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2020年9月28日月曜日

炎の色はどんな色|炎の仕組み

炎とは何か

 最初に炎とはどのようなものなのを考えてみましょう。炎は気体が燃焼するときに生じる光と熱を発している部分のことです。

ろうそくの炎
ろうそくの炎

 液体の灯油や固体の紙などが燃えるときにも炎が出ますが、これらの炎は灯油が熱で気化したり、紙が熱で分解したりして生成した可燃性気体が燃焼しているものです。炎の色は何が燃えているのか、酸素がどのぐらい取り込まれているかによって変わります。


ろうそくの炎

 ろうそくに使われているロウは主に炭素原子と水素原子からなる炭化水素化合物です。普通のろうそくはパラフィンという炭化水素化合物が使われています。

パラフィンとは

 パラフィンは化学式CnH2n+2で表すことができるアルカンと呼ばれる炭化水素化合物のうち炭素数が大きいもののことです。アルカンはパラフィン系炭化水素とも呼ばれ、炭素数の少ないものにはメタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)などの可燃性気体があります。

プロパンの構造式と分子式
プロパンの構造式と分子式

 ろうそくの芯に火をつけると、芯に染みこんでいたロウが熱で気化・分解して燃焼します。これが炎になります。芯の近くのロウが熱で溶けて液体となり、液体のロウが芯に染みこむので、ろうそくは燃え続けることができます。ろうそくの炎は次の図のように3つの部分からなります。

ろうそくの炎
ろうそくの炎

 炎の一番内側の部分は炎心と呼ばれます。炎心は気化したロウが存在するだけで燃焼は起きていません。

 炎心の外側は内炎と呼ばれ、この部分では燃焼が起きています。しかし、内炎の燃焼は酸素が不十分なため不完全燃焼となっており、炭素の微粒子が生じています。この微粒子は燃焼で高温となり熱放射によってオレンジ色の光を出します。これがよく見る炎の色です。

 内炎の外側は外炎と呼ばれ、この部分は酸素が十分にあるため完全燃焼となっており、ろうそくの炎の中で最も温度が高いところです。外炎は明るいところではよく見えませんが、暗い場所では見えます。この部分には、炭化水素の燃焼で生じた高エネルギーで不安定な励起状態にあるラジカルと呼ばれる形になった原子や分子あるいはイオンが存在します。ラジカルはすぐに安定した低エネルギーの基底状態に戻りますが、このとき差分のエネルギーに相当する波長の光を出します。このような発光現象をルミネセンスといいます。

 なお、熱放射で出てくる光の色は発光している物質の温度が高くなるにつれて明るい色となりますが、ルミネセンスで出てくる光の色は温度とは関係ありません。

アルコールランプの炎

 メタノールを燃やすと炎にはほとんど色がついていません。メタノールには炭素が1つしか含まれていないため完全燃焼しやすくメタノールのほとんどが二酸化炭素と水になるからです。

ガスコンロの炎

 ガスコンロに使われるガスは都市ガスではメタン、プロパンガスではプロパンが主成分です。メタンやプロパンガスは常温で気体の炭化水素化合物です。ろうそくでは、燃焼に必要な酸素は炎のまわりの空気から取り込まれます。それに対してガスコンロはガスを燃焼する前にガスと空気(酸素)を混合します。

 ガスコンロの炎にも、ろうそくの炎と同じように芯があります。この部分にはガスと酸素が一緒に存在していますが燃焼は起きていません。ガスはこの芯のすぐ外側で燃焼しますが、この部分では炭化水素から生じた不安定なラジカルが存在し、青い光を出して燃えています。ガスコンロの炎が青いのは、空気を十分に混ぜてあり、酸素が豊富だからです。同じガスでも普通の使い切りガスライターの炎では、酸素が豊富にある炎の下部は青色、酸素が不足している上部はオレンジ色になります。空気をガスと一緒に積極的に送り込むターボライターの炎は透き通った青色になります。

ガスライターとガスコロンの炎
ガスライターとガスコロンの炎

このように炎の色は酸素の量によって変わります。 酸素を十分に与えると青色の炎となり、酸素が不十分だとオレンジ色の炎になるのです。

酸素量 炎の色 燃焼しているもの
不十分 オレンジ色 炭化水素が分解して生じた炭素の微粒子
熱放射による
十分 青色 炭化水素が分解して生じた不安定なラジカル
ルミネセンスによる

酸素の量と炎の色の関係

さまざまな色の炎

 ガスコンロにみそ汁などを吹きこぼしたときに炎の色が一瞬黄色になるのを見たことがあるでしょうか。また、銅製の鍋などを使ったときに炎が一瞬青緑色になる場合があります。

 これらの場合、みそ汁に含まれている食塩中のナトリウムや鍋に使われている銅の金属元素が炎の色の元となっています。高温で励起状態となった元素が、基底状態に戻るときに、その元素特有の色の光を出します。これを炎色反応といいます。

 ガスコンロの炎の中で針金などの先につけた銅線や食塩を炎の中に入れてみると簡単に炎の色を変えることができます。身近なところで炎色反応を利用したものは花火です。

 花火は赤色や緑色など様々な色を出しますが、花火の火薬には炎色反応で色を出す物質が着色剤として含まれています。

着色剤 炎の色 元 素
食塩 オレンジ色 ナトリウム
硫酸銅 青緑色
ホウ酸 緑色 ホウ素
塩化カルシウム 橙色 カルシウム
塩化リチウム 深赤色 リチウム

主な着色剤と炎の色

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【関連記事】

2020年9月7日月曜日

AIフォトエンハンサーで虹の色を強調してみたら7色を確認できた

 手持ちのグラフィックソフトウェアの色調補正のフィルタに「AIフォトエンハンサー」というのがありましたので、虹の写真に適用してみました。

 もとの写真がこれです(少し明るさとコントラストを調整しています)。 


AIフォトエンハンサーをかける前の虹の写真

 この写真にAIフォトエンハンサーをかけたのが次の写真です。


AIフォトエンハンサーをかけた虹の写真

 背景がだいぶ暗くなってしまいましたが、その分、虹の色が際立ちました。そこで、虹の部分だけ拡大した写真にAIフォトエンハンサーをかけてみた写真がこちらです。


虹の拡大写真にAIフォトエンハンサーを適用

 元の写真より虹の色が綺麗に出ました。よく見ると、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫とニュートンが決めた7色が確認できます。

