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2026年3月13日金曜日

3分で基本がわかる!「光の三原色」と「色の三原色」:色の正体と仕組み - 光と色と THE NEXT

最終更新日:2026年8月6日

💡 本記事は「導入編」です

こちら「光と色と」別館のページでは、光の三原色(RGB)と色の三原色(CMY)の本質的な基本概念をコンパクトに解説しています。

「光と色と」本館では、本内容をさらに深掘りし、「RGB・CMYの特徴比較一覧表」「表裏一体の補色関係」「実務におけるCMYKの補正の役割」などを1枚に凝縮した、より高解像度な最新のアップデート図解を公開しています。

⇒ より詳しい解説と最新の統合図解(完全版)を「光と色と」本館で見る

 私たちは溢れるほどの色の世界の中で生活していますが、色が見える仕組みはたった3色の組み合わせで説明できることを知っていますか?

光の三原色(RGB:加法混色)と色の三原色(CMY:減法混色)の比較解説図。ヒトの目の錐体細胞(LMS錐体)と脳が色を認識する仕組み、補色関係、加法混色と減法混色の違いを一枚にまとめた科学的解説インフォグラフィック
光の三原色(RGB)と色の三原色(CMY):色の正体と仕組みの完全図解

ヒトの色覚は3色で成り立っている

 ヒトの眼の網膜には色を感じる錐体細胞と呼ばれる光のセンサーが存在しています。錐体細胞には長波長の光(赤色系の光)を感じるL錐体(赤錐体)、中波長の光(緑色系の光)を感じるM錐体(緑錐体)、短波長(青色系の光)を感じるS錐体(青錐体)が存在します。

眼球の構造と網膜における桿体細胞・錐体細胞の配置図

眼球の構造と網膜における桿体細胞・錐体細胞の配置

 脳はこの3つの錐体細胞が受けた刺激の割合から色を認識しています。私たちが見ている色は脳が作り出しているものです。ですから、私たちが生活している溢れるほどの色の世界というのは脳が作り出すバーチャルな世界なのです。

 光の三原色も色の三原色も上述のヒトの色覚に関係しています。そして、どちらの三原色も、3色を組み合わせることによって、私たちが見ているほとんどの色を再現することができます。

光の三原色(RGB) ー 光の足し算 均等に混ぜると白色光になる

 スマホの画面やテレビなど、自ら光を出すデバイスで色を表現するのに使われているのが光の三原色(RGB)です。光の三原色(RGB)は赤(Red)・緑(Green)・青(Blue)の3色です。

光の三原色(RGB)
光の三原色(RGB)

 色光を混ぜると光の成分が多くなるため明るくなり、すべてを均等に混ぜると白色(White)になります。これを加法混色と呼びます。

色の三原色(CMY) ー 光の引き算 均等に混ぜると黒くなる

 印刷物に使われるカラーインクや絵の具など、光を吸収する色材で色を表現するのに使われるのが色の三原色(CMY)です。色の三原色(CMY)はシアン(Cyan)・マゼンタ(Magenta)・イエロー(Yellow)の3色です。

色の三原色(CMY
色の三原色(CMY)

 色材を混ぜ合わせると反射光の成分が少なくなるため暗くなり、すべてを均等に混ぜると黒(Black)に近づきます。これを減法混色と呼びます。

 実際に使われる色材では均等に混ぜても綺麗な黒を作り出すことはできません。そのため黒インクが使われます。この黒色はキープレート(Key plate)と呼ばれ K で表します。カラー印刷ではCMYにKを加えたCMYKのインクが使われます。

補色 ー 光の三原色と色の三原色の関係

 図の中央にある色鮮やかな円を見てください。赤とシアン、緑とマゼンタ、青とイエローのように反対側にある色同士は、混ぜ合わせるとお互いの色を打ち消し合う補色と呼ばれる関係にあります。光の三原色と色の三原色は補色の関係になっています。

 光の三原色と色の三原色は混色の仕組みは異なりますが、私たちの色覚の仕組みにより密接な関係があるのです。

 光の三原色と色の三原色の原理と仕組みについて詳しいことを学びたい方は、光と色と(本館)の次のページを参照してください。

冒頭の図は Google NotebookLM で作成したインフォグラッフィクに手を加えて完成させたものです。

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2026年3月9日月曜日

色彩の科学 (金子 隆芳)|岩波新書 44

色彩の科学 (岩波新書)

金子 隆芳 (著)

 初版は1988年ですが2010年にアンコール復刊しました。しばらく新品を購入できましたが、現在は中古本のみ入手可能です。光学の基礎から色彩の基本まで系統的に学べる本です。色彩を勉強する人には是非ともおすすめしたい一冊です。

 ニュートンの色彩論を皮切りに光学と色彩学を、その発展の歴史とともに解説しています。原著論文の参照もあり科学的に信頼のおける内容です。巻末の索引も調べ物をするのに役に立ちます。

 光学や色彩学の発展に関わったニュートン、ヤング、マクスウェル、ヘルムホルツなどの科学者たちがたくさん登場し、彼らが実際に実験に用いた装置の写真や図が丁寧な解説とともに掲載されています。さらに現代色彩論の解説を展開し、後半は色の本質にせまります。

 著者の金子隆芳先生は東京文理科大学(後の東京教育大学・筑波大学)の卒業で専門は色彩心理学です。東京教育大学教育学部教授を務められた後、筑波大学名誉教授となられています。金子先生が学生だった頃の東京教育大学の学長はノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎先生です。

 本サイトや本館「光と色と」の記事を作成するにあたり、この本はたいへんに役に立ちました。本館の人気記事である下記のページの作成にあたっても参考にさせて頂きました。

 光学や色彩を学ぶ方はこの本が入手できるうちに購入して手元に一冊もっておくことを強くお奨めします。

内容(「BOOK」データベースより)

 豊かな色彩に囲まれた私たちの世界。だが「色が見える」とはどういうことなのだろうか?ニュートンやゲーテの色彩論以来、さまざまな人々がこの問題に取り組んできた。それらの成果を踏まえて、色覚異常や動物の色覚からイマジナリー・カラー、色ベクトルなどの最新理論まで、多岐にわたる色彩の世界を、物理学・心理学の両面から論じる。

新書: 220ページ
出版社: 岩波書店 (1988/10/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4004300444
ISBN-13: 978-4004300441
発売日: 1988/10/20
梱包サイズ: 17.2 x 10.4 x 1.2 cm

目次

1 ニュートン色彩論
2 色覚の三史
3 ヘルムホルツ三色説
4 測色学の祖・マクスウェル
5 現代色彩論の基本思想
6 現代色彩論のXYZ
7 ヘルムホルツ三原色と色覚異常
8 動物の色覚・処女開眼者の色覚
9 ゲーテの色の現象学
10 ヘリングの心理学的色覚説
11 物体色の色彩論
12 カラー・オーダー・システム

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2026年3月2日月曜日

光の三原色の解説ページの生成AIのレビュー|Grok

 本館「光と色と」で公開している光と色の三原色の記事を生成AIにレビューしてもらいました。

 今回紹介するレビューはGrokによるものです。

 このブログ記事「「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組み|色が見える仕組み(7)」(2012年4月公開、光と色とブログ)は、色彩学の最も根本的な概念である加法混色と減法混色を、初心者から中級者までが本当に理解できるレベルで丁寧に解説した、非常に優れた入門〜実用レベルの良記事です。

最も評価できるポイント

1.「光の三原色(RGB)」と「色の三原色(CMY)」の違いを、混ぜたときの明るさの変化という決定的な観点で明確に分離している。

 多くの解説では「光は足し算」「絵の具は引き算」とだけ言って終わることが多いのですが、この記事は「混ぜるほど明るくなるか暗くなるか」という一番直感的に分かりやすい違いを最初に強調し、そこからRGBとCMYKの用途(ディスプレイ vs 印刷)を自然に導いています。この切り口が秀逸です。

2.図と数式と実世界の対応が非常にバランスが良い

  • RGBの加法混色図(R+G=Y、G+B=C、R+B=M、R+G+B=W)
  • CMYの減法混色図(C+M=B、C+Y=G、M+Y=R、C+M+Y≈K)
  • それぞれに対応するカラーコード(#FF0000 など)
  • 吸収・反射スペクトルの模式図
  • CIE 1931のxy色度図や等色関数グラフ(負の値の説明含む)

