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2020年6月1日月曜日

光が生まれたのはいつか

宇宙の誕生

 この宇宙はおよそ138億年前に誕生したと考えられています。

 2001年に打ち上げられたウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe,WMAP)の観測により、2003年に宇宙はおよそ137億年前に誕生したことが判明しました。しかし、2009年に欧州宇宙機関が打ち上げた宇宙望遠鏡プランクの観測から、2013年に宇宙の誕生はおよそ138億年前と修正されました。

 生まれたばかりの宇宙は超高温・超高密度の極めて小さな空間でしたが、すぐに膨張を始めました。この宇宙の初期状態のことをビッグバンと言います。初期の宇宙では、物理法則も現在私たちが知っているものとは異なっていたと考えられています。

NASA | The Big Bang

光あれ

 宇宙が誕生すると光子を含む素粒子が生まれました。そして、クオークと呼ばれる素粒子が集まり、陽子や中性子ができました。この陽子と中性子が集まって水素やヘリウムの原子核ができました。宇宙空間は極めて高温であり、大量の電子が宇宙空間を自由に飛び回っていました。光子は電子に強く散乱され、宇宙空間をまっすぐに進むことができない状態でした。別の言い方をすると光子が宇宙空間を透過することができない状態、つまり宇宙は不透明だったのです。このときの光子の振る舞いは私たちがよく知っている光の振る舞いとはだいぶ違っていたと考えられます。

 宇宙が誕生して約 38 万年後、宇宙の温度が低下すると、電子が原子核に捉えられ原子となりました。これによって光子が宇宙空間をまっすぐに進むことができるようになりました。つまり、光が宇宙空間を長距離進むことができるようになり、宇宙が透明になったのです。これを宇宙の晴れ上がりと言います。私たちが日常体験の中でよく知っている光は宇宙の晴れ上がりのときに生まれたと考えて良いでしょう。

 宇宙の晴れ上がりで自由になった光子は現在も観測することができます。この光を宇宙マイクロ波背景放射(宇宙背景放射)と言います。宇宙マイクロ波背景放射は宇宙の全方向から等しくやってくる電磁波です。この電磁波のスペクトルは2.725 K の黒体放射のスペクトルによく一致しており、この光を調べることによって、宇宙の誕生や生い立ちを調べたり、推測したりすることができます。宇宙マイクロ波背景放射は私たちが出合うことができるもっとも古い光です。

太陽はいつ誕生したのか

 現在、地球にもっともたくさん降り注いでいる光は太陽光です。太陽が放つ光のエネルギーは約3.84 × 1023 kW で、地球に到達するエネルギーは約 1.75 × 1014 kW です。このうち約 3 割が大気や雲で宇宙空間に反射され、残りの約 7 割が地面や海面に届いています。

 太陽は誕生してから約 46 億年もの間、ずっと大量のエネルギーを放出し続けています。太陽がどのようにして生まれ、太陽で光がどのように生み出されるのか考えてみましょう。


 宇宙が誕生したときにできた水素やヘリウムのガスは、宇宙誕生から 1 ~ 2 億年後には宇宙空間にほぼ均等に広がっていました。やがて、これらのガスは自身の質量によって集まりだし、宇宙空間に密度の高いところと低いところができました。密度の高いところは銀河のもとになり、宇宙空間にたくさんの銀河のもとが誕生しました。

 銀河のもとの中でガスは雲のように集まっていました。この雲はガスの質量によって収縮し、塊のようになっていきました。ガスがどんどん収縮して密度が高くなると、塊の中心温度もどんどん上昇しました。すると、原子が激しく振動し、光を放つようになり原始星となりました。原始星は恒星の初期の状態です。原始星はさらに温度を上げ、やがて内部で核融合を起こすようになりました。このようにして宇宙にたくさんの銀河と恒星が生まれました。

 銀河のもとが円盤銀河になるまでには約60億年かかると考えられています。しかし、このほど、地球から123.9億光年離れたとことに円盤銀河(DLA0817g、ヴォルフェ円盤)があることが発見されました。現在、地球から観察しているDLA0817gは123.9億年前の姿です。宇宙の誕生が138億年前とすると、この円盤銀河は宇宙誕生からわずか15億年で形成されたと考えられます。銀河形成の謎は深まるばかりですが、このような発見が謎を解き明かしていくはずです。
誕生から15億年後の宇宙に回転円盤銀河を発見ーAstroArts
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11270_dla0817g

 宇宙が誕生してから 90 億年ほどたった頃、銀河系のどこかで、ひとつの恒星がその一生を終えて超新星爆発を起こしました。爆発した恒星は宇宙空間にたくさんの元素を放出しました。放出された元素は宇宙に存在していたガスやチリと一緒に集まりだし、やがて新しい塊となりました。この塊が太陽のもととなりました。

 太陽の中心の大部分は水素でできています。水素原子4個が核融合してヘリウム原子となるときにエネルギーを放出します。酸素がない宇宙空間で太陽が燃えることができるのは太陽の中心で核融合が起きているからです。


【核融合】
 量数の小さい原子核が衝突して、質量数の大きい原子核が生まれること。1 回の核融合で約 100 万 eV のエネルギーが放出される。一般的な化学反応で原子 1 個あたりが放出するエネルギーの約 100 万倍に相当します。

 太陽の中心で生まれた光は太陽の内部を通って太陽の表面から出てきます。この過程で光は太陽内部に存在するたくさんの電子と相互作用します。たくさんの電子が光の吸収・再放出(=光子の消滅と生成)を繰り返しながら、光を太陽の中心から表面の方へ受け渡していきます。

 しかし、電子が光を放出する方向はバラバラなため、光はあちらへ行ったり、こちらへ来たりを繰り返しながら太陽内部を進みます。そのため、太陽の中心で生まれた光が太陽の表面から出てくるまでに数百万年から一千万年ぐらいかかります。

 したがって、いま私たちの地球に降り注いでいる太陽光は現在の人類の祖先がアフリカで誕生するより遠い昔に太陽の中心で生まれたものです。

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