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2020年11月10日火曜日

電磁波とは何か

電磁波とは

 ラジオやテレビ放送、携帯電話などの通信には、電波が使われています。波が伝わるためには媒質が必要ですが、電波は宇宙空間や真空中も伝わります。媒質がないのに伝わる波とは、どのような波なのでしょうか。

 導線に電流を流すと、導線のまわりに電流とは垂直な方向に磁界が発生します。このとき、導線に流す電流の向きを変化させると、磁界の向きも変化します。磁界が変化すると、磁界に垂直な方向に電界が生じます。このように、電界の変化は磁界を生じ、磁界の変化は電界を生じるという過程が繰り返されます。その結果、電界と磁界がお互いに直交するように発生しながら空間を伝わっていきます。この繰り返しで発生する波が電波の正体で、これを電磁波といいます。電磁波は次の図のように電界と磁界の変化の繰り返しのため、媒質がない真空中でも平気で伝わることができるのです。

電磁波
電磁波

赤外線と紫外線の発見

 1800年、イギリスのウィリアム・ハーシェルは、プリズムで分散した太陽光のスペクトルの様々な位置に温度計を置き、どの色の光の温度が高くなるか調べました。すると、赤色の外側の何もないところで、温度が一番高くなることを発見しました。赤色の外側には熱を運ぶ熱線が存在すると結論づけられました注1

  その1年後、ハーシェルの熱線の発見に触発されたドイツのヨハン・ヴィルヘルム・リッターは、太陽光のスペクトルの紫色の外側の色の見えない部分で感光剤が変色することを発見しました。紫色の外側には物質を変化させる化学線が存在すると結論づけられました注2

 熱線と化学線は発見当初から光の仲間と考えられていましたが、決定的な証拠が見つからなかったため、光とは別のものとされていました。その後、熱線や化学線の性質やスペクトルの研究が進み、熱線や化学線が光の仲間であることが確認され、それぞれ赤外線、紫外線と名づけられました注3

光は電磁波の仲間

 電磁波の存在はイギリスのジェームス・クラーク・マクスウェルが1864年に発表した論文『電磁場の動力学的理論』において予言されいました。マクスウェルはファラデーの電磁誘導の法則やアンペールの法則をもとに、数学的に理論をまとめ、電磁波の存在を予言するに至ったのです注4

 また、マクスウェルは自身の理論から真空中の電磁波の速度を秒速30万キロメートルと計算で求めていました。この値は1849年にフランスのアルマン・フィゾーが実験で求めた光速の実測値と良く一致していました注5。マクスウェルは電磁波と光の速度が一致していることから、光は電磁波の仲間であると考えました。

 しかし、マックスウェルの理論が難解であったことや、肝心の電磁波の存在が確認できていなかったことから、マクスウェルの主張は直ちに多くの科学者に認められたわけではありませんでした。

 1888 年、ドイツのハインリヒ・ヘルツは放電現象によって電磁波が発生することを実験で確かめることに成功しました。彼の実験によって、電磁波が確かに存在することが確認されたのです。このときマクスウェルの死後9年が経過していました。

ジェームス・クラーク・マクスウェル(左)とハインリヒ・ヘルツ(右)
ジェームス・クラーク・マクスウェル(左)とハインリヒ・ヘルツ(右)

電波・赤外線・可視光線・紫外線・放射線は電磁波の仲間

 現在では、赤外線や紫外線のさらに外側にも、目に見えない光の仲間が存在することがわかっています。人間に見ることができる可視光線は、実は光の仲間のごく一部に過ぎません。

 赤外線の外側にある電磁波は、テレビ、ラジオ、携帯電話、電子レンジなどの電気機器で使われている電波です。紫外線の外側には、エックス線、ガンマ線という電磁波が存在します。エックス線やガンマ線は医療、農業、工業など幅広い分野で利用されていますが、エネルギーが極めて大きく、とり扱いが難しい光です。

 電磁波は狭い意味では電波のことを指しますが、広い意味では光の仲間すべてを含みます。次の図は電磁波の種類を示したものです。電磁波はその振動数(周波数)に応じたエネルギーを有しており、計算で求めることができます注6

電磁波の種類
電磁波の種類

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