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2020年9月5日土曜日

2本目の虹は何か?|二重の虹は主虹と副虹

虹を探してみよう

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 雨上がりに日差しが強くなってきたら、太陽を背にして空を見てみましょう。大気中に十分に水滴が浮遊し、太陽の高度がそれほど高くなく、日差しが十分に強いなどの条件が揃うと、空に虹が現れていることでしょう。


空にかかる虹

虹をよく観察してみよう

 虹と言えば7色からなる1本のアーチを思い出す人も多いと思います。しかし、虹をよく見てみると、明るい虹の上方に、もう1本、色が薄い暗い虹が見えることがあります。この暗い虹は気象条件によっては見えにくいのですが、はっかりと見えることもあります。中には初めて2本目の虹を見て、虹が二重にかかっていることに気がついた人もいるのではないでしょうか。上の写真もよく見てみると、明るい虹の上に、暗い虹がうっすらと写っています。虹が二重にかかっていることがわかります。

二重の虹は主虹と副虹

 次の写真は虹の写真の明るさとコントラストを調整したものです。虹が二重にかかっていることがわかります。二重の虹の内側の明るい虹のことを主虹、外側の暗い虹のことを副虹といいます。


主虹と副虹

 主虹と副虹ができる仕組みは、このブログの下記の記事で説明していますので、興味がありましたらご一読ください。

 また、虹に関する話は下記で読むことができます。

虹ができる仕組み

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2020年8月31日月曜日

昼間の月が白色に見える理由|月の色

 夜空に輝く月の色は黄色ですが、昼間に見える月の色は白色です。どうして、昼間は月が白く見えるのでしょうか。


夜間の月(左)と昼間の月(右)

夜空の月の色はどうして変化するのか

 月は太陽光を反射しています。その太陽光にはさまざまな色の光が含まれています。

プリズム分光 |ニュートンのプリズムの分散の実験をやってみた②
 https://opticaltale.blogspot.com/2020/07/blog-post_22.html

 夜空に輝く月の色は高度によって変化します。日没後、月が出たばかりのときを考えてみましょう。このとき月の高度は低く、地平線近くにあります。月で反射した光は大気中の長い距離を進みます。そのため、青色から緑色系の光は大気中で散乱してしまい、赤色系の光が地表に届きます。そのため、月がオレンジ色や赤色に見えます。

 月の高度が高くなってくると、大気中での青色から緑色系の光の散乱が少なくなってきます。すると赤色系に加えて緑色系の光が地表に届くようになります。赤色と緑色の光が混ざると黄色の光になるため、月が黄色に見えるようになります。さらに高度が高くなると、青色系の光がより多く届くようになるため、月が淡黄色や白色に見えます。


月の色と高度の関係

 このように夜空の月は高度によって、さまざまな色に変化します。もちろん、時間と高度だけではなく、大気中のチリや水蒸気の量も関係しています。そのため、より味わい深い色になります。

 地平線にある月や高い高度にある月は1日のうちに限られた時間しか見ることができません。私たちが、普段よく夜空で見かける月はある程度の高度で黄色に輝いている月でしょう。

昼間の月が白色に見える理由

 昼間は太陽光が満ち溢れています。そのため、太陽光の青色系の光が大気中でたくさん散乱しています。そのため昼間の空が青色に見えるのです。

空の色はどうして青色?
 https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-cdff.html

 夜空にある程度の高度で輝いている月の色は黄色ですが、昼間はその黄色の光に青空の光が混ざります。黄色光と青色光は補色の関係にあり、混ぜると白色光となります(白色LED電灯の白色光も青色光と黄色光を混色で作っています)。そのため、昼間の月の色は白っぽく見えます。また、月の高度が低いときも、太陽の高度が高ければ青色系の光がたくさん散乱しているため、月の色は白っぽくなります。

 「補色」と「白色LED」については下記を参照してください。

「光の三原色」と「色の三原色」 色が見える仕組み(7)
 https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-ab6f.html
白色LEDのスペクトル
 https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/led-d2e3.html

 次のページに掲載されている写真は、国際宇宙ステーションから月を撮影したものです。宇宙空間で月は夜空と同じような黄色をしていますが、月が地球の地平線に沈んでいくとき、月が大気の青空に入ります。大気中に入った部分の色が白っぽくなっていることがわかります。

Supermoon. Moonset on the Orbit (photo)
http://artemjew.ru/en/2014/08/10/moonset/

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2020年7月13日月曜日

世界各国の虹の色の数-虹ができる仕組み⑦

世界各国で虹の色の数は何色(なんしょく)と認識さているのか

同じものを見ているはずなのに、虹の色の数は世界各国、見る人で様々です。まず、次の虹の写真を見て、何色が見えるか、色をあげてみましょう。


虹の色の帯の中にどんな色が見えるか?

 赤色・橙色・黄色・緑・青(シアンに見える)・紫の6色はなんとなく区別がつきます。シアンと紫の間に若干、濃い青色が見えるような感じもします。これが藍なのでしょうか。

 次の写真は反射型の回折格子で白色光を分光した様子を撮影したものです。上の虹の写真と比較してみてどうでしょうか。


反射型回折格子による白色光の分散

 それでは、色の体感したところで、世界各国で虹の色がどのように捉えられているのか考えてみましょう。

日本

 「虹の色の数と日本の文化-虹ができる仕組み⑥」で説明した通り、日本人の多くが虹を7色と認識しているのは、ニュートンの虹の研究に由来する学校教育によるものです。

 虹を7色と記した日本初の物理学書『気海観瀾』は蘭学者の青池林宗が著したことからもわかるとおり、当時の西洋学術の多くはオランダから伝えられたもので、物理学も例外ではありませんでした。

オランダ

 そこで、日本に虹の色が7色であることを伝えたオランダにおける虹の色の数を調べてみると、日本と同様に 赤  橙  黄  緑  青  藍  紫 の7色となっています。

イギリス

 オランダが伝えた7色はイギリス人のニュートンの研究に基づくものです。イギリスの虹の色を数を確認してみたところ、ニュートン以前は 赤  黄  緑  青  菫 の5色で、現在は 藍 が区別されなくなり、 赤  橙  黄  緑  青  紫 の6色となっています。

 ニュートンは1703年にイギリスの王位学会(王位教会、the Royal Society of London)の会長に就任し、1704年に『Opticks 和名:光学』を発表しています。ニュートンの権威を考えると、当時は科学的な解釈として虹の色は7色とされていたと考えられますが、長い年月を経て実際に見分けることができる6色となったのでしょう。