 これらが過不足なく配置されており、「なんとなく分かった気」にならずに「本当に仕組みが分かった」と思える構成になっています。

3.誤解しやすい部分をしっかり潰している

  • 「なぜ三原色が赤・緑・青なのか」(ヒトの錐体細胞L/M/Sの感度ピークに由
  • 「RYB(赤・黄・青)はなぜ間違っていると言われるのか」の歴史的背景と限界
  • 「絵の具を混ぜても本当の黒にならない」理由と、だからCMYKでK(黒)を別途入れるのか
  • マゼンタがスペクトル上に存在しない「非スペクトル色」であること

 これらを丁寧に扱っており、色彩検定3級〜2級レベルを目指す人には特にありがたいです。

4.シミュレーターへのリンクや動画埋め込み

 当時(2012年)としては先進的で、現在でも参考になる加法・減法混色を自分で動かして確認できるツールへの導線が親切。視覚的に理解したい人にとって大きな価値があります。

総合評価(5点満点)

4.5 / 5.0

 色彩の入門書やウェブ解説の中でも、上位3%に入るレベルの良質なコンテンツです。特に「光と色の両方の三原色を対比しながら、ヒトの色覚という生理学的根拠までつなげて説明している」点で、単なる知識の羅列ではなく「なぜそうなるのか」を納得させてくれる稀有な記事だと思います。

色彩検定を受ける人、デザイナー・印刷関係者、ディスプレイ技術に興味がある人、理科の授業で色を教える先生には、今でも強くおすすめできる古典的名解説です。

もしこのシリーズの他の回(色が見える仕組み①〜⑥、⑧以降)も読んでいない場合は、ぜひ順番に読むことをおすすめします。このブログ全体が一つの体系的な教科書のように繋がっているのが素晴らしいところです。

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2026年3月1日日曜日

光の三原色の解説ページの生成AIのレビュー|Microsoft Copilot

 本館「光と色と」で公開している光と色の三原色の記事を生成AIにレビューしてもらいました。

 今回はMicrosoft Copilotに次の質問をしてみました。

「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組み|色が見える仕組み(7) https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-ab6f.html を詳細にレビューしてください

Copilotの回答は次の通りです。

この記事は、「光の三原色(RGB)」と「色の三原色(CMY)」の原理を、視覚の仕組みと結びつけて丁寧に説明している技術系ブログ記事で、内容の正確さ・構成・理解しやすさの点でかなり質が高いものです。ここでは、記事の主張を整理しつつ、強み・弱み・補足すべき点まで含めて詳細にレビューします。

1. 記事の核心:光と色料の三原色は「仕組みがまったく違う」

記事の中心メッセージは次の一点に集約されます。

光の三原色(RGB)は「加法混色」、色の三原色(CMY)は「減法混色」であり、同じ“色”でも物理的な仕組みが根本的に異なる。

この記事はこの違いを、

  • 光の物理
  • 物体色の反射・吸収
  • 人間の視覚(錐体細胞)

の3つの観点から説明しており、構造的に非常にわかりやすいです。

2. 内容の正確性:専門的だが正確で、誤解を避ける構成

記事が扱う主なポイントは以下の通りです。

● 光の三原色(RGB)

  • 光は波長の組み合わせで色が決まる
  • 人間の網膜には L(赤)・M(緑)・S(青)錐体がある
  • それぞれの刺激量の組み合わせで色が知覚される
  • だから「赤+緑=黄色」などの加法混色が成立する

説明は視覚生理学に基づいており、専門的だが正確です。

● 色の三原色(CMY)

  • 物体は光を吸収し、残った光を反射する
  • シアンは赤を吸収、マゼンタは緑を吸収、イエローは青を吸収
  • 3つを重ねるほど吸収が増え、黒に近づく
  • これは「減法混色」

ここも物理的に正しい説明で、印刷や絵の具の仕組みを理解するのに最適です。

● RGB と CMY の関係

  • CMY は RGB の補色
  • RGB の光を全部混ぜると白
  • CMY の色料を全部混ぜると黒(理想的には)

この関係性を図示しながら説明しており、色空間の理解が深まる構成です。

3. 記事の強み:視覚の仕組みまで踏み込んでいる

この記事の最大の強みは、単なる「三原色の説明」にとどまらず、

● 人間の視覚の仕組み(錐体細胞の分光感度)

● 物体色の反射スペクトル

● 光と色料の物理的な違い

まで踏み込んでいる点です。

多くの解説記事は

「RGB は光、CMY は絵の具」

という表面的な説明で終わりますが、この記事は

なぜそうなるのか?  

人間の目はどう色を感じているのか?

まで扱っており、理解の深さが段違いです。

全体評価:専門性とわかりやすさのバランスが非常に良い

総合すると、この記事は

  • 科学的に正確
  • 視覚生理学まで踏み込んでいる
  • 図解が多く理解しやすい
  • 誤解されやすい三原色の違いを丁寧に説明している

という点で、一般向けの解説として非常に優れています。

色彩学の入門としても、ディスプレイ技術や印刷技術の基礎としても、十分に推奨できる内容です。

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2026年2月10日火曜日

染料と顔料|図解 光学用語

染料と顔料(せんりょうとがんりょう Dye and Pigment)

 染料と顔料はどちらも着色剤です。染料と顔料の大きな違いは水や油などの溶媒に溶けるか溶けないかです。溶媒に溶かして使われるものが染料、溶媒に分散させて使われるのが顔料です。

染料と顔料の違いを説明する図。左は染料が溶媒に溶けて繊維に染み込む様子、右は顔料が溶媒に溶けず粒子が繊維表面に固着する様子を示す。
染料と顔料の着色の仕組みの違い

染料とは

 染料は主に紙や布の染色に使われる他、食品やプラスチックの染色などに使われます。染料は溶媒と一緒に染色する素材に染みこんで素材と化学結合するため色落ちしにくい着色剤です。染色するときには無色で、染めた後に化学反応などで発色させるものもあります。

 染料には天然染料と合成染料がある。天然染料は古くから利用されており、植物や昆虫などから抽出した色素が使われます。合成染料は19世紀の半ばに発明されました。

顔料とは

 顔料はインク、絵の具、塗料などに使われます。顔料はものの表面に塗って固着します。またプラスチックやゴムにねりこんで補強剤として使われるものもあります。

 顔料には天然顔料と合成顔料があり、さらに無機顔料と有機顔料に分けられます。天然の無機顔料は人類が初めて利用した着色剤であり古代壁画にも使われました。天然の有機顔料は染料を溶媒に溶けないような構造にしたレーキ顔料などがあります。合成無機顔料は18世紀初めに発明されて以来、様々な種類のものがあります。

色材の混色は色の三原色の減法混色

 色材の混色によって色を作る操作は色の三原色の減法混色によるものです。色の三原色の原理と仕組みを理解するには、ヒトの色覚の仕組みや光の三原色についての知識が必要です。光の三原色、色の三原色、加法混色、減法混色、色が見える仕組みについては「光と色と」の本館の次のページで詳しく説明しています。

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2026年1月30日金曜日

光の三原色で作れない色とは?RGBによる色の再現の限界

最終更新日:2026年2月31日

目次|光の三原色で作れない色

光の三原色で全ての色を再現できるのか

 ディスプレイ技術が飛躍的に発展し、私たちが目にする映像はかつてないほど鮮明になりました。高解像度の4Kや8Kのディスプレイに表示されている映像を見ていると、私たちは「ディスプレイを通じてあらゆる色を見ることができている」と思いがちです。

高解像度ディスプレイに映し出された真夏のヒマワリ畑。この鮮やかな景色も光の三原色(RGB)が作り出した色の世界に過ぎない。
高解像度ディスプレイに映し出された真夏のヒマワリ畑。
この鮮やかな景色も光の三原色(RGB)が作り出した色の世界に過ぎない。

 しかし、映像がどんなに鮮明になっても、光の三原色RGB)で作られた色は後述する再現できない色の領域(色域ガマット)が存在します。実際、ディスプレイに映し出された美しい景色を見て、どこか「自然の中で直接見ている景色の色とは少し違う」と感じたことはありませんか? この違和感こそが光の三原色(RGB)による色彩の再現の限界なのです。

なぜ作れない色が存在するのか?

