無限遠にある点光源からでた光は平行光線としてやってくることになります。


光源が遠いところにある場合(光源が無限距離にある場合)

 レンズを通る光や鏡に当たる光などを考えるとき、光が有限遠(有限距離)からやってきているのか、無限遠(無限距離)からやってきているのかを考える必要があります。

 なお、実際に光が平行光になるかどうかは、物体と受光面との距離と受光面の幅によります。物体と受光面の距離に比べて、受光面の幅が十分に小さければ平行光とみなすことができます。たとえば、最初の図で受光面が0.5 cmのとき、θは89.9度になります。また、受講面が50 cmで光源との距離が100 mのときも、θは89.9度になります。

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2020年8月3日月曜日

物体が焦点の位置にあるとき実像と虚像はどうなるか

 凸レンズの前側焦点F'の外側に物体を置くと実像ができ、内側に物体を置くと虚像ができます。


凸レンズでできる実像(左)と虚像(右)

それでは、物体を前側焦点F'の位置に置くと、実像と虚像はどのようになるでしょうか?

物体が焦点の位置にあるとき実像はできるか

 物体を凸レンズの前側焦点F'の位置に置くと、物体からでた光はレンズから射出した後、平行光になります。これは物体の1点からでた光が、レンズを出た後に1点に集まらないということです。ですから、どの位置にスクリーンを置いても実像はできません。


物体を前側焦点F'の位置に置いたとき(実像を考える)

物体が焦点の位置にあるとき虚像はできるか

 上図の凸レンズを物体の反対側(後側焦点の方向)から覗くと、何が見えるでしょうか?

 レンズを出た後の光が平行光なのですから、倒立した実像を見ることができないことは明白です。

 虚像についてはどうでしょう。レンズを出た後の光は平行光ですから、反対側(前側焦点側)に延長しても1点で交わりません。そのため、この作図を見ると、虚像できないと結論づけてしまいたいところです。


物体を前側焦点F'の位置に置いたとき(虚像を考える)

 ところが、凸レンズの前側焦点F'の位置に物体を置いて凸レンズをのぞいてみると、物体が拡大された虚像が見えます。

 虚像というのは実際にできる像ではなく、目で見える像ですから、眼の働きを考えなくてはなりません。虚像がどうなるかは、次の図のように凸レンズから出た平行光が眼のレンズを通って、網膜にどのような実像を結ぶかを考えるとよいのです。

前側焦点F'に物体を置いたときに見える虚像

 眼のレンズにとって、この平行光は無限遠にある物体の1点からやってきた光と同じことになります。ですから、平行光を反対側に延長したところにできる無限遠の虚像が見えることになります。

物体が焦点の位置にあるときの虚像の倍率は

 一般に、市販のルーペの倍率は、物体を前側焦点の距離の位置に置いたときの倍率で定義されます。

 次の図は物体を明視の距離に配置したときの見え方を示したものです。


明視の距離に物体を置いたときの物体の見え方

成人の正常な眼でものがよく見える範囲は、個人差はありますが、眼から25 cm以上離れたところです。この25 cmを明視の距離といいます。

 物体の高さをyとし、物体が見える角度をθとすると、

\[y=250 tan\theta\]

 この物体をレンズを通して見ると、何倍に見えるかが、ルーペの倍率になりますが、倍率を一義的に定義するため、次の図のように、物体を凸レンズの前側焦点の位置に置くという約束があります。


ルーペの倍率

 このときルーペを目のすぐ前に置くと、凸レンズの中心と水晶体の中心が一致していると考えることができます。虚像が見える角度θ'は凸レンズの焦点距離をfとすると、次の式から求めることができます。

\[y=ftan\theta\]

 倍率mはθ'とθの比で求めることができます。これを角倍率といいます。θが小さいとき、tanθ=θとなることを考慮すると、

\[m=\frac{\theta'}{\theta}=\frac{tan\theta'}{tan\theta}=\frac{\frac{y}{f}}{\frac{y}{250}}=\frac{250}{f}\]

となります。

【関連記事】

When an object is placed at the front focal point of convex lens,  real  and virtual  images are formed?

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