アメリカ

 江戸時代末期の1853年にアメリカからマシュー・ペリーが率いる艦隊が日本に来航しました。いわゆる黒船来航です。当時のアメリカは西部開拓時代へ入る頃で、虹の色はニュートンの研究に基づく理科教育により、 赤  橙  黄  緑  青  藍  紫 の7色とされていました。

 1833年にマリー・スウィフト(Mary Swift)が著した『First lessons on natural philosophy for children』にも、虹の色は 紫  藍  青  緑  黄  橙  赤 と記載されています。この本は日本で1867年に『理学初歩』というタイトルで訳本が出版され、当時の英語教育に使われたようですが、理科教育にも大きな影響を与えたそうです。

First lessons on natural philosophy for children 
Mary A. Swift 1833 (1859年に改定)
Google Books  page 159 
Into how many colors may light be separated ?
Light may be separated into seven colors.
What are the names of these colors ?
Violet indigo blue green yellow orange red.

 現在のアメリカでは、虹は 赤  橙  黄  緑  青  紫 の6色と認識されています。この背景には、理科教育の見直しがありました。

 ジョン・デューイが創設したシカゴ大学の実験学校で科学を教え、子ども向けの科学書を多数執筆したベルタ・M・パーカー(Bertha Morris Parker)は、1941年に著した『Clouds, rain, and snow』において、見分けるのが難しい 藍 をわざわざ虹の色に含める必要はなく、そもそも虹を7色とするのは無理があるという考えから、虹は 赤  橙  黄  緑  青  紫 の6色からなると説明しました。

Open Library (OpenLibrary.org) Bertha Morris Parker
Clouds, rain, and snow (1941)
page 36
11. Sunlight is made up pf red, orange, green, blue, and violet light.
12. A rainbow is made by the passing of sunlight through tiny drops of water in the air.

 ベルタ・M・パーカーは子どもたちに頭ごなしに虹の色を7色と教えるのは望ましいことではなく、実際にプリズムで光を分散させて 藍 が見分けにくいことを確認させ、体験をもって虹の色は6色と教えるように提案しました。

 この提案はアメリカの理科教育で受け入れられ、1941年以降は、虹は6色であると説明された教科書が多数出版されるようになりました。やがて、虹は7色であるというニュートンの研究に基づく教育に終止符が打たれました。

世界各国の虹の色の数のまとめ

 その他、世界各国での虹の色の数を調べてみましたが、何色と断定するのが難しい国もあって、画一的に表にまとめるのは難しそうです。あえて、まとめてみたら、下記のような感じになりました。
      
7色 日本・オランダ・イタリア・韓国
6色 アメリカ・イギリス
5色 ドイツ・フランス・中国・メキシコ
4色 ロシア・インドネシア

 WordReference.comのLanguage Forumsでは、虹の色を尋ねる質問rainbow: number of colours/colorsがあり、いろいろな国の人が答えています。ロシアでは7色だという人もいて、上記の表とは食い違いがあります。また、各国のamazonのサイトで虹の塗り絵を探してみると、やはり食い違いがあます。

 どこかの国の虹の色は何色かは現地の人に聞けばわかると思いますが、なかなか調べるのは難しいです。しかし、Googleの検索で手がかりを見つけることができるかもしれません。あ

  1. Wikipediaで国名を検索して、その現地語での国名を調べます。
  2. 現地語の国名+rainbowで画像検索する
  3. 現地語のrainbowがわかれば、現地語の国名+現地語のrainbowで画像検索してみる

 YouTubeでRainbow Songで検索すると、子ども向けの虹の色の歌がたくさん見つかりますが、7色だったり、6色だったりします。

 次の歌はRED、ORANGE、YELLOW、GREEN、BLIE、PURPLEの6色と歌っています。

I Can Sing a Rainbow | The Kiboomers

 次の映像では7色と歌っていますが、RED、ORANGE、YELLOW、GREEN、BLUE、PURPLE、PINKと歌っています。

Rainbow Colors Song | The Singing Walrus

 次の映像ではRED、ORANGE、YELLOW、GREEN、BLUE、INDIGO、VIOLETの7色と歌っています。

Rainbow Song | Nursery Rhyme

 そもそも、虹が何色に見えるかは、その人の感性にもよるので、日本のように頭ごなしに教育されていない限りは、答えが多岐にわたるのは当たり前のことでしょう。

 虹の色の数はいくつあるのかは科学的な問題のように思えるかもしれまえんが、実は極めて人間的で、社会的なものと言えるでしょう。

虹の色の覚え方

そもそも体験的な知識ではない7色を覚えなければならないので、虹の色を丸暗記する方法が考えられたのだと思いますが、虹の7色は日本語と英語では次のように覚えることが多いようです。

 日本せき(赤)・とう(橙)・おう(黄)・りょく(緑)・せい(青)・らん(藍)・し(紫)で「せきとうおうりょくせいらんし」
 英語Red(赤)・orange(橙)・yellow(黄)・green(緑)・Blue(青)・indigo(藍)・violet(紫)の頭文字を取り、 Roy G Biv(ロイ・ジー・ビヴ)

 次の映像では虹の色はIndigoを除いてRoy G BVではないか?紫は見えるか?シアン(CYAN)が見えるのでRoy G CBではないかなどと言いながら虹の色について説明しています。虹の中にPURPLEやVIOLETが見えることについて、この映像は非常に重要な指摘をしています。設定のギアアイコンから英語字幕を表示させて、自動翻訳にすると日本語字幕が表示されます。

This is Not a Rainbow

虹の色の数は文化的問題

 万国共通の自然現象の虹を見ているのにも関わらず、虹の色の数は世界各国、そして人によって様々で異なります。その背景には、色彩に対する言語学的な受け止め方の違いがあるでしょう。たとえば、ある国の虹の色の数が少ないからといって、その国の人々の色彩に対する感性が劣っていたり、知識が不足していたりするようなことはないでしょうす。

 虹の色が何色に見えるのかは、もはや科学の問題ではなく、文化の問題です。何色に見えているのかではなく、何色と見ようとしているのかなのです。

 ですから、子どもが描いた虹が7色でなくても、大きな問題ではありません。むしろ、虹は7色という先入観なしに、どのように見えているのかをありのままに描いているのです。虹は7色だと指摘することはナンセンスと言えるでしょう。