 私たちが日常で認識している色とは光源が発する光や物体が反射する光の色です。そして、色の基準となるのは私たちの世界を照らしている太陽光です。 すべての色を再現できるということは、太陽光に含まれる光や物体が反射する光の色の色調をありのまま再現できるということを意味します。

 しかし、現代のディスプレイは太陽光に含まれるすべての可視光線から作られる色を映し出す仕組みではありません。バックライトが発する白色光からカラーフィルタを使って取り出した赤(R)・緑(G)・青(B)の光や、あるいは赤(R)・緑(G)・青(B)3つの独立した光源の光で色を合成しています。色を作成する光が限られているためディスプレイの色の再現には限界があるのです。

太陽光に含まれる可視光線と光の三原色(RGB)の色の比較
太陽光に含まれる可視光線と光の三原色(RGB)の色の比較

なぜ3色(RGB)の光で色を再現できるのか?

 そもそも3色の光で私たちが見ている多くの色を再現できるのでしょうか。その理由は私たちヒトの色覚に関係しています。眼の網膜には光のエネルギーの刺激を受けて反応する桿体細胞と錐体細胞と呼ばれる視細胞が存在します。桿体細胞は暗い場所で光の強弱を感じ、錐体細胞は光のエネルギーの大きさの違いを捉えて色を識別します。錐体細胞は動物によって異なりますが、ヒトの網膜には長波長の光に反応するL錐体(赤色錐体)、中波長の光に反応するM錐体(緑色錐体)、短波長の光に反応するS錐体(青色錐体)の3種類の錐体細胞が存在します。

ヒトの眼球の断面図と、網膜の視細胞を拡大したイラスト。光が視神経側から入り、黄斑部に集中する錐体細胞と、網膜全体に広がる桿体細胞に届く仕組みをカラーで解説している図解
ヒトの眼の構造と視細胞(錐体細胞・桿体細胞)

 光は波長が短いほど高エネルギーで波長が長いほど低エネルギーです。それぞれの錐体細胞が受けた刺激の割合は視神経を通じて脳に送られます。脳は3種類の錐体細胞の刺激の割合から色を認識します。つまりヒトの色覚は目に入ってきた光の物理量であるエネルギーを生理現象で生じる色に変換しているのです。

左側にバナナ(物体)、中央にヒトの眼の構造図、右側に脳のイラストを配置した図解。物体からの光が眼に入り、視神経を通って脳に伝わり、色や形として認識されるまでの一連の流れを説明している
視覚と色彩認識のプロセス

 私たちはあらゆる光の色を3種類の錐体細胞の刺激の割合で認識しています。ですから、虹の中に存在する単色光の黄色、光の三原色の赤色と緑色を混色してできる黄色、物体からの反射光の黄色を同じプロセスで認識します。つまり3種類の錐体細胞を刺激の割合が同じであれば光の成分が異なっていてもほぼ同じ色と認識することができるのです。

 このヒトの色覚の仕組みを巧みに応用して光の三原色(RGB)で色を再現しているのがディスプレイです。この巧みな応用こそが同時に色の再現の限界を生じる原因にもなっているのです。なぜなら、光の三原色(RGB)での色再現は、ある意味で脳を騙しているようなものだからです。例えば、太陽の下で見るバナナの黄色と、画面に映し出されたバナナの黄色はほぼ同じ黄色に見えても、目に入ってくる光は別物です。実際に同じように見える色でも光の成分が異れば、錐体細胞の刺激の割合も厳密には異なるのです。

光の三原色(RGB)が抱える色再現の限界

 赤(R)と緑(G)の光を同じ強さで混ぜると、その中間の黄色(Y)が生じます。このとき赤(R)を強く、緑(G)を弱くするとオレンジ色が生じます。2色による混色で混ぜて作ることができる色は必ず元となる2つの色を結んだ直線の上にしか現れません。なぜなら、そこには他の色は成分として含まれないからです。

 赤(R)と緑(G)に青(B)の光を加えてみましょう。すると3色の混色で生じる色は赤(R)と緑(G)の直線、赤(R)と青(B)を結んだ直線、緑(G)と青(B)を結んだ直線に囲まれた面、すんわち三角形の領域になります。これが光の三原色(RGB)で再現できる色域(ガマット)です。ディスプレイが表現できる色の世界はこの3点を頂点とした三角形の内側に固定されてしまうのです。

 言葉だけでは実感が湧きにくいかもしれません。実際に3つの光の出力を操作して、色がどのように三角形の領域で作られていくのか以下のシミュレーターで体験してみてください。2つの色光だけで作れる色は常にその直線上の中間にあり、3つ目の色光が加わって初めて色が面として広がることが体感できると思います。

私たちが認識できる色域(ガマット)は?

 私たちが認識できるすべての色は一体どのような形の色域(ガマット)をしているのでしょうか。それを科学的に定義したものが国際照明委員会(CIE)が1931年に「可視光とヒトの色覚における色との定量的関係」を規格化したCIE 1931 色空間です。

 CIEは次の図のような実験装置を用いてヒトが認識しているすべての色を光の三原色(RGB)で再現する規格「CIE RGB 色空間」を作成しました。

CIE 1931色空間の規格化のために行われた等色実験の模式図。試験光と光の三原色(RGB)で作成した色をスクリーンに投影し、ヒトが同じ色に見えるかどうか確認している様子が描かれている。
CIE 1931 等色実験の装置の模式図

 この等色実験により光三原色(RGB)の加法混色で色を作成すると彩度が高い光は再現できないことがわかりました。たとえば単色光のシアンの色は光の三原色の緑(G)と青(B)の混色では再現できなかったのです。単色光のシアンの光に赤(R)を加えると、緑(G)と青(B)で作ったシアンの光と同じ色になりました。

 ヒトの3種類の錐体細胞はそれぞれの反応する範囲が大きく重なり合っています。たとえば単色光のシアンの光と三原色(RGB)の緑(G)と青(B)の混色で作成したシアンの光では錐体細胞の反応が異なります。そのため単色光のシアンを光の三原色(RGB)では厳密に再現できないことがわかったのです。

 そこでCIEはRGB 色空間をもとに計算によってヒトが認識できるすべての色を表したCIE XYZ色空間の規格を作りました。この色空間は等色から理論的に導かれたものであり、光の三原色(RGB)で色を再現する実在のディスプレイ装置などには依存しません。

CIE 1931 xy 色度図。ヒトの目が見分けられる色の範囲(色域)を2次元のxy座標上にプロットした馬蹄形のグラフ。外縁の曲線は純粋な単色光の波長を示し、中心の白色点に向かって色が淡くなる様子が描かれている。
CIE 1931 xy 色度図

 CIE 1931 xy 色度図は、ヒトの色覚で認識できる色域(ガマット)を2次元のxy座標上にプロットした馬蹄形のグラフです。外縁の曲線は純粋な単色光の波長を示します。下部には波長表示がありませんが、この部分はヒトが認識できる色のうちマゼンタなど単色光に存在しない混色で生じる色光です。グラフの中心に向かうほど色が淡くなります。中心は白色点と呼ばれ、太陽光に近い白色光に相当する位置になります。

 CIEは1931年に光の3原色を赤色光700 nm、緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの単色光としました。これらの波長は英国のJohn GuildとWilliam David Wrightがそれぞれ別途に実施した等色実験の結果が採用されています。当時はLED(発光ダイオード)などありませんでしたから、実験に使いやすい光の波長が選ばれました。緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの光は水銀ランプの輝線です。赤色光はタングステンランプの白色光を分光器で分散させて得られた650 nmの光が使われましたが最終的にはより長波長の700 nmの光が採用されました。

 前述の通り実際の光の三原色(RGB)の混色で作ることができる色域(ガマット)はCIE 1931 xy 色度図に一致しません。次の図は上述のCIEが定めた光の三原色で再現できる色域を示したものです。RGBの三角形の範囲が、この光源で再現できる色域です。これより外側の色はこの光源では再現できません。

