主点とは(しゅてん、principle point)
レンズの光学的な中心のことを主点といいます。理科の教科書に出てくるような普通の凸レンズや凹レンズは、両面が同じ形をしているので主点はレンズの中心と一致します。しかしながら、レンズには平凸レンズのように両面が非対称なものもあります。このようなレンズでは、 主点とレンズの中心は一致しません。
レンズの焦点距離は主点から焦点までの距離のため、主点とレンズの中心が一致していないレンズの場合には、主点がどこにあるのかを知る必要があります。また、焦点と同様に主点には前側主点(物体主点)と後側主点(像主点)があります。
次の図は平凸レンズ の後側主点(左)と前側主点(右)を示したものです。レンズの前側から光を入射して求めた主点が後側主点で、後側から光を入射して求めた主点が前側主点です。図から分かるとおり、同じ形の平凸レンズにも関わらず、光を入射する方向によって、主点の位置が変わります。
平凸レンズはどちら側が前側なのか? 平凸レンズは、凸側を物体に向けたほうが収差が小さくなるため、通常は上図左のように凸側が前側になるように光を入射します。 |
主点を通り、光軸に垂直な面を主平面または主面といいます。多くのレンズでは、主点と主平面はレンズの中にありますが、表面が湾曲したレンズや、凸レンズと凹レンズを組み合わせたレンズでは、レンズの外側にある場合もあります。なお、上図の平凸レンズの主点の位置は次の図のように求めることができます。
レンズに入射する光線をそのまま延長した線Aと、射出光を反対方向に延長した線Bの交点から光軸に垂線を下ろすと、主平面を求めることができ、主平面の光軸の交点が主点となります。
また、入射光がレンズの表面でどのように屈折するかは、下図のように、球面に入射する光の進み方を考えます。屈折角θ2はスネルの法則で求めることができます。上図の射出光の屈折角もスネルの法則で求めることができます。この方法を使えば、両面が非対称の球面や非球面レンズの主点も求めることが可能です。
焦点距離がわかっているレンズの現物がある場合は、レンズに平行光線を入射して、焦点の位置が特定できれば主点の位置を求めることができます。
実はどのようなレンズでも、入射光と射出光のふるまいを考えることによって、 厚さを無視できる1枚の仮想的な薄肉レンズとして扱うことができます。カメラに使われているような複数のレンズを組み合わせた複合レンズも、光学的に仮想的な1枚のレンズとして扱うことができます。この仮想的なレンズの中心が、そのレンズ光学系の主点となります。
なお、よく教科書などでは下図の上側の図のようにレンズに入る光線が主平面で1回だけ屈折しているように描かれています。しかし、レンズを通る光は実際には下側の図のようにレンズの表面で2回屈折します。上側の図は光の進み方としては厳密には正しくありませんが、いかなるレンズ光学系でも主平面で光が1回屈折するように作図することができます。実際の光の進みかたとは異なりますが、理論的には間違いでありません。
日本工業規格 JIS Z 8120 : 2001 光学用語
- 主点 光学系において横倍率が+1になる光軸上の共役点。 物体空間における主点を物体主点といい,像空間における主点を像主点という。
- 主平面 主点において光軸に垂直な平面。