虹を8色と見分けるアフリカのアル部族

 これもインターネットでよく見かける情報ですが、アフリカのアル部族の人たちは虹を8色と捉えているそうです。虹は7色という頭ごなしの知識をもっていたわけではないと思いますので、本当に虹の色を8色見分けることができている、あるいはできていたのではないでしょうか。もしそうだとすると、この件だけは科学的な探究が必要かもしれません。

 ヒトは眼の網膜上に存在する赤・緑・青の3色の光にそれぞれ反応する3種類の錐体細胞で色を見分けていますが、まれに4色で色を見分けることができる人もいるそうです。

 ある種の鳥類や魚類はヒトよりも色をたくさん見分けることができ、鮮やかな色の世界を見ていることがわかっています。昆虫には、紫外線の領域の光が見えているものもいます。

 虹を7色と見分けることすら難しいのに、アル部族の人たちが虹を8色と認識することができるとするならば、我々とは異なる色覚の能力を有している、あるいは有していた可能性もありそうです。

 また、空にかかる虹は、大気の状況によって、色が明瞭に見えないことがあります。大気が澄んでいると、虹の色の連続的な変化がより明瞭に見えるのかもしれません。

世界各国の虹の色の数-虹ができる仕組み⑦

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2020年7月10日金曜日

虹の色の数と日本の文化-虹ができる仕組み⑥

日本人は虹を何色(なんしょく)と認識していたのか 

 現代の多くの日本人は虹の色を7色と認識しています。しかしながら、日本人が遥か遠い昔から実際に虹を見て体験から7色と認識してきたわけではありません。

 もともと、日本人は色を多数見分けることはしておらず、日本神話にも赤・白・青・黒の4色しか出てきません。もちろん、当時の日本人も多数の色を見ていたに違いありませんが、この4色を基本の色と認識していたのでしょう。そして、異文化交流や科学の発展を背景として、時代とともに、さまざまな色を認識するようになっていったのです。

 江戸時代の浮世絵には虹が描かれたものがありますが、それらに描かれている虹の色は数色で7色はありません。下の浮世絵は歌川広重の1856年の作品に描かれた虹です。ほとんど色がついていないように見えます。


歌川広重 六十余州名所図会 対馬 海岸夕晴(1856年)
出典:The Met - Tsushima Kaigan Yubare

 この浮世絵の虹の部分を拡大して、画像の明るさを調整してみました。外側に赤色、内側に青色を確認できます。赤と青の間の色は上図と合わせて考えると白っぽい黄色のように見えます。

 Googleで「浮世絵 虹」で画像検索すると、他にも虹が描かれた浮世絵を見つけることができますが、どれも虹の色は3色程度で、7色に描かれたものは見つかりません(検索結果では浮世絵に塗り絵をして7色としたものも出てくるので注意してください)。

 江戸時代の人たちは美しい虹そのものには興味があったようですが、虹が色の数までには関心がなかったようです。

 1710年に鷹見爽鳩(児島正長)が著した 『秉燭或問珍( へいしょくわくもんちん )』には「太陽のもとでに水を吹くと、紅緑の色をなす」とあります。ここから、太陽のもとで水を吹くと虹ができるということは知られていたこと、虹の色は紅緑の2色と言っても大きな問題ではなかったことが伺えます。

 なお、筆者は古文を読めないので意訳です。詳細は下記のPDFの21ページ左側の虹之説を参照してください。22ページに「太陽」「水を吹く」「紅緑の色」を含む一文があります。

貴重和本デジタルライブラリー(愛知県図書館)
秉燭或問珍( へいしょくわくもんちん )  PDF 21ページの左側 虹之説

 江戸時代後期の絵師・蘭学者の司馬江漢が1796年に著した『和蘭天説(わらんてんせつ)』には「人ヲシテ日西ニアラバ 東ニ向テ水ヲ噴シムレバ、 即チ虹ノ象ヲナス。 黄色・紅色・緑色・紫色・ 青色ナリ」とあり、虹の色として黄色・紅色・緑色・紫色・青色の5色をあげています。また、同著者の1808年の『刻白爾天文図解(こっぺるてんもんずかい)』には「水ヲ噴テ虹ノ象チヲ見ル 日向映ジテ五彩ヲナス」とあります。

日本人はなぜ虹の色を7色と捉えているのか

 以上のように日本では、虹は7色ではなく、多くても5色と考えられていたのです。どうして現代の私たちは虹の色は7色と捉えているのでしょうか。

 もう一度、「虹の色の数は何色(なんしょく)か?-虹ができる仕組み⑤」を見てみましょう。先入観がなければ5色としても問題なさそうですし、頑張ってもせいぜい6色にしか見えません。ニュートンが加えたオレンジの橙色は見分けることができますが、青と紫の間に加えたインディゴの藍色は見分けるのが困難です。ここに藍色を入れること自体にかなり無理があるように思います。

 実はニュートン自身も藍色を入れるのには無理があることを理解していたと思われますが、虹の色の数をどうしても7色にしたかったこと、音にも半音階があるのだから、見分けにくい藍色を加えても差し支えないと考えたいたようです。

 虹の色を多くてもせいぜい5色と捉えていた日本人が7色と捉えるようになったのは、ニュートンの虹の研究に由来する学校教育によるものと考えられています。

 江戸時代に日本の蘭学者の青池林宗が1827年に著した日本初の物理学書『気海観瀾』では、虹の色は「赤・深黄・淡黄・緑・石青・紫・紺の7色と記されています。紫・紺の並びが逆ですが、その後の学術書でも、薄紫・濃紫などいう記述もあり、インディゴの色をうまく見分けることができず、どう日本語で表現するか難儀していたことが想像できます。

 現代に生きる私たち日本人が虹の色を7色と考えるのは教育による先入観からのものであり、文化的な背景、言語学的な背景、自然体験的な背景とするものではないようです。

 虹の色が何色(なんしょく)か?を改めて考えてみるのはとても面白いことです。次回は世界の人たちの虹の色について説明します。

虹の色の数と日本の文化-虹ができる仕組み⑥

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2020年7月6日月曜日

ニュートンはなぜ虹の色を7色と決めたのか-虹ができる仕組み⑤

虹の色の数? 虹は連続的に色が変化している

 虹の色をよく観察すると、虹は赤色から紫色まで連続的に変化している無数の色でできていることがわかります。これは虹ができる原理と辻褄が合っています。ですから、虹の色が何色(なんしょく)かという問題には、科学的な解答はないと言えるでしょう。しかしながら、虹を見ていると、虹の中にどのような色が見えるか、つい色を数えたくなってしまいます。