CIEが1931年に定めた光の三原色(RGB)の波長による色域(ガマット)。xy色度図上の再現範囲。
CIEが1931年に定めた光の三原色(RGB)の波長による色域(ガマット)

 CIEが定めた光の三原色(700nm、546.1nm、435.8nm)形の頂点は色度図の最も彩度の高い馬蹄形の曲線上に置かれています。この三角形の内側がCIE 1931で定められた光の三原色で表すことができる理論上の色域です。しかし、この純粋な単色光を実現するためには発光効率の高い光源が必要であり、現状ではこの光の三原色の光源は存在しません。

 光の三原色の波長が決まった経緯については、本館「光と色と」の次のページを参照してください。

 次の図はCIE 1931 xy 色度図私たちが日常的に使っているディスプレイの規格の色域を重ねたものです。 図中の小さな三角形が一般的なディスプレイで使われている標準規格 sRGB の色域(ガマット)です。そして、それより一回り大きいのが印刷やプロ向けの規格 Adobe RGB の色域(ガマット)です。いずれの三角形もヒトの色覚の限界である馬蹄形の外縁には届かず、特に緑から青にかけての領域が大きく欠けていることがわかります。

CIE 1931 xy 色度図の上に、sRGB(内側の小さな三角形)と Adobe RGB(外側の一回り大きな三角形)の範囲を重ねた図。いずれの三角形も馬蹄形の外縁(ヒトの色覚の限界)には届かず、特に緑から青にかけての領域が大きく欠けていることを示している
色域(ガマット)の比較:sRGB と Adobe RGB

 この図からわかる通り最高級のディスプレイを使ったとしても、RGBの三角形内部の色域(ガマット)に存在する色しか再現できないのです。とりわけ馬蹄形の外縁の鮮やかな緑やシアンやマゼンタは再現できません。そのため、たとえば綺麗なエメラルドグリーンの海の映像を見ても、どこか本物の色と違う、鮮やかさが物足りないと感じるのです。

光の三原色(RGB)で作れない色とは?

 光の三原色(RGB)による色覚の再現は極めて合理的で効率的ですが、自然界が持つ無限の色の多くを切り捨ててしまっているのです。どんなに技術が進歩しても、光の三原色(RGB)で色を再現する限り、この馬蹄形の豊かなカーブの外縁の色を見ることはできません。ですから、この三角形の織に閉じ込められている光の三原色(RGB)の色域では自然界に存在するすべての色を再現することはできないのです。具体的に光の三原色で作れない・表現が困難な色は以下の通りです。

  • 高彩度の色:自然界に存在する鮮やかな色
  • 完璧な黒色:光の三原色(RGB)は混ぜると白(白色光)に近づく加法混色のため、混色で黒を表現することはできません。光を消灯すると黒になります。
  • 光の三原色(RGB):赤(R)、緑(G)、青(B)は原色ですから混合で作ることはできません。

 私たちが眺めているディスプレイの色は、自然界の広大な色域(ガマット)に比較すると、ほんの一部を切り取った三角形の檻の中に過ぎません。クリエイターたちは、この限られた色域の中で、いかに本物の色を再現させるかという試行錯誤を繰り返してきました。彩度が足りなければコントラストで補い、特定の色が作れなければ隣接する色と調和させるなどの工夫をしています。

光の三原色(RGB)の制限は超えられるのか?

 この光の三原色(RGB)の三角形の檻の中から抜け出す方法はあるのでしょうか? 私たちは自然界の広大な色彩を再現することはできないのでしょうか。実はこの不可能性への挑戦こそが現在のディスプレイ技術の最先端となっているのです。

 第一の方法は光源の多原色化です。光の三原色(RGB)では三角形の檻しか作れませんが、原色の数を増やすことで、その形を四角形、五角形へと広げることができます。その結果、CIE xy 色度図の馬蹄形の外縁に近づけることができます。次の図はCIE 1931 xy色度図上で従来のsRGB(三角形)に黄色(Y)を追加し、色域が四角形に広がった様子を示した図です。特に緑から赤にかけての再現範囲が拡大していることがわかります。わずかな面積の広がりですが、冒頭のひまわりを本物に近い色で表現できるようになります。

CIE 1931 xy色度図上で、従来のsRGB(三角形)に黄色(Y)の頂点を追加し、色域が四角形に広がった様子を示す図。特に緑から赤にかけての再現範囲が拡大している。
4原色(RGBY)による色域の拡張の例

 実際に、かつてシャープが黄色(Y)を加えたRGBYの4原色で色を再現できるディスプレイ AQUOS クアトロン を開発し販売していました。残念ながら主流とはならなかったため販売は終了していますが、当時としては色域(ガマット)を広げる画期的な試みでした。最近では商業施設や映画館などで6原色以上の光源を用いることで、より実物に近い色彩を再現する多原色プロジェクターが開発されています。

 第二の方法は、3原色の数は変えずに3点の位置を馬蹄形の外縁に押し広げる手法です。つまり最新の光源を利用して原色の純度を向上することです。現在の超高精細放送(4K/8K)のBT.2020規格では最新の光源を用いて xy 色度図の75.8%まで色域(ガマット)を広げています。最新の光源には次の3種類が存在します。

  • RGBレーザー: 光の純度が極めて高く、非常に鋭いピークの単色光を得られるため、BT.2020の色域をほぼ100%カバー可能です。まさに究極の光の三原色(RGB)の光源です。
  • 量子ドット (Quantum Dot): 青色LEDの光を特定の波長だけを強く発光させる特殊な結晶に当てることで高純度なRGBを発光させます。現在の高画質ディスプレイの主流となりつつある技術です。
  • 有機EL (OLED): 素子自体が発光するため鮮やかな発色が可能です。しかし、BT.2020企画を満足させるためにはさらなる新材料の開発が必要です。

真実の色をめざして:理論と想像力が作る色彩文化

 どれほど技術が進化してもCIE xy 色度図の色域を完全にカバーすることは困難です。しかしながら、最終的に色を認識しているのは脳です。私たちの脳には不完全な情報を補完する能力が備わっています。ですから物理的な条件が揃わなくても、たとえば画面上に鮮やかなシアンの単色光が存在しなくても、光のハイライトやコントラストを工夫することによって鮮やかなシアンを脳に認識させることができます。そういう意味では現実に忠実であること以上に、人間の記憶に存在する理想の色を呼び覚ますことこそがリアリティの追求と言えるかもしれません。

左側には数学的な数式と色度図のグラフが描かれ、右側に向かってそれらが鮮やかな光の粒子と絵画的な色彩の爆発へと溶け込んでいくイメージ画像。デジタル技術の理論と人間の想像力の融合を表現している。
真実の色をめざして:理論と想像力が作る色彩の世界

 映画、写真、絵画、アニメなどの色彩は決して自然界の単なるコピーではありません。そこには三角形の檻の限られた領域の中でいかに心を動かす色を再現するかというクリエーターの強い意志が介在しています。完璧な再現ができないからこそ生まれるのが表現のゆらぎです。その隙間を私たちの想像力が埋めることで色彩の文化が成り立っているのです。

1964年、パリのガルニエ宮=オペラ座にマルク・シャガールが描いた新しい天井画が設置されました。14人の作曲家によるオペラの場面が描かれています
シャガールの天井画(マルク・シャガール、1964年、パリのガルニエ宮=オペラ座)
Author:Ninara from Helsinki, Finland

よくある質問(FAQ)

Q:RGBの三原色ですべての色を再現できないのはなぜですか?

A:ヒトの3種類の錐体細胞はそれぞれの反応する範囲が大きく重なり合っています。たとえば単色光のシアンの光と三原色(RGB)の緑(G)と青(B)の混色で作成したシアンの光では錐体細胞の反応が異なります。そのため単色光のシアンを光の三原色(RGB)では厳密に再現できないのです。

Q:RGBの制限を克服する技術にはどのようなものがありますか?

A:レーザー光源や量子ドットを用いて色の純度を高め再現範囲を広げる技術や、RGBに他の原色を加えた多原色表示などがあります。

Q:物理的に再現できない色を、人間はどのように認識していますか?

