スネルの法則(すねるのほうそく、Snell's law)
スネルの法則は、オランダの天文学者・数学者ヴィレブロルト・スネルが発見した光の屈折の法則で、光がある屈折率の媒質から異なる屈折率の媒質に入射するとき、媒質の境界面でどれぐらい屈折するのかを、入射角と屈折角と屈折率の関係から定量的に表したものです。スネルの法則は光のみではなく、一般の波の屈折においても成立します。
スネルが見いだした光の屈折の法則は次の図で示すように「入射角の正弦と屈折角の正弦の比は入射角の大きさによらず一定である」というものです。これは、入射光と垂線、屈折光と垂線がつくる2つの三角形の高さの比nが、常に一定となることを意味します。この図の例では、nは空気に対する水の相対屈折率です。また、θ1が入射角、θ2が屈折角になります。屈折率が大きくなると大きく折れ曲がるため屈折角が小さくなります。
上図のA/rは入射角θ1の正弦、B/rは屈折角θ2の正弦ですから、それぞれ、sinθ1とsinθ2になります。これを図で示すと次のようになります。
スネルの法則を用いると、光が屈折率の異なる2つの媒質の境界面でどれぐらいの角度で折れ曲がるか求めることができます。たとえば、レンズの場合、光が屈折する境界面は球面ですが、次の図のように、光が入射する点の接平面を考えることによって、スネルの法則をあてはめることができます。同様に、非球面や複雑な面に入射する光の道筋も、スネルの法則で求めることができます。 現在は、光学設計の現場では、複雑な計算はコンピュータソフトウェアで行います。スネルの法則を使って手計算する必要はまずありませんが、原理を理解しておくことは重要です。
さて、スネルは、スネルの法則を発見したときに論文を発表しませんでした。フランスのルネ・デカルトが1637年にこの屈折の法則を著作『方法序説』で発表しました。しかしながら、デカルトがスネルの未発表の論文を見ていたという指摘もあり、現在はこの屈折の法則を発見したのはスネルとされ、スネルの法則と呼ばれています。なお、フランスでは、スネルの法則は、デカルトの法則、デカルト・スネルの法則と呼ばれています。
また、スネルがこの法則を発見したのは1621年と言われていますが、1602年にイギリスの天文学者・数学者トーマス・ハリオットが既に同じ法則を見出していたこともわかっています。ハリオットもスネルと同様に論文を発表していなかったようです。
さらには、バクダッドの数学者・物理学者のイブン・サルが984年の著書『 Burning Mirrors and Lenses』において屈折の法則について記述しています。
このあたりの話は別の記事で解説します。
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