虹の色の帯

ニュートンが虹の色の数を7色と決めた

 ニュートンは1666年に行ったプリズムによる太陽光の分散の実験の結果から、赤色から紫色に連続的に変化する光の色の帯のことをスペクトルと名付けました。ニュートンはこの実験について、1672年に王位教会宛に「New Theory About Light and Colour(光と色の関する新理論)」と題した書簡を送っています(光と色と:ニュートンのプリズム分光実験が1666年である根拠)。

 この書簡の中で、ニュートンはプリズムでできた光の色の帯の中には、赤や黄や緑などの顕著な色と中間的な色が存在すると述べています。そして、色には原色と複数の原色から成る複合色の2種類が存在すると結論づけています。

 当時、虹やプリズムでできる光の色の帯は「 赤  緑  青 」の3色もしくは 「 赤  黄  緑  青  紫 」と5色から成ると捉えられていました。ニュートンも光の色の帯は連続的に変化する無数の色からなることを理解していましたが、色には原色と複合色があると考え、原色には前述の5色の 赤  黄 の間に植物のオレンジの色である 橙  青  紫 の間に植物染料インディゴの色である 藍 を加えて7色としました。

光と色と:ニュートンのプリズム分光実験が1666年である根拠
5. There are therefore two sorts of colours: the one original and simple, the other compounded of these. The original or primary colours are red, yellow, green, blue, and a violet-purple, together with orange, indigo, and an indefinite variety of intermediate graduations.
太陽光をプリズムで分散してできた光の色の帯は単色光から成りますが、ニュートンは顕著に見える色を原色、その中間の色を複合色としました。ニュートンは一連の実験の結果から、特定の色の光を2色混ぜ合わせると別の色の光ができることを報告しています。中間色を複合色とした背景には、この実験の結果の考察が関係していると思われます。


プリズムによる太陽光の分散

 下記は虹の写真の明るさとコントラストを調整した画像です。7色確認できるでしょうか。この写真では、5色は確実に視認できますが、橙と赤は区別できるものの、青と藍の違いがわかりにくく、全部で6色のようにも見えます。虹の中に見える藍色は青色光と紫色光の間の光の色で450-485 nmの可視光線になります。中心波長は約470 nmです。一方、ニュートンが採用したインディゴの藍色の反射スペクトルを調べると極大波長は420 nmです。これは紫色光の範囲380-450 nmの波長です。

ニュートンが虹の色の数を7色とした理由

 ニュートンはなぜ虹の色を5色ではなく7色としたのでしょうか。それは、当時7が神聖な数字と考えられていたことと関係があるようです。

 創世記において、神はこの世を6日間で創造し、7日目に休息し、その日を聖なる日と定めました。このことから7は完全な数字と考えられるようになりました。そして、6は7に1つ足りないことから不完全な数字と考えられました。その他、聖書にはたくさんの7が出てきます。神学者でもあったニュートンにとっては、6は選びにくい数字だったのかもしれません。

 また、ニュートンは神学者として聖書の研究をしていますが、ソロモン王が築いたエルサレム宮殿の原型であるソロモン宮殿に黄金比などの幾何学的な構造があることに興味を示し、その調和に神学的な意味を見い出そうとしています。

 古代ギリシャの数学者・哲学者ピタゴラスを祖とするピタゴラス教団(ピタゴラス学派)の哲学者たちは、万物の根源は数であると唱えました。そして、天文学や音楽に法則性を見い出し、世界や宇宙の法則を考えるようになりました。


日の出を祝うピタゴラス(1869, Fyodor Bronnikov)

 例えば、音楽では、一本の弦を奏でたときの音階の規則性に気がつきました。ドの音が鳴る弦の1/2のところを押さえて弾くと1オクターブ高いドの音が鳴り、2/3のところを押さえて弾くと5度の音(ソ)が鳴り、3/4のところを押さえて弾くと4度の音(ファ)が鳴ります。弦がドからシまでの美しい音を奏でるのは、数の比に関係しているに違いないと考えたのです。


弦の長さとハ長調の音階

 ピタゴラス教団は、この世界は数の比によって秩序づけられており、美しく調和していると考えました。そして、この美しい調和が世界や宇宙の法則であるとし、数の比でもたらされものと考え、この世のものはすべて数に置き換えることができるとして、「万物の根源は数である」と結論づけました。

 神学者であり、数学者でもあったニュートンは神学的な意味合いに加えて、こうした数字の比や調和を重視していたに違いありません。ニュートは、美しい虹は調和をもたらす数の比から成るはずだと考えたのではないでしょうか。そして、音階が7音から成ると同様に、虹は7色から成るとして、美しい虹に完全な数字を当てはめることにしたのでしょう。

 ニュートンは完全主義者であったとも伝えられます。そのことは、1666年に手掛けた研究を1704年の論文にまとめるまでに実に38年もの歳月をかけていることからもわかります。

虹の色の数は何色(なんしょく)か?-虹ができる仕組み⑤

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2020年7月3日金曜日

虹の形が円弧の理由と虹に近づけない理由ー虹ができる仕組み④

虹はどうして円弧に見えるのか

 私たち良く見る虹の形は次の写真のように地平線や水平線から立ち昇るアーチのような形をしています。虹がどうして円弧になるのか考えてみましょう。


虹のアーチ

 次の図は、主虹の赤色光の進み方を示したものです。虹の見ている人から見える赤色の帯は42度の角POQのコンパスで描かれる半円形になります。他の色についても、それぞれの角度で同様に半円形になります。このように、虹が円弧に見えるのは、虹の色が決まった方向から見えるからです。また、高い山頂や航空機から虹を見たときは、目線の下にある水滴からでてくる光も眼に届くため、虹は円形となります。 


主虹の赤色光が見える方向

虹を追いかけても近づけない理由

 次に、虹を追いかけても近づくことができない理由を考えてみましょう。虹をつくる水滴は空気中に無数に漂っています。そのため、次の図のように、人間が歩いたり、走ったりする速さで虹が見える方向に近づいても、この水滴の層から容易に抜けだすことはできないため虹が見え続けることになります。また、水滴の層は上下左右に広がっていますから、観測者が虹から遠ざかる方へ移動しても、上下に移動しても、虹は見え続けます。このため、虹を追いかけても近づけないのです。 