A:物理的にディスプレイで再現できない色であっても人間の脳は周囲のコントラストや光のハイライトなどの情報を利用して記憶にある理想の色を補完して認識する能力を持っています。

【あわせて読みたい:色彩の深淵へ】

本館「光と色と」ではこの記事のベースとなった色彩の基礎知識を多数公開しています。 光と三原色の基本については次の記事を参照してください。

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2026年1月26日月曜日

ケミカルライトが光る原理と仕組み

ケミカルライトとは

 コンサートやパーティーなどで使われるケミカルライト(Chemical Light)。最近はいろいろな色のものが手に入るようになりました。ケミカルライトは化学発光(化学ルミネセンス)によるライトの総称です。サイリューム、シアリウム、ルミカライトなどと呼ばれる場合もありますが、これらは登録商標です。

光の三原色のケミカルライト
光の三原色のケミカルライト

ルミネセンスとは

 物質は原子からできています。原子はプラスの電気をもつ原子核とマイナスの電気をもつ電子からできています。通常、原子は原子核と電子の電荷がつり合った安定したエネルギー状態を維持しています。このとき電子のエネルギー状態は安定した基底状態にあります。原子が外部から何らかのエネルギーによる刺激を受けると、電子のエネルギー状態が高くなり励起状態となります。励起状態となった電子は直ちに安定した基底状態に戻ります。このとき電子は励起状態と基底状態の差分のエネルギーを放出します。この差分のエネルギーが可視光線のエネルギーに相当するとき目に見える光が出てきます。このような発光現象をルミネセンスといいます。ルミネセンスは電子を励起状態にする刺激をつけて区別します。例えば、蛍光灯のように電気エネルギーを使うものはエレクトロルミネセンス、ケミカルライトのように化学反応で生じたエネルギーを使うものはケミカルルミネセンス、ホタルのように生物によるものはバイオルミネセンスと呼ばれます。光を当てると蛍光を出す塗料は、光を刺激に使っているのでフォトルミネッセンスと呼ばれます。

ルミネセンスの原理:励起状態となった電子は直ちに安定した基底状態に戻る。このとき電子は励起状態と基底状態の差分のエネルギーを放出する。
ルミネセンスの基本原理

 ケミカルライト以外に有名なケミカルルミネセンスとしてはルミノール反応が知られています。またホタルなどの生物発光も化学発光の一種です。ルミノール反応の原理と仕組みについては次のページを参照してください。

反応機構

 ケミカルライトのスティックの中には2つの液体が別々に入っていて、スティックを折ることによって混合します。片方の液体は光のエネルギーの元になるシュウ酸ジフェニルと蛍光色素(dye)と反応を進めるための物質(触媒)の混合物です。もう片方の液体は過酸化水素水です。

 シュウ酸ジフェニルと蛍光色素 (dye) と触媒の混合物と過酸化水素が混ざると、シュウ酸ジフェニルが過酸化水素で酸化されて分解し、フェノールと過シュウ酸エステル(ROOC-COOOH)を経て1,2-ジオキセタンジオンが生じます。1,2-ジオキセタンジオンは分解して二酸化炭素となりますが、このときに蛍光色素にエネルギーを与えます。励起状態となった蛍光色素はすぐに基底状態に戻りますが、このとき差分のエネルギーを光 (hν) として放出します。

シュウ酸ジフェニルと過酸化水素との酸化→1,2-ジオキセタンジオンの分解と色素の励起
→色素の緩和による発光
ケミカルライトの化学発光の反応式

光の三原色の混色の原理で様々な色を作れる

 ケミカルライトが出す光の色は使用する蛍光色素(dye)よって異なります。使用される蛍光色素にはさまざまな種類があり、それぞれ特有な色の蛍光を発します。蛍光色素を混ぜることによって別の光を作ることができます。たとえば赤・緑・青の色素を混ぜると白い光が出てきます。これは光の三原色の加法混色によるものです。


光の三原色
R:赤(レッド) G:緑(グリーン) B:青(ブルー)
C:青緑(シアン) M:赤紫(マゼンタ) Y:黄(イエロー) W:白(ホワイト)

 光の三原色の原理と仕組みについて次のページを参照してください。


ケミカルライトの用途

 ケミカルライトのスティックは防水性、絶縁性に優れています。ケミカルライトは発光に酸素を必要とせず、熱をほとんど発生しません。火花や炎も出さないため水中でも利用できます。安価で使い切りできるので軍隊、キャンプ、洞窟探検、ダイビングにおいて光源として利用されています。

ケミカルライトを使う米軍兵
ケミカルライトを使う米軍兵

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2026年1月2日金曜日

色の三原色(CMY)の吸収スペクトルと反射スペクトル

 色の三原色CMY)はシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)の三色です。色の三原色は絵の具などの色材の混合です。次の図のように白地のキャンバスの上で白色光に照らされたシアン・マゼンタ・イエローの色材を混ぜた様子を示したものが色の三原色の図です。

色の三原色(CMY)の混色の図
色の三原色(CMY)の混色の図

  上手から分かるとおり絵の具などの色材は自ら光を出しているわけではありません。白色光のうちある範囲の波長の光を吸収し、それ以外の光を反射します。たとえばシアン(C)の色材は赤色系の光を吸収し、それ以外の光を反射します。その反射光がシアン(C)に見える光となります。同様にマゼンタ(M)の色材は緑色系の光を吸収し、イエロー(Y)の色材は青色系の光を吸収します。次の図はシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)の色材の吸収スペクトルを示したものです。それぞれの色材のスペクトルのピークがある波長が、色材が吸収している光の中心波長になります。

色の三原色(CMY)の吸収スペクトル
色の三原色(CMY)の吸収スペクトル

 色材に吸収されなかった光は反射されます。反射光の成分と色光の混色を理解するために光の三原色RGB)の混色を知る必要があります。次の図のように真っ暗な部屋の中で白地のスクリーンに赤(R)・緑(G)・青(B)の光を当てたときの様子を示したものが光の三原色の混色の図です。緑(G)と青(B)の光を混ぜるとシアン(C)の光、赤(R)と青(B)の光を混ぜるとマゼンタ(M)の光、赤(R)と緑(G)を混ぜるとイエロー(Y)の光になります。

光の三原色(RGB)の混色の図
光の三原色(RGB)の混色の図
「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組みについては下記のページを参照してください。
【関連記事】「光の三原色」と「色の三原色」の違いと基本・原理・仕組を図解【2026年最新版】 

 次の図はシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)の色材の反射スペクトルを示したものです。シアン(C)の色材は緑色系と青色系の光を反射します。上述の通り光の三原色で緑(G)と青(B)の光を混ぜるとシアン(C)の光になります。マゼンタ(M)の色材は赤色系と青色系の光を反射します。光の三原色で赤(R)と青(B)を混ぜるとマゼンタ(M)になります。イエロー(M)の色材は赤色系と緑色系の光を反射します。光の三原色で赤(R)と緑(G)の光を混ぜるとイエロー(M)になります。

色の三原色(CMY)の反射スペクトル,
色の三原色(CMY)の反射スペクトル

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2023年10月15日日曜日

色彩:色材の文化史 (「知の再発見」双書)

色彩―色材の文化史 (「知の再発見」双書)

フランソワ ドラマール (著), ベルナール ギノー (著), Francois Delamare (原著), Bernard Guineau (原著), ヘレンハルメ 美穂 (翻訳), 柏木 博

 絵画に色をつけたり、物体に色を塗ったりすることは昔から行われてきました。現実の色に近いカラー写真や印刷のための色材、布を鮮やかにそめるための色材、食品を美味しくみせるための色材・・・現代においては目的に応じて様々な顔料と染料があります。

 古くはラスコーの洞窟の壁画から現在のありとあらゆる色材まで、色材の開発の歴史と発展を解説した本です。

商品の説明

 生命の源である光から生まれる色彩。人類は太古の時代から色彩を楽しみ、それを再現しようと努力してきた。本書は人類の歴史の曙の時代から、中世のひそやかな色彩の改良をへて、安定し多彩な色を生み出すことを可能にした「化学革命」の時代を詳述し、さらに色の数を爆発的に増やすIT時代の色のあり方まで検証する。絵画、デザインや染色など「色」にかかわる芸術をより深く知りたい人、必読の入門書。人類の表現活動を支えた技術【アート】の歴史。

単行本: 174ページ
出版社: 創元社 (2007/02)
ISBN-10: 4422211927
ISBN-13: 978-4422211923
発売日: 2007/02
商品の寸法: 18 x 12.6 x 1.8 cm

目次

第1章 絵具と染料

第2章 中世の色彩

第3章 需要と供給の爆発的増加

第4章 化学工業の勝利

資料編

古来より伝わる色材調製法

色名の変遷

染物と染料

オーカーの採石場

ものに色があるのはなぜ?

