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2020年8月7日金曜日

太陽神 天照大御神と天岩戸(天の磐戸)の伝説①

国生みと神生み

 天地開闢(てんちかいびゃく)により、神々の世界・高天原(たかまがはら)に最初に5柱の別天津神(ことあまつかみ)の神々がそれぞれ独立した神として現れ、すぐに身を隠しました。

  1. 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ) 
  2. 高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
  3. 神産巣日神(かみむすひのかみ)
  4. 宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
  5. 天之常立神(あめのとこたちのかみ)

 続いて、12柱の神世七代(かみのよななよ)の神々が現れ、最後に伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)が生まれました。

  1. 国之常立神(くにのとこたちのかみ)
  2. 豊雲野神(とよぐもぬのかみ)
  3. 宇比地邇神(うひぢにのかみ)・須比智邇神(すひぢにのかみ)
  4. 角杙神(つぬぐいのかみ)・活杙神(いくぐいのかみ)
  5. 意富斗能地神(おおとのぢのかみ)・大斗乃弁神(おおとのべのかみ)
  6. 淤母陀琉神(おもだるのかみ)・阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)
  7. 伊邪那岐神(いざなぎのかみ)・伊邪那美神(いざなみのかみ)


国宝。賢瑜による古事記の写本(真福寺収蔵)

 神々が高天原から下界を見下ろすと、開闢して間もない下界は混沌と漂っていました。別天津神はイザナギとイザナミに天沼矛(あめのぬぼこ)を与え、下界を秩序あるものとし、国造りをするよう命じました。

 イザナギとイザナミは、高天原から地上へとつながる天浮橋(あまのうきはし)の上から、天沼矛で下界をかきまぜました。このとき、天沼矛から滴り落ちたものが淤能碁呂島(おのごろじま)となりました。イザナギとイザナミは、この淤能碁呂島を足掛かりに、国生みを行い、後に神生みを進めました。国生みでは大八島(おおやしま)、すなわち日本列島を構成する島々が生み出されました。


小林永濯『天之瓊矛を以て滄海を探るの図』
二神が天沼矛で地上の渾沌を掻き回して大八島(日本の島々)を生み出す。

 神生みでは、様々な神々が生まれましたが、やがてイザナミは火の神を産んだことがきっかで死んでしまいます。イザナギはイザナミに逢うため死者の世界である黄泉国(よみにくに)を訪れましたが、そこでイザナミとの約束を破ったことによってイザナミの怒りを買い、黄泉国から逃げ帰りました。

 イザナギが黄泉の穢れ(けがれ)を落とすため筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原(つくしのひむかのたちばなのおどのあはぎはら)で禊(みそぎ)を行ったときに、様々な神が生まれました。最後に生まれたのが三貴子(みはしらのうずのみこ、さんきし)と言われる天照大御神(アマテラスオオミカミ)、月読命(ツクヨミ、ツキヨミ)、須佐之男命(スサノオ)でした。

天岩戸(天の磐戸)の伝説

 イザナギは、アマテラスには高天原を、ツクヨミには夜の食国(よるのおすくに)を、スサノオには海原を統治するよう命じました。スサノオはイザナギの命に反して、母神イザナミのいる国に赴きたいと願いますが、イザナギの怒りを買い追放されてしまいました。

 追放されたスサノオは母のいる国に向かう前に、アマテラスに挨拶をするため高天原を訪れようとしましたが、アマテラスはスサノオが高天原に戦争を仕掛けてきたと考え、武装して迎えました。スサノオは疑いを解くために誓約(うけひ)を行いました。

 誓約によって自らの潔白が証明されたスサノオは高天原に滞在することになりますが、やがて田の畦道を壊すなど数々の粗暴を繰り返します。当初、アマテラスはスサノオの粗暴を様子見し、他の神々から苦情があっても寛大な対応をしていました。