虹を追いかけても近づけない

 次の写真は、珍百景にも登録できそうな、虹に近づけるところまで近づいて撮影したという、いへん珍しい写真です。山の手前の林の中へと入り込む虹の足がしっかり見えます。


虹に近づいたら虹の足が見えた
Wisdom96 Blog 日常を正方形に切り取る
虹の仕組みはもっと複雑だった

 さて、デカルトとニュートンによって虹ができるしくみが完全に解明されたかというと実はそうではありませんでした。彼らが考えた虹のモデルでは、水滴の大きさや形状については考慮されていませんでした。水滴が歪めば光の進み方も異なります。

 実際の虹は、プリズムでできるスペクトルのように鮮明ではなく、細かい霧状の水滴で光が散乱することによって生じる全体が白く見える白虹が現れたり、主虹の内側や副虹の外側に過剰虹という虹が繰り返すような光の筋が現れたりすることがあります。

 これらの現象は、光線追跡だけでは説明できず、光の波の性質を考慮する必要があります。のちに光の波の性質を研究したトマス・ヤングやジョージ・ビドル・エアリーなどがこの現象に興味をもち、彼らの虹の不思議な現象への探求が光の波の理論を導きだすきっかけになったのです。

Supernumerary arcs of rainbows: Young’s theory of interference
PHILIP LAVEN, Applied Optics, 56, 19, G104-G111 (1 July 2017)
http://www.philiplaven.com/Publications/AO-56-19-G104a.pdf

虹の形が円弧の理由ー虹ができる仕組み④

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2020年7月1日水曜日

大空にかかるスペクトル-虹ができる仕組み③

虹は二重にかかる

 虹のできる基本的なしくみを解明したのは「虹の色はどこから?ー虹ができる仕組み②」で説明した通り、デカルトとニュートンです。デカルトは水滴中の光の進み方を解明し、ニュートンは虹の色が生じる理由を突き止めました。

 雨が降ったあとの空には、無数の水滴が浮遊しています。これらの水滴が太陽光を分散して大空に虹を作ります。虹というと、次の写真のように空に1本の虹がかかった風景を思い浮かべる人が多いのではないかと思います。


大空にかかる虹の架け橋

 ところが、虹をよく観察してみると、明るい虹の上側にもう一本の暗い虹がかかっていることがわかります。下の写真は上の写真のコントラストと明るさを調整したものです。少しわかりにくいかもしれませんが、矢印の先にもう一本の虹がかかっていることがわかると思います。上の写真もよく見ると、暗い虹が見えると思います。


明るい虹の上に暗い虹が見える

 次の映像は2011年7月に大阪市内の上空で観測された二重の虹の映像です。明るい虹の外周に暗い虹がかかっていることがわかります。

 このように虹は下側の明るい虹と上側の暗い虹が一対になって現れますが、暗い虹は視認しずらい場合が多々あります。なお、下側の明るい虹を主虹、上側の暗い虹を副虹といいます。主虹と副虹では色の並び方が逆になっています。主虹は外側から赤〜紫に変化していますが、副虹は内側から赤〜紫に変化しています。

 虹の神話ー虹ができる仕組み①でも説明した通り、虹は主虹と副虹が一対になって現れることが古くから知られていました。虹ができたときには、副虹が見えていないかどうか確認してみましょう。

虹ができる仕組み

 空気中に浮遊している水滴に太陽光が当たると、光は水滴の表面で屈折して水滴の中に入ります。その光は、水滴の内側で反射し、再び水滴の表面で屈折して外へ出てきます。この過程で光の分散が起こります。そのため、虹が見えるのは太陽と反対側の空に見えます。このとき、次の図のように、水滴の上側から入った光は主虹を作り、下側から入った光は副虹を作ります。


水滴中の光の進み方 主虹(左)と副虹(右)

 主虹は、水滴の中で光は1回だけ反射しますが、副虹は2回反射します。副虹が主虹より暗いのは水滴中の反射回数が多いからです。理論的には水滴の中で3回以上反射する光線もありますが、反射回数が多くなると光が弱くなるため、それらの虹は視認できません。

 なお、強風が吹いていて水滴の形が歪んでいる場合、無数の水滴から光があらゆる方向に反射したり、出てきたりして、光が散乱してしまうため虹はできません。

 水滴から外へ出てくる光は、次の図のように、光の色ごとに特定の角度で明るくなります。主虹では、赤色の光は約42度、紫色の光は約40度で明るくなります。副虹では、赤色の光は約51度、紫色の光は約53度で明るくなります。


主虹と副虹が見える角度

 水中の光速が波長によって異なるため分散が起こるのですが、波長ごとの水中の屈折率は下記の通りです。

波長(nm)屈折率(水中)光速(m/s)
3001.349222,233,105
3251.346222,728,423
3501.343223,225,955
3751.341223,558,880
4001.339223,892,799
4251.338224,060,133
4501.337224,227,717
4751.336224,395,552
5001.335224,563,639
5251.334224,731,978
5501.333224,900,569
5751.333224,900,569
6001.332225,069,413
6251.332225,069,413
6501.331225,238,511
6751.331225,238,511
7001.331225,238,511
7251.33225,407,863
7501.33225,407,863
7751.33225,407,863
8001.329225,577,470

 主虹と副虹の間の空は、主虹の下側や、副虹の上側に比べて暗く見えます。この部分をアレキサンダーの暗帯といいます。

 アレキサンダー暗帯は、古代ギリシアの哲学者アフロディシアスのアレクサンドロスの名前に因んで名付けられました。アフロディシアスのアレクサンドロスはアリストテレスの著書の註解者として有名です。アリストテレスの気象学について解説した下記の著書で、主虹と副虹の間が暗くなることについて言及しています。
Alexander of Aphrodisias, Commentary on Book IV of Aristotle's Meteorology 

 次の写真は主虹と副虹が見えている虹の写真をトリミングしたものです。アレキサンダーの暗帯の領域の空が暗く見えていることがわかります。


アレキサンダー暗帯

 主虹の内側と副虹の外側の領域は水滴からの光が届くため本来の空の色よりも明るく見えています。一方、主虹の外側と副虹の内側のアレキサンダーの暗帯の領域は、水滴からの光が届かないため、本来の空の色が見えて相対的に暗く見えます。「暗帯」では元の空の色が見えているのですから、主虹の内側と副虹の外側の領域を「明帯」と呼んだ方が的を射ているかもしれません。