理想の黒

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2023年6月22日木曜日

色彩心理学入門―ニュートンとゲーテの流れを追って

色彩心理学入門―ニュートンとゲーテの流れを追って (中公新書)

大山 正 (著)

 この本は色の見え方について解説した入門書です。色が見える仕組みが解明されるまでの歴史や、色が見える仕組みを学びたい人は是非読んみてください。 

内容(「BOOK」データベースより)

 色彩の研究は、ニュートンの実験に始まり今日の色表示体系に至る流れと、ゲーテの観察に始まる、色の主観的な体験の現象学の流れとがあり、そこに両者に欠けた色覚の生理学の流れが加わっている。さらに色には、感情や文化と結びつく複雑な側面もある。この広範囲におよぶ色彩のさまざまな問題を、主要な人物の貢献を紹介しつつ解説する。色彩への実用的知識が要求される現在、その課題にも応えてくれる格好な入門書となっている。

新書: 235ページ
出版社: 中央公論社 (1994/01)
ISBN-10: 4121011694
ISBN-13: 978-4121011695
発売日: 1994/01
商品の寸法: 17.2 x 11 x 1.2 cm

目次

第1章 ニュートンにおける光と色
第2章 ゲーテの『色彩論』と視覚の諸現象
第3章 化学者ドールトンと色覚異常研究
第4章 ヤング‐ヘルムホルツの三色説
第5章 ヘーリングの反対色説とその発展
第6章 一つの目に二種の視覚―フォン・クリースの二重視覚説
第7章 動物の色覚
第8章 光の強度と明るさの感覚―フェヒナーの法則とスティーヴンスの法則
第9章 色を立体で表わす―マンセルとオストワルト
第10章 色を数字で表わす―混色の法則とCIEの表色系
第11章 カッツと色の現象学
第12章 色は波長だけではきまらない
第13章 色の効果
第14章 色と感情


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2021年9月30日木曜日

ジャミラのロケットの光学迷彩|ウルトラマン第23話「故郷は地球」

 ウルトラマン第23話「故郷は地球」は有名なジャミラの話です。

 ジャミラは宇宙開発競争で某国が打ち上げた宇宙船に搭乗していた地球人の宇宙飛行士の名前です。ジャミラは事故によって水のない惑星にたどり着き、某国の救助を待っていました。しかしながら、某国は国際的な問題になることを恐れて事故を隠蔽しジャミラを見捨てたのです。

 ジャミラは一命をとりとめはしましたが、水のない惑星の環境に適応し、水を不要とするひからびた粘土質の身体となりました。ジャミラは某国に復讐するため宇宙船を改造し地球にやってきました。その宇宙船は姿を消す機能を有していたのです。

 地球に到着したジャミラは姿を隠した宇宙船で要人を乗せた旅客機を次々と撃墜します。科学特捜隊が出動しますが見えないロケットからの攻撃を受けます。イデ隊員とフジ隊員がジェットビートルの電波探知機で位置を確認、飛行機雲を吐きながら飛ぶ見えないロケットを発見します。飛行機雲を頼りにレーザーで攻撃しますが、ロケットを見失ってします。

 ジャミラのロケットはどうして姿を隠すことができるのでしょうか。科学特捜隊本部でムラマツキャップが2つの実験をしながら推測します。

 ムラマツキャップは自転車を持ち出して後輪を勢いよく回し始めます。そして車輪が止まっているときはスポーク(金属の矢)が見えるが、高速で回転するとスポークが見えなくなり見通せるようになると説明します。高速で移動するものは見えなくなる。この説明を聞いたイデ隊員は見えないロケットはものすごい力で振動していると答えます。これが1つ目の推測です。

ムラマツキャップの実験①高速で車輪を回転すると見通せるようになる
ムラマツキャップの実験①
高速で車輪を回転すると見通せるようになる

 次のムラマツキャップは色を塗り分けた円盤を回し始めます。円盤が止まっているときには色が見えますが、高速で回転させると全ての色が消えて灰色一色になり色が見えなくなると説明しています。これが2つ目の推測です。

ムラマツキャップの実験②色分けした円盤を高速で回転すると色が失われる
ムラマツキャップの実験②
色分けした円盤を高速で回転すると色が失われる

 この色分けした円盤の実験を最初に行ったのはアイザック・ニュートンです。ニュートンは虹の7色で色分けされた円盤を高速で回転させると光が混ざって白色になることを発見しました。この円盤はニュートンの円盤と呼ばれています。

 ムラマツキャップは「灰色一色になる」と説明していますが、この実験は反射光の経時加法混色ですから「白色一色になる」が正解です。

 こうして2つの推測が出ましたがイデ隊員は見えないロケットの秘密をその場では解き明かすことができず、徹夜で研究に没頭します。そしてスペクトルアルファ線、スペクトルベータ線、スペクトルガンマ線の3つのレーザー光線を開発します。

 イデ委員の説明によると、スペクトルアルファ線は光の屈折を自由に変えることができるもの、スペクトルベータ線は光の色彩吸収力を破壊するもの、スペクトルガンマ線は光の反射角度にある制限を加えるものです。

 この3つのスペクトル光線を重ね合わせて照射することで、ついに見えないロケットが姿を現しました。イデ隊員が説明した3つのスペクトル光線の働きを考えると、どれも物体を見えなくするような効果のように思えますが、見えない物体に照射するとロケットを見えなくしている3つの効果のバランスが崩れて物体の姿が見えるようになるということでしょうか。

 科学特捜隊が攻撃を開始しロケットを撃墜すると、ジャミラが現れます。ジャミラはウルトラマンのウルトラ水流で倒されます。

 ジャミラの話は題名の「故郷は地球」の通り不幸な宇宙飛行士の悲しい話でしが、このお話の中に上述のような光学の話があったのです。

継時加法混色についてはこちら

ウルトラ水流の話はこちら


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2021年9月16日木曜日

クール星人の宇宙船は光学迷彩|ウルトラセブン第1話「姿なき挑戦者」

 「地球は狙われている!いま宇宙に漂う幾千の星から恐るべき侵略の魔の手が」(浦野光)のナレーションから始まるウルトラセブン第1話「姿なき挑戦者」。

 クール星人が昆虫のような地球人を誘拐し地球防衛軍に全面降伏を求めてきますが、ヤナガワ参謀とヤマオカ長官がこれを毅然とした態度で断ります。

クール星人
地球人を昆虫呼ばわりするクール星人

 クール星人は宇宙船で京浜工業地帯の攻撃を開始、あたりが火の海と化します。ウルトラ警備隊の出動が必要な事態となりましたが、大きな問題がありました。

 それはクール星人の宇宙船の姿が見えないことでした。頭を悩ませながら作戦を考えるキリヤマ隊長。アンヌ隊員がご覧の通りの風来坊のモロボシ・ダンに何か良い作戦はないのか声をかけます。

アンヌ「ダン、あなたの地球がピンチにたたされているのよ。何か敵を倒す方法はないの?」

 地球人でもないのに「あなたの地球」と言われたダンですが、この言葉でダンは地球を守り抜く決意をさらに強くしたのでしょう。ダンはクール星人の宇宙船の秘密をウルトラ警備隊に教え作戦を提案します。

ダン「敵の宇宙船を見えるようにすることだ。あの宇宙船は保護色を使って姿を隠しているんだ。特殊噴霧装置を利用して、こちらで色を吹き付けてやれば、相手の正体がわかるはずだ」