 あるとき、アマテラスが機屋(はたや)で衣を織っていたとき、スサノオが屋根に穴を開けて、皮を剥いだ馬を中に落とし入れました。これに驚愕した天服織女(あめのはたおりめ)が死んでしまいます。スサノオの粗暴に対し、アマテラスは見畏み(みかしこみ)、天岩戸(あまのいわと)の洞窟に隠れてしまいました。

 太陽神であるアマテラスが天岩戸に隠れると、神様の住んでいる高天原も人間が住んでいる葦原中国(あしはらのなかつくに)も漆黒の世界となり、食糧不足や病の流行など、さまざまな禍いが次々と発生しました。

 八百万の神々は天の安河原(あまのやすのかわら)に集まって相談し、知恵の神の思金神(おもいかねのかみ)が対応策を考えました。

 最初に長鳴鳥(ながなきどり)を熱めて鳴かせてみました。 長鳴鳥(ながなきどり)とは鶏のことです。鶏が早朝に鳴くと太陽が昇ってくることから、太陽神のアマテラスを呼び出そうとしました。しかしながら、天岩戸は閉じたままでした。

 伊斯許理度売命(イシトリドメノミコト)に八尺鏡(やたのかがみ)を作らせ、玉祖命(タマノヤノミコト)に八尺の勾玉(ヤサカノマガダマ)を作らせました。

 そして、天児屋命(あめのこやねのみこと)と布刀玉命(フトダマノミコト)が香山(あまのかぐやま)において雄鹿の骨で占いをし、そこで枝に八尺の勾玉と八尺鏡と木綿と麻をつるした賢木(さかき)を用意しました。

 天岩戸で布刀玉命が賢木を奉げ、天児屋命が祝詞(のりと)を唱え、天手力男神(アメノタヂカラオ)が岩戸の脇にこっそりと隠れました。

 続いて、天宇受賣命(あめのうずめのみこと)が天岩戸の前に桶を伏せて踏み鳴らし、招霊(おがたま)の木の枝を手に持って一心不乱の舞いを始めました。それを見た他の八百万の神々が大笑いしました。

 すると、天岩戸の中に隠れていたアマテラスは「太陽神の自分が隠れているので世界は真っ暗となり、皆が困っているのに違いないはずなのに、外では楽しそうに騒いでいる。これはいかがしたものか?」と、天岩戸の扉を少し開けて外の様子を覗きました。

 アメノウズメはアマテラスに「あなたより立派な神がおいでになりました」と説明し、天児屋命と布刀玉命が鏡でアマテラスの顔を写しました。鏡に映った自分を新しい神と勘違いしたアマテラスは、その顔をよく見てみようと岩戸から体を乗り出しました。その時、岩戸の脇に隠れていた天手力男神がアマテラスを岩戸の外へ引きずり出しました。 すると、アマテラスの光が再び世界を照らし、平和な世界に戻ったと言われます。

天岩戸神話の天照大御神(春斎年昌、1887年)

 大暴れしたスサノオは八百万の神々によって高天原から人間が暮らしている葦原中国(あしはらのなかつくに)追放されますが、その後は反省し、出雲國(いずものくに)に赴き、八俣大蛇(やまたのおろち)退治します。

 こちらの映像を見ると、天岩戸の伝説の大筋を理解できます。

【絵本】天岩戸(あまのいわと)【読み聞かせ】日本昔ばなし

太陽神 天照大御神と他の太陽神

 ところで、創世記では、最初に神が「光あれ」と言い、まず最初に光が作られました。古代エジプト神話でも後に太陽神ラーと習合する天地創造の神アトゥムが生まれています。

 ところが、日本神話の天地開闢では、アマテラスが生まれたのは、イザナギとイザナミが国生みと神生みを行った後です。

 アマテラスが登場するまで、はたして高天原も葦原中国も黄泉の国も漆黒の世界だったのでしょうか。

 また、天岩戸の伝説について考えると、アマテラスは絶対的な立場ではなく、他の太陽神の神話とはずいぶん違う印象を受けます。

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