大空にかかるスペクトル-虹ができる仕組み③

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2020年6月29日月曜日

虹の色はどこから?ー虹ができる仕組み②

虹の探究のはじまり

 雨上がりの空になぜ虹がかかるのか。古代より多くの学者たちが、その解明に取り組みました。

 古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、著作「気象論」において、虹は大気中に浮遊した水滴が鏡のように光を反射するため生じると説明しています。そして、色は光と闇の間に生じ、白と黒の混合によって様々な色を作ることができると考えたようです。アリストテレスの説明は誤っていますが、虹が出来る仕組みについて神学的、宗教的な捉え方を排除し、探究を行いました。

 虹について世界で初めて科学的な手法で探究を行ったのはフランスの物理学者ルネ・デカルトです。デカルトは1637年に発表した「方法序説」において、虹は光が雨上がりの空に浮遊する水滴で屈折・反射することで生じると記しています。

【方法序説】
デカルトが1637年に発表した方法序説の正式名称は「 理性を正しく導き、科学の真理を探究するための方法の談話(方法序説)。加えて、その方法の試みである屈折光学、気象学、幾何学。(Discours de la méthode pour bien conduire sa raison, et chercher la vérité dans les sciences. Plus la Dioptrique, les Météores et la Géométrie, qui sont des essais de cette méthode.)」です。デカルトは500ページ以上の著作を発表していますが、現在は最初の78ページまでの序文を方法序説と呼んでいます。光の屈折や虹の仕組については「屈折光学」「気象学」に記載されています。有名なデカルトの虹の絵はp251に掲載されています。
フランス国立図書館所蔵の当時の方法序説全文
Descartes, René (1637). Discours de la méthode pour bien conduire sa raison et chercher la vérité dans les sciences, plus la dioptrique, les météores et la géométrie


デカルトの虹の絵(方法序説・気象学)

 デカルトは水滴中の光の道筋を理論的に計算し、虹が見える角度を正確に求めました。そして、水を満たしたガラスびんに光を通して、光の道筋を調べて検証しています。しかし、虹の色が生じる理由を正しく説明するまでには至りませんでした。

虹の色はどうして生じるのか

 古代ギリシャの時代から、光は透過する物質によって性質が変化し、様々な色を呈するというアリストテレスの光の変改説が信じられていました。17世紀ぐらいまでは、多くの学者は、プリズムで光の色の帯が生じたり、空に虹ができたりする仕組みは光の変改説で説明できると考えていました。

 1666年、イギリスの物理学者アイザック・ニュートンは、無色の太陽光をプリズムに通すと、赤から紫まで連続的に変化する光の色の帯が現れる現象を観察する実験を行い、光の色の帯のことをスペクトルと名づけました。この現象を光の分散といいます。前述の通り、この現象そのものは当時既に知られており、ニュートンによって新たに発見されたものではありませんが、ニュートンは色がどうして生じるのかについて研究を進めました。

 そして、ニュートンは、一連の実験で、プリズムで作ったスペクトルをレンズともう1つのプリズムで集めると、太陽光と同じ無色の光にもどることや、光の色の帯から任意の2色の光を取りだして混合すると、別の色が現れることを発見しました。


1704年頃のニュートン(左上) Opticks(左下) ニュートンのプリズム実験(右)

 ニュートンは1704年に著した『Opticks 和名:光学』のPART II. PROP. I. Theor. I. においてアリストテレスの変改説を否定しています。ニュートンは、太陽光は様々な色の光が混合したものであることを緻密な実験で確かめ、虹の色は太陽光に由来することを突き止めたのです。

虹の色はどこから?ー虹ができる仕組み②

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2020年6月24日水曜日

虹の神話ー虹ができる仕組み①

古代の人々にとっての虹

 雨上がりの空にかかる虹はとても綺麗です。虹は自然が作り出す大空のキャンパスに描かれた光と色の芸術と言えるでしょう。古代の人々はあの美しい虹を見て、どのように捉えていたのでしょうか。

 この地球に現在の人類の祖先が登場したのは今から20万年以上も前のことです。もちろん、そのはるか昔から、様々な自然現象は発生していました。

 原始の人々は本能的に五感を駆使し、身を持って自然を感じていたでしょう。彼らが感じることができた自然のさまざまな変化は、彼らの生活に潤いを与えたり、大きなダメージを与えたり、時としてその命すら奪うこともあったでしょう。

 原始の人々にとって、自然は畏れ多いものであり、その存在や変化は神の恵み・神の怒り・神聖なもの・邪悪なものとして捉えてたに違いありません。それから長い歳月を経て、世界各地でいろいろな文明が発祥しますが、原始の人々の思いは継承されていくのです。

 古代の人々にとって、この世界がどのように生まれ、身の回りのものが何からできているのかという疑問に対する答えは、神々の存在だったに違いありません。そして、非日常的な自然現象は、神々がもたすものと捉えていたに違いありません。

 雨上がりに大空にかかる虹はどの地域の人々にとっても象徴的な自然現象だったに違いありません。

古代中国における虹 

 古代中国では、虹は龍に変化する大蛇が天と地を結ぶときに現れると考えられていました。虹という漢字は「蛇」を意味する虫の偏(へん)に、「貫く」「天と地を結ぶ」を意味する工の旁(つくり)からなります。

 虹は、明るく見える主虹と、やや暗く見える副虹ができますが、主虹を「虹」、副虹を「霓」または「蜺」とし、合わせて「虹霓(こうげい)」または「虹蜺(こうげい)」と呼びました。


主虹(下側)と副虹(上側)

 そして、虹霓の「虹」は雄の龍で、「霓」「蜺」は雌の龍と考え、虹は雄雌一対の龍が現れたものと考えられていたようです。

 古代中国では、一般に虹は戦乱や災害などが起きる前兆など不吉のなものと捉えられていました。一方で、龍は吉兆の象徴であることから、虹も良いことが起きる前兆と捉えられる場合もありました。

古代ギリシア神話における虹

 古代ギリシア神話にイーリス(Ἶρις、英語ではアイリス)という虹の女神がいます。ギリシア語の「Ἶρις」は虹を意味します。

 イーリスは天地を瞬く間に結ぶ虹であり、遠くの場所に一瞬で移動することができました。そのため、ギリシア神話の最高位の女神ヘーラーの腹心として伝令の使いの役割を担っていました。