 特殊噴霧装置は科学班の協力ですぐに作られ、ウルトラ警備隊はホーク1号で出動。ダンも搭乗して作戦に参加しました。作戦は見事に成功し、クール星人の宇宙船はその正体を現しました。クール星人はウルトラセブンとウルトラ警備隊によって撃退されます。

 さて、ここで問題です。SFで姿を隠すと言えば透明になるのが手っ取り方法ですが、クール星人の宇宙船は透明になるわけではないようです。どのような仕組みで姿を隠していたのでしょうか。

 その答えはダンの言葉の中にヒントがあります。それは「保護色」です。保護色は動物の体の色や模様によって背景と見分けがつかくなり敵から目立たなくなる体色のことです。 保護色は動物以外にも使われることがありますが、一般的には迷彩色と呼んだ方が適切でしょう。

Shapeshifting Octopus, amazing camouflage

解説記事:光と色と「これは凄い!タコの保護色による擬態

 つまりダンの説明によればクール星人の宇宙船はその表面をまわりの景色に合わせて変化させていたのであって、透明になっているわけではないことがわかります。

 迷彩色の原始的な方法はまわりの景色に同化できるような色を塗ることです。たとえば宇宙船を空の青色で塗れば目立たなくなります。

 しかしながら、クール星人の宇宙船はもっと先進的な方法でまわりの景色に合わせて色を変化させることができます。たとえばカメレオンは皮膚で周りの色を感じて、体の色細胞の大きさを変化させることによって体色を変化させることができます。

 宇宙船表面の色を変化させるようにするには表面にさまざまな色を出すことができる発光体を設置する必要があるでしょう。宇宙船の背景の景色の色をセンサーで感知し、その色の光を出すと宇宙船が目立たなくなります。また、宇宙船表面をスクリーンにする方法もあります。背景の景色をカメラで撮影し、映像をスクリーンに投影します。

Mercedes-Benz. The Invisible Drive. | Ridgeway Mercedes-Benz

解説記事:光と色と「光学迷彩で見えない透明な自動車

 昆虫のような地球人ができるのですから、クール星人にとっては簡単なことですし、ここで説明した内容を超える科学と技術の光学迷彩を採用しているかもしれません。ですが、ペンキを吹き付けられて姿を表してしまったことを考えると、クール星人の知識も昆虫レベルだったのかもしれません。

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2021年7月21日水曜日

色は何色(なんしょく)あるのか

色は数えられるか

  太陽光をプリズムによって分散させると赤から紫までの光の色の帯、すなわち可視光線の連続スペクトルが得られます。

可視光線の連続スペクトル
可視光線の連続スペクトル

 このスペクトルに現れる色はおおまかに紫・青・緑・黄・赤の5色ですが、ニュートンは青と紫の間に藍(インディゴ)、赤と黄の間に橙(オレンジ)を加えて7色としました。しかし、実際に色の境界は明確ではなく、色が紫から赤まで連続的に変化しています。大雑把に何色まで見分けられるかは数えることができますが、無数の色が存在していることは明らかです。

 可視光線の連続スペクトルの色は光の波長(振動数)に対応した単色光の色ですが、複数の単色光を混ぜ合わせると別の色の光を作り出すことができます。作り出した光の中にはマゼンタのように単色光にない色もあります。また、光源の光を反射することによって生じる物体の色も無数に存在します。

 光と色と「マゼンタのおはなし|単色光(波長)が存在しない色

 ですから「色は何色あるのか」という問いに対して「一つ一つ数えることは困難で無数に存在する」としか答えようがありません。

 しかしながら、この答えでは色を定量的に扱うことができません。そこで、ヒトの目で見分けることができる色の数がどれぐらいあるのかを考えてみましょう。

ヒトはどれぐらい色の違いを識別できるのか

 ひとくちに「青色だ」「赤色だ」と同じ色名で呼んでも、厳密には同じ色ではないことはよく経験することです。たとえ同じ色のインクで物体を塗っても、インクの塗り方や物体の表面仕上げが異なっていれば色の見え方は変わります。このような色の多様性から色の数について考えてみましょう。

 色には知覚的なものと、波長や強度など物理的な量で表すものがあります。知覚による色は色の種類を示す色相、色の明るさを示す明度、色の鮮やかさを示す彩度で表されます。これらを色の3属性といいます。色相は光の波長で決まり、明度は反射される光の量(光子の数)で決まります。彩度は光の波長範囲で決まり、波長範囲の狭い色は鮮やかな色になります。

 ヒトがどれぐらい色を見分けることができるかの指標については波長弁別閾、色度弁別閾、純度弁別閾があります。

 波長弁別閾はある波長λの単色光の色の違いを見分けることができる最小の波長差Δλのことです。次の図のように同じ波長で同じ明るさの色のついた円を被験者に見せ、下側の半円のみ波長を変化させていき、被験者が色の違いを認識する最小の波長差Δλを求めます。

波長弁別閾の試験の例
波長弁別閾の試験の例

 様々な波長の単色光について同じ試験を繰り返し、波長に対してΔλをプロットしたものが次の図になります。

単色光に対するヒトの波長弁別閾
単色光に対するヒトの波長弁別閾

 波長弁別閾値は短波長側で7 nm、超波長側で6 nm、中波長の領域では数 nmになっています。このことから、ヒトは数ナノメートルのわずかな波長の違いで色を見分けることができることをがわかります。

 ヒトが色をどれぐらい見分けることができるのか虹を例に考えてみましょう。可視光線の範囲を380 nm〜780 nmとすると、その波長幅は400 nmとなります。虹を5色として、それぞれの色の波長幅は同じと考えると、1色あたり波長幅は80 nmとなります。つまりヒトは虹の1色をさらに細かく見分けることができるのです。

 色度弁別閾と純度弁別閾も波長弁別閾と同じような試験で求めます。

 色度弁別閾は同じ色度の色のついた円を被験者に見せ、下側の半円のみ色度を変化させていき、被験者が色の違いを認識する最小の色度の差を求めます。

 純度弁別閾は白色光の円を被験者に見せ、下側の半円のみに単色光を加えたときに、被験者が色の違いを認識する最小の純度の差を求めます。

 一般に色度弁別閾および純度弁別閾は短波長側と超波長側で小さく、中波長の領域で大きくなることが知られています。つまり中波長領域では色の違いを認識しづらく、短波長側や超波長側ではわずかな色の違いを認識できるということです。

 ヒトはわずか数ナノメートル差の光の色を見分けることができ、さらに色度や純度の差を見分けることができます。1943年にアメリカの色彩学者ドロシー・ニッカーソンは色の3属性を数値化し、色の数を750万色としました。また、色覚に優れた人が見分けることができる色の数は1000万色とも言われています。諸説ありますが、一般にはヒトが見分けれる色の数は数百万色が妥当と考えられています。これらの値はあくまでも推計値で、実験の結果ではありません。

 色は何色(なんしょく)あるのかという問いに対して、ヒトが見分けることができる色を数えあげるのは現実的ではありません。

色は何色(なんしょく)あるのか

 現在の一般的なカラーディスプレイは24 bitフルカラーで1677万7216色(RGB= 8 bit × 8 bit × 8 bit = 2563)を表現することができます。フルカラーはあらゆる色を表現できるることを想定していますが、ヒトがフルカラーのすべての色を見分けることができるわけではありません。最近では10億色以上を表現できる表示システムもありますが、ヒトの色の識別限界を超える色数を再現できることにどれぐらいの価値を見出すことができるかは疑問です。

グラフィクソフトウェアの色の指定の例
グラフィクソフトウェアの色の指定の例

 さて、色は約1700万色ある、ヒトは数百万の色を見分けらると言われても、色の数としては具体的なイメージがわかないかもしれません。なぜなら、私たちが普段行っている現実的な色の識別は、単に微妙な色の違いを識別できるかどうかではないからです。微妙に異なる色を同じ色と判断しても問題ない場合は同じ色と認識するでしょうし、逆に同じ色と判断すると都合の悪い場合にはあえて異なる色と区別するでしょう。たとえば、木々の緑の葉を見たときに微妙な色の違いを認識せずにひとくちに「緑の葉っぱ」と呼ぶことが多いでしょうが、その絵を描こうとしたときには絵の具の黄緑と緑は違う色として区別するでしょう。