アントニオ・パロミノ『空気の寓意:ヘーラーとイーリス』(1700年)

 また、ギリシア神話の最高位の全知全能の神であるゼウスは、神々同士に争いが生じたときなどに、イーリスを冥界に遣わし、誓約の証として神々を支配することができるステュクスの水を汲みにいかせました。神々はステュクスの水を飲んで誓言しますが、誓言を守らなければ1年間仮死状態に陥り、その後9年間はオリュンポスから追放されてしまいます。罪が許させるまで10年を要したそうです。

古代日本における虹

 古代日本では、日本神話の国生みに虹がでてきます。天地開闢(てんちかいびゃく)すると、高天原(たかまがはら)に5柱の別天津神(ことあまつかみ)、12柱の神世七代(かみのよななよ)の神々が現れ、最後にイザナギとイザナミが生まれました。

 神々が高天原から下界を見下ろすと、できたばかりの下界は混沌と漂っていました。別天津神はイザナギとイザナミに天沼矛(あめのぬぼこ)を与え、下界を秩序あるものとし、国造りをするように命じました。イザナギとイザナミは、高天原から地上へとつながる天浮橋(あまのうきはし)の上に立って、天沼矛で下界をかきまぜました。このとき、天沼矛から滴り落ちたものが積もり積もって、淤能碁呂島(おのごろじま)となりました。この淤能碁呂島を足掛かりに、イザナギとイザナミは国生みと進めていきました。


小林永濯『天之瓊矛を以て滄海を探るの図』
二神が天沼矛で地上の渾沌を掻き回して大八島(日本の島々)を生み出そうとしている。

 さて、この話の中に出てくる高天原から地上へとつながる天浮橋が虹であったという説があります。古事記などには天浮橋が虹の橋であるという言及はありませんが、古代の人々にとって天と地をつなぐ橋と言えば虹のことであり、日本以外の神話にも虹の橋がよく出てきていることなどが、この説を肯定する理由となっているようです。もちろん、天浮橋は虹ではないという説もあります。

 また、7世紀の後半から8世紀後半にかけて編纂された「万葉集」に虹について読んだ和歌が一首あります。

 第十四巻三四一四
【原文】伊香保呂能 夜左可能為提尓 多都努自能 安良波路萬代母 佐祢乎佐祢弖婆
【訓読】伊香保ろのやさかのゐでに立つ虹の現はろまでもさ寝をさ寝てば
【かな】いかほろの やさかのゐでに たつのじの あらはろまでも さねをさねてば
【詠人】不明

 この和歌は「伊香保の八尺の土手の上に高々と立つ美しい虹のように、私たちも人目をおそれず共寝することができたらどんなにいいことでしょうか」という意味で、許されない恋をしている女性が男性に対する愛を虹にたとえたものだそうです。

創世記における虹

 聖書の創世記9章のノアの方舟の話の中に虹が出てきます。ノアの大洪水の後、神は再びこの地に大洪水を起こして地を滅ぼすようなことはしないという契約の印として、虹を雲の中に立てたとあります。
  
神はノアとその子らとを祝福して彼らに言われた
「生めよ、ふえよ、地に満ちよ。地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのもの、海のすべての魚は恐れおののいて、あなたがたの支配に服し、すべて生きて動くものはあなたがたの食物となるであろう。さきに青草をあなたがたに与えたように、わたしはこれらのものを皆あなたがたに与える。しかし肉を、その命である血のままで、食べてはならない。あなたがたの命の血を流すものには、わたしは必ず報復するであろう。いかなる獣にも報復する。兄弟である人にも、わたしは人の命のために、報復するであろう。 人の血を流すものは、人に血を流される、神が自分のかたちに人を造られたゆえに。 あなたがたは、生めよ、ふえよ、地に群がり、地の上にふえよ」

 神はノアおよび共にいる子らに言われた
「わたしはあなたがた及びあなたがたの後の子孫と契約を立てる。 またあなたがたと共にいるすべての生き物、あなたがたと共にいる鳥、家畜、地のすべての獣、すなわち、すべて箱舟から出たものは、地のすべての獣にいたるまで、わたしはそれと契約を立てよう。わたしがあなたがたと立てるこの契約により、すべて肉なる者は、もはや洪水によって滅ぼされることはなく、また地を滅ぼす洪水は、再び起らないであろう」

さらに神は言われた
「これはわたしと、あなたがた及びあなたがたと共にいるすべての生き物との間に代々かぎりなく、わたしが立てる契約のしるしである。すなわち、わたしは雲の中に虹を置く。これがわたしと地との間の契約のしるしとなる。 わたしが雲を地の上に起すとき、虹は雲の中に現れる。こうして、わたしは、わたしとあなたがた、及びすべて肉なるあらゆる生き物との間に立てた契約を思いおこすゆえ、水はふたたび、すべて肉なる者を滅ぼす洪水とはならない。虹が雲の中に現れるとき、わたしはこれを見て、神が地上にあるすべて肉なるあらゆる生き物との間に立てた永遠の契約を思いおこすであろう」

そして神はノアに言われた
「これがわたしと地にあるすべて肉なるものとの間に、わたしが立てた契約のしるしである」。

 創世記では、虹は人類をはじめとする生物の発展をもたらした神との契約の印であり、神聖なものと考えられています。 


ドメニコ・モレッリ『方舟を出た後のノアによる感謝の祈り』
1910年までに描かれた作品。主虹と副虹が正しく描かれている

 虹は英語ではRainbowですが、これはRain(雨)とbow(弓)が組み合わさった複合語です。確かに虹は弓の形をしています。バラモン教やヒンドゥー教の神で雷神のインドラが雷の矢を放つのに使った弓が虹とされ、サンスクリット語では、虹のことを「インドラの弓(indradhanus)」といいます。また、虹を橋や道として捉える文化も多く、北欧では日本神話の天浮橋と同様に、虹は天上の神の世界に通じる橋と考えられていました。

 このように虹は様々なものに捉えられていましたが、古代の人々にとっては神々がもたらしたものであり、吉であれ、凶であれ、畏れ多いものだったに違いありません。

 虹の現象について神話的を排除し、科学的に真理を追求するようになったのは、紀元前6世紀以降の古代ギリシアの自然哲学者が現れてからです。

虹の神話ー虹ができる仕組み①

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