 こうなると色は何色(なんしょく)あるのかという質問の答えは、ヒトがどれぐらいの色を認知しているか、つまり色の名前はいくつあるのかを考えた方が現実的でしょう。

 色名は規格や色彩の文献に掲載されています。日本産業規格(旧日本工業規格)「JIS Z 8102:2001 物体色の色名」では、たった269の慣用色名しか規定されていません。他の文献を見ると多いものでも7500色です。色の名前の種類は地域、文化、言語によって異なりますが、数千色と考えておくと良いでしょう。

 ところで、色の名前を指定したからと言って、まったく同じ色が再現できるわけではありません。そこで色を正確に再現するために色見本や色を数値化したカラーオーダーシステムが使われています。

 色見本は目的や用途によっていろいろなものがありますが、数百から数千色あります。カラーオーダーシステムはディスプレイのRGBやプロセス印刷のCMYKなどがあります。色見本やカラーオーダーシステムにより色を正確に伝えることができます。

  光と色と THE NEXT「印刷屋さんの色合わせープロセス印刷と特色印刷


日本塗料工業会 色見本帳

 ヒトが区別することができる色の数は数百万色、色の名前の数は数千色と考えておくと良いでしょう。

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2021年7月6日火曜日

色彩と心理に関する考察

色彩学と心理学 

 色彩学は色に関することを科学的に体系づけて探究する学問です。ヒトの視覚の仕組み、光と色の関係、色の表現方法や配色の調和などについて学びます。一方、心理学はヒトの心と行動について科学的に探究する学問です。

 私たちは普段いろいろな知識や経験をもとに五感を使って思考や行動をしていますが、ヒトの精神状態や判断や行動に色彩が影響することは知られています。

 色彩と心理の関係を学ぶ「色彩心理」という分野があります。現在のところ独立した学問として確立しているわけではありませんが、色彩学で心理を扱ったり、心理学で色彩を扱うことはあります。

動物と色覚

 脊椎動物の祖先はもともと 四原色の色覚(四色型色覚)をもっていたと考えられています。現在でも哺乳類をのぞく多くの動物は四原色の色覚(四色型色覚)を持っています。蝶などの昆虫や魚類は紫外線を見ることができ、鳥類や爬虫類の多くはヒトよりも色を見分ける能力が高く、より鮮やかな色の世界を見ています。これらの動物が色を見分ける能力が高いのは、それぞれの動物の生活環境に適応してきた結果と考えられます。昼行性の動物は明るい世界の中で、効率的に食べ物を見つけたり、天敵や仲間を認識したりするためには、より多くの色を見分けられた方が有利だったのでしょう。そこで、色を感じる錐体細胞の種類が増えて、色を見分ける能力が発達しました。

 一方、哺乳類はかつては夜行性の動物だったため、色を見分けることよりも、暗いところで良く見える能力が必要でした。そのため進化の過程で四色型色覚が失われ、色は見分けられないが弱い光でも感じることができる桿体細胞が発達しました。そのため犬や猫など多くの哺乳類は二原色の色覚(二色型色覚)です。たとえば、犬は赤と緑を見分けることができません。そのため、緑色の芝生の上で赤色の花を見つけるのが苦手です。

  哺乳類の中でも霊長類の一部の原猿類や新世界ザル類、旧世界猿や類人猿やヒトは三原色の色覚(三色型色覚)を持っています。いまから数千年前に赤色光に反応する錐体細胞の一部が変化し、緑色光に反応する錐体細胞となり、赤色錐体・緑色錐体・青色錐体(注)を有するようになったと考えられています。色を見分ける能力が向上した理由には諸説ありますが、木々の緑の葉の中で赤く熟した果実やさざまなな色の花や木の実を見分ける必要があったからと考えれています。

直立二足歩行がヒトにもたらしたもの

 ヒトは他の動物とかなり異なる特徴をもっていますが、これは唯一ヒトだけが直立二足歩行をするように進化した結果と考えられています。直立二足歩行がもたらした大きな変化は大きな頭部を支えることができるようになったことです。その結果、ヒトは大脳を発達させ、高度の知能を得ることになりました。また、上肢が自由に使えることになり、自然のものを道具として使用したり、それをヒントに道具を自ら製作できたりするようになりました。言語の発達はお互いの意思疎通を促進し、知識を文字として残すことができるようになり、文化的な活動を発展できるようになりました。

ヒトは記憶を体系化する

 ヒトは日常の生活で得た経験や知識を記憶し、体系づけて考えることによって新しいことを創造することができるようになりました。積み重ねたひとつひとつの点としての経験や知識の記憶がお互いに結びつくと記憶の線となり、その線と線が結びつくと記憶の面となります。さらに面と面が結びつくと記憶の立体ができ、立体と立体が結びつくと構造化された記憶が体系化されます。ヒトはその体系化された記憶を後世に残す術を持ち、長い年月をかけて種としての記憶を更新しながら継続して保有しています。もちろん、地域や人種によって言語も違えば、積み重ねた経験や知識も異なりますから、同じものごとに対しての価値観も違ってきます。それが世界中の人々の多様性です。

ヒトと色覚

 話を色彩に戻しましょう。ヒトが培ってきた経験や知識のひとつに色があります。ヒトは眼に入った光から色を認識しますが、その色に五感で得た情報や思考が加わり、色の記憶が体系化されます。

 ヒトは自然現象の中から色の経験や知識を積み重ねてきました。たとえば、赤色は血の色、太陽や火の色、夕焼けの色、熟した果実の色、花の色などがあります。血はヒトの「命」「体温」「情熱」、太陽や火は「明るさ」「活発」「高熱」、夕焼けは「美しさ」「はかなさ」「終焉」などを感じさせます。色覚で得た赤色にそれぞれの赤い色の知識が結びついて、赤色に対するイメージができあがります。つまり、色の知識は、色覚で認識した色だけではなく、付加的な情報や思考が加わることになります。その付加的な情報や思考には物理的なものや心理的なものがあります。色の知識はさまざまな情報や思考が複雑に絡み合った混沌としたもので、ヒトの判断や行動や精神状態にさまざまな影響を与えるのです。

 これは前述の知識の体系化によるものです。同じ色を見ても文化や言語によって色の認識は変わります。

色彩と心理

 色彩と心理の関係を学ぶということは、上述の混沌とした色の知識を解き明かすこととも言えるでしょう。

 そうして体系づけられた色彩と心理は占いのように見えるかもしれませんが、いわゆる占いとは異なります。

 たとえば血液型占いは血液型で一義的に性格を分類する血液型性格分類に基づいていますが、血液型と性格の間の関係には科学的根拠がありません。また統計学的な関連性も認められていません。もっとも血液型性格分類を信じ、自分の性格を分類に合っていると考えたり、分類に合わせて振る舞ったりする人は少なくありませんが、これは自己成就現象と言って血液型性格分類の本質からは外れています。

 また、古代から天文学と関連して発展してきた占星術は天体の位置や動きから国家や王家の吉凶から個人の運勢の判断にまで使われてきましたが、天文学の発展によって科学的根拠が認められなくなりました。統計学的な関連性については、自己成就現象によるものはありますが本質からは外れます。

 色彩と心理の関係は複雑すぎて科学的に解き明かすことは容易ではないと思いますが、同じ仕組みの色覚を持つ人々が色を感じた結果、どのように判断し、どのような反応を示すかについてはある程度の共通点を見い出すことができるでしょう。そこに統計学的な関連性を見い出し、色彩と心理を体系化したものが色彩心理と言えるでしょう。この体系化は統計学に基づくため全ての人に当てはまるわけではありませんが、全体としてある程度の傾向を見出したり、同じ傾向をもつグループに分類したりすることはできるでしょう。

 この統計的な体系化において重要なことは科学的な視点を忘れてはいけないということです。これは科学でわからないことは否定するということではありません。世の中には科学的によくわかっていないことがたくさんありますが、これまで得られている知見をもとに考えてみると、それが現実的なものか非現実的なものかはある程度は判断できるはずです。

 ビッグデータの統計解析およびAIを使った体系化が進むと、今まで見えていなかったことが見えてくる可能性もありそうです。

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